京都市交響楽団第555回定期演奏会


   
      
<京都市交響楽団オーケストラの日ゲネプロ公開>

2012年3月25日(日)10:30開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団

ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽編曲版)

座席:自由


<京都市交響楽団第555回定期演奏会>

2012年3月25日(日)14:30開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団

バルトーク/管弦楽のための協奏曲
ブラームス/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽編曲版)

座席:S席 3階 C−2列30番


2011年度最後の京都市交響楽団定期演奏会は、常任指揮者の広上淳一が登場しました。常任指揮者就任4年目のシーズンを締めくくります。



<京都市交響楽団オーケストラの日ゲネプロ公開> 10:30開演

本番当日午前中のゲネプロが公開されました。日本オーケストラ連盟は、3月31日を「オーケストラの日」と定めています。「ミミにいちばん、ミミにいい日」という語呂合わせにちなんだものですが、全国各地のオーケストラでイベントが行われます。京都市交響楽団はゲネプロの公開で応えました。事前に往復はがきで申し込み。定員100名でしたが、めでたく当選しました。

10:00に開場。1階席中央の通路よりも後ろの席に座るようにとの指示がありました。団員はすでに私服で音出し中でした。10:30に音が鳴り止み、コンサートマスターの渡邉穣が立ち上がってチューニング。チューニング中に広上淳一が舞台袖からスコアを持って登場しました。渡邉とサブコンマスの泉原と握手して、指揮台へ。服装は、「京響オリジナルTシャツ2011」のグリーン。緑色の半袖Tシャツで、背に「今日、京響?」と書いてありました。広上は本当に京響Tシャツが好きですね。

ゲネプロの曲目は、ブラームス作曲/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽編曲版)。原曲はピアノ、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編成ですが、シェーンベルクが編曲したこの版は、3管編成の管楽器と打楽器が加わります。「第5回奏楽堂企画学内公募最優秀企画演奏会「The Composers!〜あたまのなかをのぞいたら〜」」で部分的に聴きました。
第1楽章からスタート。広上淳一は指揮棒なしで指揮。原曲が室内楽曲とは思えないほど、よくできたオーケストレーションです。木管楽器がやはりうまい。第1楽章が終わると、3回大きくうなづいて、そのまま無言で第2楽章へ。第2楽章は弦楽器が多いのか少し重く感じました。ホルンのゲシュトプ奏法など、近代的な管弦楽法が聴かれました。そのまま第3楽章へ。第3楽章では広上淳一は指揮しながらコンサートマスターに何か話しかけたり、打楽器奏者に叫んだりしました。第4楽章では金管楽器の和音が斬新。また、シンバル、木琴、鉄琴、タンバリン、トライアングルなど、多くの打楽器が使われます。

第4楽章最後まで指揮すると、広上が「ありがとうございました。休憩したいです」と言って、11:15に休憩に入りました。一度も演奏を止めることなく、通しただけで終わりました。

その後、広上が客席まで降りてきて、来場者にあいさつ。「珍しくソリストなしのプログラムですが、4年目の集大成となる演奏会」「京響もここ1〜2年で地力をつけてきて世界水準に達しつつある」「日本各地で演奏する機会が増えてきたが、やはり本拠地はここ京都」「今後とも市民みなさまのご指導ご鞭撻をお願いしたい」と話しました。京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響?」にこの様子を撮った写真が掲載されていて、私の後ろ姿が映っています。

広上のゲネプロを見たのは、京都市交響楽団第533回定期演奏会練習風景公開以来2回目でした。今回は途中で演奏を一度も止めることなく終わりました。練習場で行われる前日練習では演奏を止めて話すことが多いですが、ゲネプロは最終確認として位置づけているのでしょう。演奏の出来に満足しているようでした。



<京都市交響楽団第555回定期演奏会> 14:30開演

第545回定期演奏会以来ひさびさの京響定期でしたが、パンフレットに掲載されている法人会員と個人会員がまた増えました。14:10からプレトーク。広上淳一が赤色半袖Tシャツ(「京響オリジナルTシャツ2011」のレッド)で登場。ゲネプロから着替えたようです。広上のプレトークではこれから行われる演奏会の宣伝が多かったですが、今回はコンサートマスター2人と今シーズンを振り返るという趣向でした。渡邉穣と泉原隆志が登場。広上は渡邉を「じょうさん」、泉原を「いずちゃん」と呼びました。
広上が今日のプログラムの印象を聞いたところ、渡邉は「2曲ともトリの曲。大変です」。泉原は2曲とも初めて弾くとのこと。バルトークの話になり、広上が「指揮者のデイヴィッド・ジンマンがむかしアメリカに住んでいたとき、バスケットボールを窓に投げたら、その家に住んでいたバルトークが怒って出てきた。ジンマンは後悔していた」というエピソードを紹介。管弦楽のための協奏曲の聴きどころについて、渡邉は「どの楽器が活躍するかはっきりした曲」と話しました。
ブラームスについて、渡邉は「オリジナルのピアノ四重奏曲を演奏したことがある。青春の曲。ゼルキン、ブッシュ(四重奏団)の録音の呪縛を受けている。ピアノのパートをどうオーケストラに分散させるかが編曲版の聴きどころだが、ヴァイオリンで演奏するときに葛藤がある」と話しました。広上は「ウルトラセブンのように大きくなったり小さくなったりする。伸縮自在の醍醐味」と話しました。チケットは当日券が発売されましたが、完売したようです。渡邉が「さっき楽屋で大入り袋をもらいました」と喜んでいました。

プログラム1曲目は、バルトーク作曲/管弦楽のための協奏曲。残念ながらノーミスの演奏とは言えず期待外れ。広上淳一にとって珍しいレパートリーであることを差し引いても、今の京都市交響楽団ならもっとできるはずでしょう。
第1楽章は変拍子に悪戦苦闘している様子でした。ヴァイオリンがもう少し音量が欲しい。39小節からのトランペットは、スコアではppですが大きく演奏。第2楽章の小太鼓は大きめの音量で始まりましたが、スコアではmf指定なので適切かもしれません。弦楽器や金管楽器のコラールも大きめ。木管楽器の音量は小さい割に、90小節からのトランペット二重奏がpにしては大きな音量で、ちょっと音量のバランスが悪い。第3楽章はトランペットとティンパニがかなり激しい演奏。途中で、ミュートを落としたような音が聴こえました。もし落としたのであれば、プロらしからぬミス。第5楽章は速いテンポで快走しました。
広上淳一は指揮棒なしで指揮。両手を重ねて、胸の前で∞の字を描くように動かしました。指揮スタイルが変化したようです。ただ、本番では冷静さを失うのか、第1楽章の最後でクラリネット(?)がずれました。広上の演奏会は本番でよく事故が起こります。

休憩後のプログラム2曲目は、ブラームス作曲/ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルクによる管弦楽編曲版)。広上はこの曲も指揮棒なしで指揮。午前中のゲネプロで聴いていますが、3階席は1階席よりも響きが薄く感じました。1階席で聴いたゲネプロのほうがうまく聴こえました。
前プロのバルトークよりも安定した演奏。第2楽章はゲネプロよりもリラックスして演奏できていました。第3楽章は広上が好きそうな音楽で、弦楽器の豊かな響きがすばらしいですが、ゲネプロに続いて2回聴くと長く感じました。第4楽章も無理して大きな音は出しません。広上の音楽性が結実したと言えるでしょう。ゲネプロよりも指揮台でのジャンプが増えました。

演奏終了後に、広上がマイクで挨拶。「1人偉大なプレーヤーの卒業があります」と話し、ファゴット奏者の山本一宏を紹介。60歳の定年で退職されます。「奉職何年になりますか」の問いに山本が「39年です」と答えると、客席から大きな拍手が送られました。広上も「京響の歴史を背負ってこられた」とコメント。山本がマイクで挨拶。「広上さんが(常任指揮者として)見えてからは、特に楽しかったです」「私の後任には25歳の村中君が入ってきますのでよろしく」と話しました。ファゴットパートのメンバーから花束が贈呈され、終演しました。広上の演奏会には珍しく、アンコールはありませんでした。

終演後はホワイエでレセプション。シニアマネージャーの新井浄の司会で進行。だいぶ経ってから、広上淳一が挨拶。眼鏡をかけていました。卒団する山本一宏を含めたファゴットパート4人でファゴット四重奏を披露。「スペシャルプレゼント」ということで、感謝の意味を込めて演奏したいとのこと。1曲目は、プロコフィエフ作曲/ユーモラススケルツォを演奏。2曲目は、作曲者不詳/長い道。日本語の歌詞をつけた「花の季節」の曲名で、中学校の音楽の授業で歌ったことがあります。さすがに息のあったアンサンブルを聴かせました。17:30に終了しました。

広上淳一の挨拶 ファゴット四重奏

(2012.4.22記)




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