「兵士の物語」言葉と音楽のシリーズによる三重奏版


   
      
2010年1月3日(日)16:30開演
兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール

原作:アファナシエフ
脚本:C・Fラミューズ
作曲:イーゴル・ストラヴィンスキー
翻訳:岩切正一郎
演出:白井晃
出演:石丸幹二
ピアノ:石岡久乃
パーカッション:平子久江

ストラヴィンスキー/兵士の物語

座席:1階G列16番


2010年聴き初めは、演劇です。ストラヴィンスキーの「兵士の物語」を、石丸幹二が4役(ストーリーテラー、兵士、悪魔、王女)を一人で演じます。音楽伴奏もピアノとパーカッションの2人だけ。「三重奏版」の文字通り、非常にコンパクトな編成で演奏されます。
石丸幹二は劇団四季を2007年末に退団し、この公演でソロ活動開始1周年を迎えるとのこと。また、白井晃の演出、石丸幹二の出演で、2009年1月から始まった「言葉と音楽のシリーズ」の第2弾となります(第1弾は、石丸幹二の復帰舞台となった、R.シュトラウス「イノック・アーデン」)。さらに、2001年から、いっこく堂、西村雅彦、英国ロイヤル・オペラ・ハウスなどが演じてきた「「兵士の物語」プロジェクト」の第4弾となります。

2009年末に東京(日経ホール)で4日間6公演行われた後、2010年早々に今回の兵庫公演が組まれました。同じ日に2公演(13:00〜、16:30〜)行われたので、2回目の公演を選択。チケットは、兵庫県立芸術文化センター先行予約会員対象の先行予約発売が9月という早い時期にありました。

兵庫県立芸術文化センターのKOBELCO大ホールには何回か行っていますが、阪急中ホールには初めて行きました。阪急中ホールは2階の入口から入って共通ロビー「ピアッツァ」の奥にあります。2階層で800席。ホール入口に、上演時間についての案内掲示があり、「16:30〜17:45(休憩なし75分)」と書かれていました。ロビーでパンフレットを1,000円で購入。
開場時から舞台も客席も照明が落とされていて暗い。客の入りは前のほうはほぼ満席でした。ホール1階席の最後列には、レコーディングスタジオにあるような機器が設置されていました。照明用でしょうか、音響用でしょうか。

チャイムが鳴って、ピアノとパーカッションの2人が下手からゆっくり入場。続いて、石丸幹二が上手の後方から静かに登場。衣装は黒の長袖カッターシャツに、黒の長ズボンでした。
舞台には、上手から順に、木製の机と椅子、鏡、衣装を着たマネキン数体(頭なし)、ピアノ、ドラムセットが置かれていました。石丸幹二が机に置かれた台本(ハードカバーで分厚い)をおもむろに片手に取って、「兵士の物語」と読んで始まりました。冒頭は古時計が秒針を刻むような効果音が使われました。

石丸幹二は2010年で45歳になりますが若い。動きもセリフもハキハキとしています。上述した台本は、常に左手に持って演じました。文字を見て読んでいるという感じではなく、セリフはほとんど頭の中に入っているようです。4役をどう演じ分けるのか注目でしたが、シーンに応じて、衣装を着たマネキンを舞台の後ろから前に自分で持ち上げて運び、観客に登場人物をイメージさせました。役に合わせて衣装を着替えるのかと思っていましたが、石丸幹二が着替えることはなく、セリフにあわせてマネキンの肩に手をかける程度でした。しかし、石丸の声色の変化だけでじゅうぶん表情が多彩だったので、これ以上の演出効果は不要でしょう。
役によって声色を変えます。悪魔のセリフはつぶしたような声で話しました。ストーリーテラーの役では上述したイスに座って、台本を机に置いて話すこともありました。「兵士の行進」では音楽のリズムにあわせてリズミカルにセリフを読みました。セリフをまったく噛まないのも驚異的。すばらしいですね。ノーミスの演技でした。ちなみに、露天商の物売りの部分では、客席の通路まで下りて演技しました。
石丸が4役を巧みに演じ分けたので、ストーリーもよく理解できました。台本も分かりやすい。

演奏は、平子久江のパーカッションが表情豊か。トライアングルやグロッケンシュピール(鉄琴)も使われました。強奏では思い切りよく叩かれますが、弱奏では聴こえないくらいの繊細な表情をつけました。平子はシエナ・ウインド・オーケストラのパーカッション奏者として活躍しているようです。
石岡久乃のピアノも健闘しましたが、原曲ではヴァイオリン、コントラバス、ファゴット、クラリネット、コルネット、トロンボーンの6種類の楽器が使われているため、音色の多彩さという点でピアノだけではどうしても劣ってしまうようでした。

たまに録音された効果音も使用しました。馬車の音、黒電話のベル、ドアのノック、王女の叫び声など。あまり使いすぎないところに好感が持てました。

小道具は、上述したほかには、机の上にろうそく、ワイン、黒電話、トランプなどが置かれていて、石丸が劇中に使用しました。兵士が持っているヴァイオリンは本物の楽器ですが、弓はなし。石丸は肩に構えて弾くまねをしました。天井からシャンデリアも吊られていました。1部と2部の間に短い暗転があり、その間に小道具等がセッティングされたようです。上述した黒電話のベルが絶妙のタイミングで何回か鳴りましたが、どうやって鳴らしていたのでしょうか。

照明も工夫されていて、演奏にあわせていいタイミングでパーカッションにスポットライトを当てたり、客席を照らしたりして、飽きさせません。

残念なことは、石丸幹二もピアノもパーカッションもマイクを使用していたこと。石丸幹二は左耳から口元に伸びるマイクを付けて話しましたが、声量もあったのでマイクなしでもよかったと思います。ピアノとパーカッションもマイクを通した音ではなく、生音が聴きたかったです。

最後は、冒頭と同じく秒針の効果音が流れる中、舞台に置かれた時計の針が逆周りに回転。そのまま照明を落として暗転して終わりました。1時間を超える上演でしたが、本当に短く感じました。
カーテンコールでは、石丸、石岡、平子の3人が拍手を受けましたが、演出の白井晃は現れませんでした。来場していなかったのでしょうか。17:40に終了しました。

「言葉と音楽のシリーズ」および「「兵士の物語」プロジェクト」は今後も続くようです。次回の公演を期待して待ちたいと思います。

(2010.1.6記)


兵庫県立芸術文化センター共通ロビー「ピアッツァ」 兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール



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