読売日本交響楽団第32回大阪定期演奏会
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2022年6月1日(水)19:00開演
フェスティバルホール
上岡敏之指揮/読売日本交響楽団
レナ・ノイダウアー(ヴァイオリン)
メンデルスゾーン/序曲「ルイ・ブラス」
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
座席:A席 3階1列15番
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昨年末の
第31回大阪定期演奏会に続いて、読売日本交響楽団の大阪定期演奏会に行きました。指揮は上岡敏之。初めて聴きます。上岡はドイツ在住で、現在コペンハーゲン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めています。2016年9月から2021年8月まで、新日本フィルハーモニー交響楽団の第4代音楽監督を務めましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で来日ができず、音楽監督のラストシーズンを飾ることができませんでした。今回の来日は2年ぶりで、読売日本交響楽団を指揮するのは約6年半ぶりとのこと。
今回のプログラムは、第247回土曜マチネーシリーズ(2022.5.28 東京芸術劇場)と、第247回日曜マチネーシリーズ(2022.5.29 東京芸術劇場)と同じプログラムです。なお、本公演の前日の5月31日(火)には、読響アンサンブル特別演奏会「上岡敏之の室内楽」と題して、上岡がピアノを演奏しました(王子ホール)。
この日の大阪府の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は1977人で、減少傾向が見られます。6月から一日当たりの入国者数の上限が1万人から2万人に緩和されました。つい3ヶ月前まで水際対策が強化されて多くの海外アーティストが来日できず、ジョン・アクセルロッド(
読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会)やガエタノ・デスピノーサ(
京都市交響楽団第664回定期演奏会)が日本に長期滞在して、次々に日本のオーケストラを指揮していたのがウソみたいです。なお、ガエタノ・デスピノーサは、11月から実に全23公演を指揮して、3月11日に帰国しました。
チケットは読響チケットWEBで購入。チケットを買った時期が遅く、S席はいい席がなかったので、A席にしました。郵送を選択するとチケット配送料は無料でした。18:00開場で、検温と消毒の後、チケットをもぎってもらって、台に置かれたプログラムを自分で取りましたが、ロビーまでの開場で、18:15にホールに入場できました。ビュッフェコーナーは休止とのこと。
今回も3階席にしましたが、だいぶ左側の席で、あまりいい席ではありません。第1ヴァイオリン奏者が後ろになるので、主旋律が聴こえにくいことがありました。また、1列目は、目の前の手すりが邪魔です。客は8割くらいの入り。
団員が入場した際に、珍しく客席から拍手が起こりませんでした。コロナ禍以降はほとんどの演奏会で拍手が起こっていたので、少し冷たいお出迎え。団員はマスクで入場して、演奏中は取っている人が多い。コンサートマスターは、長原幸太。上岡敏之が下を向きながらトボトボと入場。細身であまり背は高くありませんが、61歳には見えません。
プログラム1曲目は、メンデルスゾーン作曲/序曲「ルイ・ブラス」。繰り返しが多く、聴いていてあまり面白くない作品。メンデルスゾーンもあまり気乗りせずに作曲したようです。冒頭の金管楽器の音程が不安定で残念。上岡は左手で指揮台の後ろのバーを持って指揮。右手で下から上に指揮棒ではねあげるような動きで、ヴァイオリンを向いて指揮することが多い。譜面台のスコアはまったくめくりません。演奏後に客席に向かって礼をするときは、必ず指揮台から降りるのも特徴です。
プログラム2曲目は、
メンデルスゾーン作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、
レナ・ノイダウアー。ドイツ生まれの女性で、上岡とは10年前にこの曲で共演したことがあるとのこと。白いドレスで登場。がっしりした体型です。第1楽章冒頭はやや遅めのテンポで始まり、有名なヴァイオリンソロのメロディーは、遅くしたり音量を弱くしたり個性的な表現。ヴァイオリン独奏は音量が大きくないのによく響きます。協奏曲を聴くのに理想的なホールと言えるでしょう。中編成のオーケストラは、ソロによく寄り添います。第1楽章のラストテンポアップ。第2楽章、第3楽章を続けて演奏。この曲は
広上淳一指揮 京都市交響楽団兵庫公演でも聴きましたが、あまり印象に残らなかったので、この曲自体があまり好きではないのかもしれません。
拍手に応えてアンコール。演奏前に何か話したのが聞き取れませんでしたが、招聘元のヤタベ・ミュージック・アソシエイツのTwitterによると、イザイ作曲/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番より第1楽章を演奏。すぐに演奏が止まったのでドキッとしましたが、もともとそういう作品で、後半では「怒りの日」の旋律が断片的に聴こえてきます。超絶技巧で色彩感もあり、メンデルスゾーンよりも楽しめました。
休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第6番「悲愴」。上岡が首席指揮者を務めていたヴッパータール交響楽団を指揮してブルックナー「交響曲第7番」の録音は、世界最長の遅いテンポだったので、「悲愴」でもチェリビダッケ級の怪演を期待していましたが、意外にも普通のテンポ設定でした。
第1楽章は、6小節の休符を長く取って、長い間を空けました。67小節からは、さすが読響の金管です。86小節からのヴィオラのpp espress.でスラーを厳密に演奏したせいか、いったん音楽が止まりました。136小節からの八分音符×3×2+付点二分音符の音型をritenutoの指示通りに遅くして、ため息のような効果がありました。161小節からのAllegro vivoは、速めのテンポで疾走。191小節などキュー出ししてホルンを強調。285小節からのlargamente forte possibileは、遅いテンポでもっとねっとりやるかと思っていたら、意外にあっさり。335小節からのAndante mossoもやや速め。
第2楽章は5/4拍子ですが、ほとんど拍通りに振りません。5拍子を意識して演奏しないし、客にも意識させない意図があるのでしょう。音を消したら、5拍子の曲を指揮しているとは分かりません。
第3楽章では上岡がときどき腰を左右に揺らすような動き。229小節からティンパニが2小節単位でクレシェンド&デクレシェンドするのが初めて聴く解釈でした。274小節からティンパニと大太鼓が金管楽器に負けないほどの大乱打で笑ってしまうほど。第3楽章が終わると上岡がしばらく固まりました。拍手を防止するためでしょうか(
京都市交響楽団大阪特別公演などでは拍手が起こりました)。
間を取って第4楽章へ。意外に速めのテンポ。71小節から76小節までティンパニを3回クレシェンド。81小節のフェルマータで、超長い間を取りました。まさに葬送級で悲愴感がただよいましたが、147小節からのAndante giusto以降は普通のテンポでした。
21:00に終演。距離を保って退場するようにアナウンスがあり、客席を15分も開放するとのこと。
上岡敏之は初めて聴きましたが、期待値が高すぎたのかもしれません。独特の指揮で、オペラ指揮者と感性が近いのかもしれません。上述したように、「悲愴」では楽譜の指示を変えていて、正攻法とは言えませんし、癖があるので、好みが分かれるかもしれません。
なお、読売日本交響楽団大阪定期演奏会は今年度も3公演が開催されます。次回の第33回(2022.9.12)は辻井伸行が出演することもあってか、あっという間に完売しました。第34回(2022.12.22)は、指揮者/クリエイティヴ・パートナーを務める鈴木優人が「第九」を指揮するので、時間があれば聴きに行きたいです。
(2022.6.11記)