びわ湖ホールまるっとステージツアー


   
      
2018年8月9日(木)11:00開演
滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール

座席:自由


びわ湖ホールのバックステージツアーに行きました。以前から年に数回開催されていたのですが、平日の開催でスケジュールが合いませんでしたが、今回やっと参加できました。ホール見学は、兵庫県立芸術文化センター オープンデイロームシアター京都 プレイ!シアター in Summerに続いて、びわ湖ホールが3ヶ所目です。

11:00〜と14:00〜の1日2回実施で、定員は各回50名。料金は500円(保険加入料含む)でした。7月9日(月)から申し込みが受け付けられました。2回実施のうち、1回目に参加しました。この日は、大中小ホールいずれも公演がありませんでした。

受付で500円を支払い、「ネックストラップ」と「びわ湖ホールまるっと丸わかりPAPER」を受け取りました。ピアノが置かれているラウンジに集合。夏休みなので、子どもの参加が目立ちました。女性スタッフから、ホール内は飲食禁止なので、水分補給はできないなどの注意事項がアナウンスされました。また、写真撮影は自由だが、新聞社の取材が入っているので、写真が掲載される可能性があることをご了承いただきたいとのこと。
本日の催し まるっとステージツアー集合場所

大ホールへ。ホワイエからは琵琶湖が間近に見えました。中央の座席に座りました。音響技術課の男性(押谷征仁氏)がマイクで説明。「USJにも負けないアトラクションを体験いただける」と意気込みを語りました。なんとこのツアーに参加したことがあるリピーターもおられました。びっくり。「客席も楽器。客席の椅子の形状も吸音率が計算されている。ステージの間口が狭いのは、音を反射させるため。天井が高いので、残響成分が多い。客席側面の壁のデコボコは、反射音を得るため。堅い木で作られていて、壁はサクラの木、床はナラの木でできていて、音の反射率を高めている」と説明。続いて、フロントサイドスポットライトが収納されている壁が開きました。ここは自動ではなく、スタッフが手動で動かしているとのこと。オーケストラピットを使用するときは、天井の高さを下げたり、天井のプロセニアムも開けたり閉めたりして、残響を調整するとのこと。天井が動くのは珍しいかもしれません。
次に、音が360°まわって聴こえる演出。開演前のチャイムが鳴り、客席を取り巻くスピーカーから反時計回りに音像が移動しました。このような音響効果は波や雷などを表現する際に使われるとのこと。続いて、5分間のアトラクション。オペラの開演が音と照明のみで再現されました。客席が暗くなり、チューニング。幕が開くと、正面のスクリーンにオペラの写真が映りました。幕が閉まって終了。  
大ホールホワイエから琵琶湖を望む 大ホール客席 大ホール壁

続いて、ステージのオペラカーテンの裏に移動。上手の扉から出て階段を上ると、ステージ上手の舞台袖に出ました。押谷から「大ホールを借りるには80万円かかるが、今日は500円で体験できる」とお得感が強調されました。参加者が出演者になった気分でステージの最前列に並び、暗転の後「スタンバイ GO」の掛け声で、カーテンが開きました。意外に速いスピードで開きました。照明がすごくまぶしい。正面のシーリングライトに加えて、左右のフロントサイドスポットライトも強烈。押谷からは「実際の歌手は重い衣装を着て歌うのでかなり熱い」とコメントしました。
オペラカーテンの内側 オペラカーテンの中央 ステージから客席を望む

次は、音響の説明。まず無線マイクと有線マイクの違いについて説明されました。「無線マイクは圧縮されるので音がやせてしまう。声を大切にするアーティストは非圧縮の有線マイクを使う」と説明。続いて、女性スタッフが、特殊なスタンドマイクを実演。「単一指向性」(片方からの音が入る)、「双指向性」(対面の音も入る)、「無指向性」(360°の音が入る)の3つがスイッチで切り替えできるという吸音したいエリアが選択できる万能なマイクです。続いて、「バウンダリーマイク」の紹介。黒くて横長で、床に置くマイクで、ミュージカルなどマイクを持たない場面で使うとのこと。
スタンドマイク バウンダリーマイク

続いて、照明について。ステージのスクリーンにパワーポイントが映されました。押谷が「照明の担当者は絵画から照明を学ぶ」ということで、「浮世絵には影がなく、遠近感もない。歌舞伎では衣装やメイクで影をつけている。歌舞伎の照明は、全体を均一に明るくしないといけない。オペラは光と影が重要で、照明で柱を立体的に見せたり、王様を明るく、奴隷を暗くして、照明で貧富の差を表現したりする。洋画でも、どっちから光が当たっているか、天窓があるのか、光の方向性を考えて絵画を観る」と解説。ここで、レンブラントの名画「夜警」をホールスタッフが再現。衣装を着たスタッフが登場して、作品の照明をホールの照明機材で再現しました。光源の位置にこだわったとのこと。遊び心があります。押谷は「本番前の照明合わせは、2〜3日かかる」とのこと。照明位置を決めるだけでも時間を取りますね。
レンブラント「夜警」の照明の再現

続いて、天井からバトンを降ろして、スポットライトの調整。ステージ上から相当高い位置にありますが、カーボンファイバー製のすごく長い棒を使って調整します。以前の素材よりも軽くなったようですが、子どもが持つとフラフラして安定しません。
また、天井で作業するときにはアップライトと呼ばれる高所作業台を使います。工事現場で使うような機械です。舞台袖の側壁にメジャーがあり、だいたいの高さが分かるようになっています。
スポットライトの調整(カーボンファイバー製の棒) アップライト(高所作業台)

続いて、渡り橋と呼ばれるブリッジが天井から降りてきました。ヘルメットをかぶったスタッフが乗り込んでいます。ステージには「3ブリッジ」「2ブリッジ」「1ブリッジ」の3つがあり、ブリッジの上で寝そべりながら、スポットライトを調整しました。なお、舞台機構を操作する際には、スタッフが声を出して確認するとともに、ステージの左右に監視員も配置されて声を出して安全を確認しています。
ブリッジでの作業

続いて、ステージの床が回転する「回り盆」。時計回りに回転しました。通常は人を乗せて動かすことはないようです。速度は調整できるとのことですが、けっこう速いスピードで回ります。目が回りそうでした。
回り盆

続いて、今立っている「主舞台」がステージ奥の「奥舞台」にスライド。まず奥舞台の床(沈下床)が沈み、奥舞台に穴が開きました。続いて、穴が開いた部分に主舞台がスライド。主舞台の床は厚さが1センチしかありません。続いて、主舞台の床が上がり、歩いて主舞台まで移動しました。なお、奥舞台に収納されている反響板は自走する(自動で動く)とのこと。
奥舞台の沈下床 奥舞台から客席を見る

続いて、主舞台のセリが沈んで大奈落(おおならく)へ。主舞台は5分割でき、大奈落は10メートル下がって、湖水面よりも下になるとのこと。ゆっくりと下に沈みました。大奈落の左右には広い空間があり、備品などが置かれていました。これはいい体験ができました。セリが上がって、再びステージへ。
大奈落からステージ上部を見る 大奈落の空間 大奈落の空間

大ホールステージでの体験はこれで終了。ここから2班に分かれて、まず大ホール楽屋の見学。大ホールの楽屋だけで16部屋もあり、客席をぐるっと取り囲むように配置されています。ステージ下手に最も近い「楽屋1」が最も広く、ソファやピアノ、シャワールームがありました。「楽屋13」や「楽屋15」などは、レールがありカーテンで仕切れるようになっていますが、中には入れなかったので、施設の詳細は分かりません。少し変わった施設としては「発声室」。ピアノが置かれていて、オペラ歌手がウォーミングアップするようです。その隣は「衣装室」。衣装に着替える部屋のようです。その隣は「洗濯室」。洗濯機が置かれていて、オペラ歌手が着用したインナーなどを洗濯するようです。オペラ歌手のための施設が充実しています。「楽屋15」には、にゃんばら先生(びわ湖ホールシアターメイツ特別顧問)がお出迎え。6歳から18歳までなら無料で入会できるシアターメイツをPRしました。
下手側の楽屋通路 楽屋1のソファ 楽屋1のピアノ 楽屋1のトイレとシャワールーム 発声室 衣装室 洗濯室 楽屋8〜13の通路 楽屋13の通路 楽屋15(にゃんばら先生)

楽屋口から出て、エレベーターに乗り、1階から2階へ。このエレベーターは47名3,100キロまで乗れるようで、ピアノも6台載せられるとのこと。
楽屋配置図 楽屋口 エレベーター

ホワイエに戻り、さらに2班に分かれて、調光室と音響室の見学。調光室と音響室は隣り合っていますが、入口がかなり意外な場所にあります。看板も出ていないので、普段は気づかず素通りしてしまいます。まずホワイエから向かって左側が「調光室」。スタッフからの説明では、調光室の操作盤から遠隔で1,000台のスポットライトの付け消しができるとのこと。操作盤にあるつまみを上げ下げすると、色の調整をしたり、点滅や色の変化などもプログラミングできて、つまみの下にあるボタンで点灯させることもできます。また、客電(客室の電気)も調整できます。 
調光室と音響室の入口 調光室からステージを望む 調光室の操作盤

続いて、向かって右側の「音響室」へ。エフェクターという機械で、マイクで話した声の残響を調整したり、音を遅らせたり、声の高さを変えたりすることができて、実際にスタッフが実演。また、お客さん用ではなく、ステージの出演者やスタッフに対しての音を返す役割もあり、例えば、オーケストラピットを使うときは、オケピットの中にマイクを立てて、オーケストラの音が聴こえるようにしているとのこと。
音響室 音響室の操作盤

少し時間をオーバーして、12:45に終了しました。大ホールの入口でアンケートを記入して解散しました。なお、見学の範囲は大ホールだけで、中ホールと小ホールには行きませんでした。

企画としては、舞台機構の説明が多く、兵庫県立芸術文化センター オープンデイの「舞台からくり見せまShow」に近かったです。調光室や音響室の中に入れたのは今回が初めてで、子どもたちにも興味を持ってもらえるように工夫されていました。有料の企画でしたが、多くのホールスタッフが携わっていて、満足でした。

(2018.8.21記)



大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会 ロームシアター京都 プレイ!シアター in Summer 2018