オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.69「オルガニスト・エトワール「大平健介&長田真実」」


    
   
2022年2月26日(土)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

大平健介、長田真実(パイプオルガン)

J.S.バッハ(長田真実編)/「平均律クラヴィーア曲集第2巻」より「前奏曲」
ブラームス(松岡あさひ編)/「6つの小品」より第2曲「前奏曲」
シューマン/「ペダル・フリューゲルのためのスケッチ」より第3番
メンデルスゾーン(ボッサート編)/前奏曲とフーガ
レーガー/楽興の時 ニ長調
ヴァメス/鏡
メンデルスゾーン(大平健介編)/交響曲第5番「宗教改革」より第4楽章「コラール「神は我がやぐら」」
モーツァルト/幻想曲 ヘ短調
サン=サーンス/幻想曲 変ホ長調
サン=サーンス(長田真実編)/組曲「動物の謝肉祭」より「序奏とライオンの行進」「象」「フィナーレ」
サン=サーンス(大平健介・長田真実編)/死の舞踏

座席:全席指定 3階C3列26番



午前中の京都コンサートホール バックステージツアーでゲネプロを見学した「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.69」を聴きました。「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」は1997年にスタートして、今年度で25年目です。タイトルに「オムロン」が入っているのは、パイプオルガンをオムロン株式会社が寄贈したためとのこと。いつもは一人のオルガニストが出演しますが、今回は「オルガニスト・エトワール」と題して、大平健介と長田真実の二人が出演しました。大平健介は日本キリスト教団聖ヶ丘教会首席オルガニスト、明治学院大学横浜主任オルガニスト、アンサンブル室町芸術監督を、長田真実は姫路パルナソスホールオルガニストを務めています。京都コンサートホール バックステージツアーの楽屋見学で、大平と長田の二人で、1つの楽屋だったので、あれ?っと思いましたが、大平と長田はご夫婦でした。午前中のゲネプロの解説を聞いて、パイプオルガンへの興味が湧いてきました。京都コンサートホールのパイプオルガンは、7155本のパイプと、90のストップ(音栓)を備えています。
パイプオルガンのコンサートを聴くのは、チャペル・コンサート・シリーズ2019 Vol.2「冨田一樹オルガンソロコンサート」(同志社中学校・高等学校宿志館グレイス・チャペル)以来です。ちなみに、同志社高校のパイプオルガンは、パイプ総数は2241本、ストップの数は35です。

京都コンサートホール バックステージツアーに当選してから、チケットを購入。ちょうどパイプオルガンの対面になる3階席右側の座席を購入しました。ポディウム席の発売はなく、客は6〜7割の入り。毎回100名が招待されているようですが、オルガンコンサートがこんなに人気があるとはびっくり。プログラムには、大平と長田による丁寧な曲目解説が掲載されていました。

前半は、長田と大平のそれぞれがソロで演奏。長田が、2L1扉(2階ポディウム下手の扉)から入場して、パイプオルガン本体の演奏台(トラッカー式)で演奏。ゲネプロでは本体の演奏台では演奏していませんでしたが、演奏台とパイプオルガンだけに照明が当たりました。座席は、オルガンを聴くにはいい席で、バランスよく聴こえました。
プログラム1曲目は、J.S.バッハ作曲(長田真実編)/「平均律クラヴィーア曲集2巻」より「前奏曲」。もともとチェンバロやピアノのための曲で、ゆっくりのところで音色を変えました。
続けて、プログラム2曲目は、ブラームス作曲(松岡あさひ編)/「6つの小品」より第2曲「前奏曲」。ブラームスがクララ・シューマンに献呈したピアノ曲。ゲネプロで長田は「京都コンサートホールのパイプオルガンの魅力は、包み込まれるような音色」と語っていましたが、その通りです。中央の箱(第III手鍵盤、第IV手鍵盤)を開け閉め。パイプが鳴っているとは思えない音色の柔らかさです。
プログラム3曲目は、シューマン作曲/「ペダル・フリューゲルのためのスケッチ」より第3番。一転して躍動感があり重厚な作品。対旋律は金管楽器のような音色でした。
プログラム4曲目は、メンデルスゾーン作曲(ボッサート編)/前奏曲とフーガ。前奏曲は、音色の選択で遊べて、弾く人の個性が出る作品。フーガはとてもパイプオルガンらしい曲です。

演奏が終わると、長田がステージへ。マイクで挨拶。「オルガニストは自分で楽器がある場所に足を運ばないと楽器に触れられない。海外も巡ってオルガニストは旅をしている」と話しました。夫の大平健介をステージに呼び込んで、大平が入場。ここからはオルガン本体の演奏台ではなく、ステージ上から演奏する「リモート式」の演奏台で演奏。リモート式の演奏台は、ステージ中央にややオルガンに向けて置かれていました。
大平がソロで演奏。長田も演奏台の左側に立って右足だけ演奏しました。プログラム5曲目は、レーガー作曲/楽興の時 ニ長調。中央の箱(第III手鍵盤、第IV手鍵盤)を開け閉め。ペダル?を踏んで頻繁に開け閉めしますが、あまり演奏効果がよく分かりませんでした。中間部はものすごく盛り上がりました。
プログラム6曲目は、ヴァメス作曲/鏡。1989年に作曲された最近の曲。ずっと演奏されているメロディーがフルートのようなかわいい音色。ブチッと切れるように終わります。
プログラム7曲目は、メンデルスゾーン作曲(大平健介編)/交響曲第5番「宗教改革」より第4楽章「コラール「神は我がやぐら」」。有名な旋律で、オーケストラのようなシンフォニックな響き。一人でオーケストラの代わりが果たせます。
休憩中には、リモート式の演奏台を近くまで見に来ていた客がいました。意外に1階席最前列で見ても、足下の動きが分かっておもしろいかもしれません。

休憩後の後半は、まずプログラム8曲目は、モーツァルト作曲/幻想曲 ヘ短調。二人で演奏。左が大平、右が長田で、ひとつのイスに並んで座ります。もともと自動オルガンのために作曲されましたが、モーツァルトをオルガンで聴くと、バッハに聴こえたり、ロマン派に聴こたりします。二人で演奏すると、よりポリフォニックな曲が演奏できます。
プログラム9曲目は、サン=サーンス作曲/幻想曲 変ホ長調。大平のみの演奏で、長田は隣で聴いています。ゲネプロで演奏していた曲で、重厚な響き。1階席では低音が強調されましたが、3階席のほうがバランスよく聴こえます。
プログラム10曲目は、サン=サーンス作曲(長田真実編)/組曲「動物の謝肉祭」より「序奏とライオンの行進」「象」「フィナーレ」。長田のみの演奏で、大平は左側に立って、たまに一番上の鍵盤の下を触っています。「序奏」は冒頭のテンポが速くて2倍速。続く「ライオンの行進」はなかなか聴きごたえがあります。「象」は低音がいかにも重々しい、テンポを遅らせて弾きます。「フィナーレ」は、この楽器の特徴なのか。低音が少し遅れて聴こえて、テンポにはまってないのが残念。
プログラム11曲目は、サン=サーンス作曲(大平健介・長田真実編)/死の舞踏。左が大平、右が長田の連弾で演奏。少しミスタッチがあって残念でしたが、多様な音色が聴けて楽しめました。1階席のほうが低音がダイレクトに伝わりました。Tempo 1゜でゴーッという風のような低い音。

演奏が終わると、大平がマイクで挨拶。「二人ともこのホールのオルガンを演奏したのは初めてだった。1970年代、私が大学に入った頃にオルガンが日本のホールにできはじめて、いまや日本は世界ではオルガン大国として知られている」と話しました。長田も「夫婦なので家でもオルガンの話をしている」と話しました。
アンコールは、ハチャトゥリアン作曲/剣の舞を演奏。 大平が「最後は7000本近いパイプがフルパワーで鳴ります」と紹介。動物の謝肉祭のフィナーレと同じく、残念ながらリズム音型がテンポにはまっていないように聴こえました。
最後に、大平がCDとYouTubeチャンネルの宣伝、長田が「京都コンサートホールのスタッフとのインタビューがホームページに掲載されているのでご覧ください」と呼びかけて、16:00に終演。規制退場はありませんでしたが、暖かくなったのでクロークが混まないと判断したのでしょう。

演奏中に左右のストップを触ることは一度もありませんでしたが、メモリーカードにインプット済みということでしょう。
なお、2022年度もこのシリーズは2公演が開催されますが、チケットが1000円から1500円に値上げされるようです。25年間ずっと1000円だったことがすごいですね。

(2022.4.5記)

京都コンサートホール バックステージツアー 避難訓練コンサート