大阪音楽大学第64回定期演奏会


  2021年12月3日(金)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

尾高忠明指揮/大阪音楽大学管弦楽団
並河寿美(ソプラノ)

ドヴォルザーク/序曲「謝肉祭」
R.シュトラウス/4つの最後の歌
ブルックナー/交響曲第7番(ハース版)

座席:座席指定 2階BB列22番



第62回定期演奏会第63回定期演奏会に続いて、3年連続で大阪音楽大学定期演奏会に行きました。
今年の指揮は尾高忠明。2018年度から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めています。他にもNHK交響楽団正指揮者、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団桂冠指揮者、札幌交響楽団名誉音楽監督、東京フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者、読売日本交響楽団名誉客演指揮者、紀尾井ホール室内管弦楽団桂冠名誉指揮者、東京藝術大学名誉教授、相愛大学客員教授、京都市立芸術大学客員教授、国立音楽大学招聘教授を務めています。令和3年度秋の叙勲で、旭日小綬章を受章しました。
意外にも大阪音楽大学を指揮するのは今回が初めてとのこと。尾高の指揮で聴くのは、NHK交響楽団京都公演以来、実に19年ぶりでした。

チケットは全席指定で3,500円。10月4日から「大阪音楽大学オンラインストア」で申し込みが開始。左右を1席空けての客席使用ですが、備考欄に座席の希望が入力できました。クレジットカード決済が可能で、すぐに送料無料でチケットがレターパックで届きました。

この日の大阪府の感染者数は18人で、以前に比べると激減しましたが、オミクロン株への感染者が確認されたことから、11月30日から外国人の入国が停止されたため、年末の「第九」公演の指揮者が交代するなどの影響が出始めました。
チケットに必要事項(氏名、住所、電話番号)を記入し、チケットを自分でちぎって大きいほうを箱に入れ、チケットの半券を持って入場します。ホール内はカフェ、ショップ、プレイガイド、クロークはまだ営業休止中でした。客の入りは5割くらい。当日券はごくわずか発売されましたが、1/2の座席数でほぼ満席でした。制服姿の高校生が多く見られましたが、在学生、教職員、付属音楽院生、高校生以下は無料とのこと。

大阪音楽大学管弦楽団は、管弦打楽器専攻で選抜された学生を中心に編成されています。プログラムによるとメンバーは106名で、大学院2年2名、大学院1年2名、大学専攻科6名、大学4年24名、大学3年22名、大学2年17名、大学1年6名、短大専攻科2名、短大2年1名、短大1年1名、教員4名、演奏員10名、卒業生9名。全員マスクなし。
尾高忠明は全曲指揮棒なしで指揮。意外に細身です。マスクなしで指揮しました。

プログラム1曲目は、ドヴォルザーク作曲/序曲「謝肉祭」。元気はつらつとした演奏でしたが、バランスはいまひとつで、強奏は弦楽器が聴こえないほど、打楽器と管楽器がよく鳴りました。尾高は力が抜けた指揮で、肩を前で揺らすような動きでした。

プログラム2曲目は、R.シュトラウス作曲/4つの最後の歌。ソプラノ独唱は、大阪音楽大学特任准教授の並河寿美。紺のドレスで、指揮者の左横で歌い、尾高も頻繁にアイコンタクトを取りました。
タイトル通り、R.シュトラウスの最晩年の作品で、4曲からなります。ゆったりしたテンポで、オーケストラ伴奏も技術的に難しくないですが、音程がもう少し合うとよかったでしょう。第1曲「春」、第2曲「九月」に続く、第3曲「眠りのときに」は、子守歌のよう。第4曲「夕映えに」もうっとりしましたが、 歌に対してオーケストラの音量が大きいのが残念。長い後奏が心に残ります。

休憩後のプログラム3曲目は、ブルックナー作曲/交響曲第7番(ハース版)。雛壇に、左から、ワーグナーチューバ4、ホルン5、トランペット4、トロンボーン3、テューバ1が並びました。床に唾落とし用の雑巾が置いてあって壮観です。ハース版なので、打楽器はティンパニだけです。降り番の学生はいたので、ノーヴァク版でシンバルとトライアングルを加えてもいいと思いましたが、芸術的な見地からの選択でしょう。尾高は大阪フィルハーモニー交響楽団第564回定期演奏会(2023.1.19-20)でもハース版で指揮します。なお、この曲を演奏会で聴くのは、スクロヴァチェフスキが指揮したN響オーチャード定期第39回以来ひさびさです。

オーケストラの一員として、全体に溶け込んで一体感がある演奏を目指すには、この作品はいい教材です。パートとしてのまとまりや統一感が重視されますが、ヴァイオリンはたまに個人差が出てしまうのが残念。金管楽器は音色にまとまりがあり、聴きごたえがありました。
第1楽章は38小節からトロンボーンとテューバが強力。119小節からのffはきれいなハーモニーを響かせました。ワーグナーチューバはずっと休みでしたが、第1楽章のラストでようやく出番。
第2楽章はワーグナーチューバから始まります。上述したように、ハース版のため、177小節からの頂点はティンパニもなし。ちょっと物足りなく感じます。尾高は強奏は力の入った指揮でした。190小節からホルンが強く入ってきました。第3楽章はやや速めのテンポ。第4楽章は速めのテンポで始まり、93小節からは金管楽器を無理なく伸びやかに響かせました。315小節からはテンポを落として演奏。フライング拍手もなく、残響がきれいに響きました。

演奏終了後は、尾高が指揮台の上から挨拶。「いろんな大学のオーケストラを指揮したが、初めて大阪音楽大学に呼んでいただけた。とってもいいオーケストラで一生懸命演奏してくれる。年齢は半世紀以上違うが、パワーをもらった。年寄りは疲れました」と話して、NHK交響楽団京都公演と同じ「おねんね」のポーズをして退場しました。最後は団員全員で一礼しました。21:05に終演。規制退場が行なわれました。

コロナ禍で合奏にもいろいろ制約がある状況なのかもしれませんが、期待以上の演奏が聴けました。さすが音大生ですね。

尾高は11月17日に行われた「大阪4オーケストラ活性化協議会 2022-2023 シーズンプログラム共同記者発表会」で、「大阪はほんとにええとこ。情がある」と穏やかに話していました。せっかく大阪フィルで音楽監督を務めているので、大阪フィルと大阪音楽大学とのコラボレーションも期待したいです。

ホール前のイルミネーション

(2021.12.11記)


ウエスティ<ruby><rb>音暦</rb><rp>(</rp><rt>おとごよみ</rt><rp>)</rp></ruby> 〜弦楽の調和〜 立命館大学交響楽団第126回定期演奏会