N響オーチャード定期第39回


   
      
2006年5月6日(土)15:30開演
Bunkamuraオーチャードホール

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮/NHK交響楽団

ブルックナー/交響曲第7番(ノヴァーク版)

座席:A席 3階 1列22番


N響オーチャード定期にスタニスラフ・スクロヴァチェフスキが登場です。NHK交響楽団の本拠地であるNHKホールとBunkamuraオーチャードホールは、すごく近い距離ですが、年に5回オーチャードホールで定期演奏会を開催しています。
スクロヴァチェフスキは、2007年4月から読売日本交響楽団の常任指揮者に就任することが決まっています。NHK交響楽団への客演はおそらく今期が最後になるのではないかと推測されます。

チケットは、Bunkamuraメールマガジンの読者を対象に、一般発売日前日に特別先行予約がありました。以前オーチャードホールで聴いた東京フィルハーモニー交響楽団第679回定期演奏会の経験を参考に、今回は3階席を選択しました。ただし、ホールに入って気づいたのは、このホールにはなんとエスカレーターもエレベーターもないこと。仕方がないので、3階まで長い階段を上りました。いまどき珍しいでしょう。また、ホールの座席に座ってさらにびっくり。3階席の最前列の座席でしたが、通路の前に設置された手すりが邪魔して、ステージが全部見えない。ステージの1列目と2列目の間の視界に手すりが入ってくる。これには驚きを通り越してあきれました。手すりを破壊したい気持ちになりました。この席はS席ではなくA席でしたが、本当に困ったホールです。客席はほぼ満席でした。

プログラムは、ブルックナー作曲/交響曲第7番のみ。スクロヴァチェフスキがゆっくりと登場。譜面台なしで指揮しました。手すりが邪魔なので、身を乗り出して前傾姿勢で聴きました。
期待以上のすばらしい演奏を聴くことができました。ブルックナーを聴いて心臓が高鳴ったのは初めての経験でした。まず賞賛すべきは、NHK交響楽団のレベルの高さ。まさに本領発揮で、完全にスクロヴァチェフスキの楽器になっていました。縦線や音程など技術的な問題をまったく気にしないで演奏に集中して聴くことができました。うまい。スクロヴァチェフスキの指揮にまるで手兵のように敏感に反応していました。弦楽器はチャラチャラせず落ち着いた響き。金管楽器もワーグナーテューバを含めて充実した演奏。強奏では壮絶な鳴らし方で、第1楽章ラスト、第2楽章の終盤、第4楽章など、あまりの熱演にドキドキしました。木管楽器も美しいソロで、トゥッティでも短い音符がところどころで顔を出しました。
スクロヴァチェフスキは、両手を大きく広げて力が入った指揮。手首を激しく動かして、オーケストラに音量を要求していました。スコアを逸脱するような解釈や局部のデフォルメはなく、強奏の終わりをリタルダンドする程度でした。

演奏終了後のスクロヴァチェフスキに対する大きな拍手がすごかった。カーテンコールが続きましたが拍手が鳴り止まないので、最後はスクロヴァチェフスキがコンサートマスターの篠崎史紀氏の手を取って一緒に退場しました。

スクロヴァチェフスキの演奏を聴いたのは、これで4回目でしたが、読売日本交響楽団(読売日響第116回東京芸術劇場名曲シリーズ読売日響第473回名曲シリーズ)よりもNHK交響楽団(第17回NTT西日本N響コンサート、今回)を指揮した演奏会のほうが、いい出来でした。選曲の問題もあるのでしょうが、NHK交響楽団のほうがスクロヴァチェフスキの指揮に対する反応がいいと感じました。相互の信頼感や相性もすごくいいと思います。ですので、これでNHK交響楽団への客演指揮がなくなってしまうとなると、かなり残念です。これからも定期的に客演してくれないでしょうか。

Bunkamuraオーチャードホールですが、音響は1階席よりも3階席のほうがいいでしょう。3階席では過不足ない自然な残響が聴けました。サントリーホールの金属的な残響よりもオーチャードホールのほうがブルックナーの演奏にはふさわしいでしょう。また、指揮者や奏者の動きもよく見えました。ただし、上述した手すりがあるので、3階席でももっと後ろ(4列目くらい?)ならステージ全体が見渡せるようです。2階席は全席が雨宿り席なので外すとして、このホールで視覚的にも聴覚的にも満足がいく座席はどこでしょうか。次回聴きに行くときは、研究したうえでチケットを買うことにします。

(2006.5.8記)


松濤郵便局前交差点から望む 正面エントランス 開場



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