オーケストラ・ディスカバリー2012 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「名曲のひ・み・つ」
第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」


   
      
2012年6月24日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
小川典子(ピアノ)
ガレッジセール(ナビゲーター)

ホルスト/組曲「惑星」から「木星」
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
ロッシーニ/歌劇「ウィリアム・テル」序曲から「スイス軍の行進」
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
マーラー/交響曲第1番「巨人」から第4楽章

座席:自由席


2009年度から始まった「オーケストラ・ディスカバリー 〜こどものためのオーケストラ入門〜」も今年で4年目を迎えました。2012年度のテーマは「名曲のひ・み・つ」。作品の解説を交えながら、演奏会が進行するようです。「こどものためのオーケストラ入門」というタイトルですが、年々レベルが高くなってきましたね。
第1回の今回は「作曲家に隠された真実(作曲家編)」。5人の作曲家の作品を演奏します。指揮は常任指揮者の広上淳一。ナビゲーターはガレッジセールの2人が担当しました。

チケットは、4回シリーズ通し券のあとに1回券が発売されました。4回通し券でかなり埋まったようで、指定席の1回券はあまりいい席が残っていませんでした。そのため、今回は思い切って自由席にしました。少し早めにホールに着いて、ひさびさにポディウム席に座りました。

広上淳一が登場。髪の毛がだいぶ伸びていました。プログラム1曲目は、ホルスト作曲/組曲「惑星」から「木星」。トランペットがよく鳴ってすばらしい演奏。3階席よりもポディウム席のほうが響きが豊かでうまく聴こえました。広上淳一は指揮の動きが小さくなりました。大きく振らなくてもオーケストラと意思疎通ができるようになったということでしょうか。また、後ろから見ていると気がつきませんでしたが、広上淳一の指揮台がものすごく低い。ひざの高さくらいしかありません。指揮しながらスコアは見えているのでしょうか。また、ホルンの左右に透明のついたてを立てていました。隣の奏者(ハープ、小太鼓)が自分の音が聴こえなくなることがないような配慮でしょう。ポディウム席から見ると新たな発見がありました。
広上淳一に紹介されて、ガレッジセールの2人がマイクを持って登場。Tシャツにジーパン(ゴリはジャージ?)というラフな格好でした。オーケストラ・ディスカバリー2011 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラの世界!」第1回「オーケストラ&バレエ」以来1年ぶりの登場で、広上淳一とも1年ぶりの再会となったようです。3人でトーク。ホルストの秘密として、占星術に興味を持っていたことを取り上げました。「猿の惑星はないですか?」というガレッジセールの質問に対して、広上は「いい突っ込みですね」と答えました。

プログラム2曲目は、ラフマニノフ作曲/パガニーニの主題による狂詩曲。ピアノ独奏は小川典子。赤色のドレスで登場。小川典子の演奏は京都市交響楽団第501回定期演奏会(大友直人指揮)でも聴きましたが、はっきりした打鍵です。ピアノの蓋が客席に向いているので、ポディウム席ではあまりピアノの音が聴こえませんでした。おそらくオーケストラ団員も協奏曲ではソリストの音があまり聴こえていないようですね。指揮棒を頼りにしてピアノとのタイミングを合わせているようです。
広上淳一はオーケストラ団員とアイコンタクトをよく交わしていました。演奏がうまくいけば、左指の親指を立てて「いいね」というメッセージを奏者に伝えていました。第10変奏の最後で、広上淳一が振り間違えたのか、オーケストラとピアノがずれたようです。京都市交響楽団第527回定期演奏会(河村尚子独奏)でもそろわない部分があったので、この曲の指揮は難しいようです。後半は「うん」と激しく息を吐きながらピアノとオーケストラがずれないように、タイミングをはかっていました。なかなかひやひやする危なっかしい演奏でした。競争曲らしくて楽しめましたが。
演奏が終わると、広上が小川に「ぶらあぼ」と声をかけました。ガレッジセールが「演奏していて鍵盤の黒と白が分からなくなることはありませんか」と質問すると、小川は「あります。ピアニストは必ず見る悪夢」と答えました。「シマウマを見て押したくなりませんか」と聞いて笑わせました。ラフマニノフはドからソまで届くほど大きな手でしたが、小川の指はドからミまで届くとのこと。ゴリと重ねても変わらないくらい長い手でした。広上はすごく短くて場内爆笑。小川は「ピアニストは腕が太くなる」とも語りました。この曲については、「10本の指をくまなく使う。苦労が報われる作曲家」と答えました。

休憩後のプログラム3曲目は、ロッシーニ作曲/歌劇「ウィリアム・テル」序曲から「スイス軍の行進」。序曲の最後の部分です。とても軽い響きでした。演奏後は、この曲が「オレたちひょうきん族」のオープニングで流れていたという話。私は知りませんでしたが、こどもはもっと知らないでしょう…。ロッシーニの秘密として、37歳で隠居してレストランのシェフになったことを紹介。

プログラム4曲目は、モーツァルト作曲/歌劇「魔笛」序曲。モーツァルトの秘密は、フリーメイソンの会員だったという話。広上淳一は「1ドル紙幣の裏には、ピラミッドや13の星が描かれている。魔笛序曲では3という数字が大事に使われている」と話しました。なかなか詳しいですね。

プログラム5曲目は、マーラー作曲/交響曲第1番「巨人」から第4楽章。マーラーの秘密は、交響曲第9番のジンクスを紹介しました。広上淳一がマーラーを指揮するのは珍しく、おそらく京響とは初めてではないでしょうか。遅めのテンポで演奏。どの楽器もよく鳴って高揚感が見事。弦楽器もよくそろっています。ポディウム席の真下にあるティンパニ2台と大太鼓もすごい迫力。広上淳一もうなり声を上げながら激しい指揮。これはぜひ全楽章聴きたいですね。もっとマーラーを取り上げてほしいです。

終了後は、ゴリが「鳥肌がスタンディングオべーションでした」とおもしろいコメント。次回の第2回で指揮する三ツ橋敬子について、広上は「学生のとき、ちょこっと教えたことがある」と話しました。

ひさびさのポディウム席でしたが、広上淳一の指揮ぶりを正面からよく見ることができました。演奏もじゅうぶん満足できました。ガレッジセールのトークも、ゴリが話をうまく引っ張っていました。

なお、地下鉄北山駅から京都コンサートホールへ向かう際に、初めて「エコ路地」を通ってみました。4月に開通した新しい通路です。いつもとは違う「出口3」から出て、京都府立植物園の横を通ります。いつもの「出口1」から出るよりも少し近い。柵越しに植物園の様子を見ることもできました。屋根がついているので雨の日などは便利でしょう。

地下鉄北山駅の表示 エコ路地入口

(2012.7.7記)


京都市交響楽団第555回定期演奏会 五嶋みどりデビュー30周年特別プロジェクト全国ツアー2012