京都市交響楽団大阪特別公演


   
      
2013年9月21日(土)14:00開演
ザ・シンフォニーホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
山本貴志(ピアノ)

デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲
リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲
ラヴェル/ボレロ

座席:A席 2階AA列20番


京都市交響楽団は毎年ザ・シンフォニーホールで大阪特別公演を開催しています。今年は常任指揮者の広上淳一が指揮しました。この2日後には、愛知県芸術劇場コンサートホールで第4回名古屋公演も行われます。
ザ・シンフォニーホールに行くのはひさびさで読売日響名曲シリーズ「シルヴァン・カンブルラン 第9代常任指揮者就任披露演奏会」以来でした。ちなみに、ザ・シンフォニーホールは、2014年3月をもって朝日放送から滋慶学園グループに譲渡されます。兵庫県立芸術文化センターやフェスティバルホールなど、交通の便がいいホールが周囲に増えてきたのも一因でしょう。
チケットは、シンフォニア会員を対象に優先電話予約がありました。客席は7割ほどの入り。

プログラム1曲目は、デュカス作曲/交響詩「魔法使いの弟子」。演奏会ではあまり演奏されない作品ですが、演奏するのが難しいからでしょうか。冒頭は縦線が乱れて危なっかしい。また、もっと幻想的な響きがほしい。72小節からはやや遅めのテンポ。弦楽器は軽いですが、もう少し重みがあってもいいでしょう。783小節で大太鼓が3小節早く叩いてしまうミス。
広上淳一は先週の第17回京都の秋音楽祭開会記念コンサート同様に、全曲指揮棒なしで指揮しました。

プログラム2曲目は、ラフマニノフ作曲/パガニーニの主題による狂詩曲。ピアノ独奏は山本貴志。山本貴志はショパン国際ピアノコンクール第4位入賞。今年で30歳。見た目も若いです。
広上淳一はこの作品が大好きなようで、すでに2回聴いています。京都市交響楽団第527回定期演奏会では河村尚子、オーケストラ・ディスカバリー2012 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「名曲のひ・み・つ」第1回「作曲家に隠された真実(作曲家編)」では小川典子をソリストに迎えました。今回は3回目です。
山本貴志のピアノは音量が小さい。ここまで音量を抑えて弾くピアニストは珍しいでしょう。ピアノの中に何か詰めているのではないかと思うほどです。音色も渋く、個性的なピアニストです。細かな音符では顔を鍵盤に近づけるように背中を丸めて弾きます。強奏ではのけぞるなど酔いしれるように弾きます。アクションは大きいですが、音色はおとなしい。テクニックはすばらしかったです。
この作品はオーケストラにとっても難曲のようで、過去2回の演奏と同じく、今回も手に汗握るスリリングな演奏でした。入りを間違えたのではないかと思う部分がいくつかあり、ハラハラしました。これまでの演奏よりは細部が鮮明になって、より立体的に聴こえてましたが、縦線のズレを広上淳一が強引につじつまを合わせる部分がありました。山本貴志のピアノが小さいので、広上も合わせるのが大変だったことでしょう。

休憩後のプログラム3曲目は、リムスキー=コルサコフ作曲/スペイン奇想曲京都市交響楽団第525回定期演奏会でもジョン・アクセルロッドの指揮で演奏したためか、安定感がある演奏。表情豊かで、強奏もよく鳴ります。ソロも上手で堪能できました。広上淳一もより力が抜けた指揮。第1楽章の「アルボラーダ(朝の歌)」は踊るように指揮。第2楽章「変奏曲」のクライマックスは、力のこもった指揮でした。

プログラム4曲目は、ラヴェル作曲/ボレロ。この作品も京都市交響楽団第525回定期演奏会でジョン・アクセルロッドの指揮で聴いています。小太鼓が第2ヴァイオリンとチェロの間に移動。指揮者の正面ではなく、第2ヴァイオリン寄りでした。周りに透明のついたてを立てていました。
やや速めのテンポ。広上淳一は拍は振らず、スコアをめくりながらうなずいて聴きました。ソロが終わると、奏者に向けて親指を立ててグーのサインを出しました。中盤からは両手を広げて方向性を示しました。コントラバスのピツィカートがどっしり響いて、隠れたファインプレー。ヴァイオリンの澄んだ音色が素晴らしい。小太鼓は早い段階で音量が強くなり、小太鼓2台目は1台目の隣で演奏しました。

カーテンコールの後に、広上が挨拶。「半沢直樹が明日最終回ですが、感謝の曲を10倍返ししたい」と言って笑わせました。CD(広上淳一指揮 京都市交響楽団定期演奏会 名曲ライブシリーズ3)のコマーシャルをして、アンコール。ブラームス作曲/ハンガリー舞曲第6番を演奏。第17回京都の秋音楽祭開会記念コンサートと同じでしたが、京都コンサートホールよりもザ・シンフォニーホールのほうが中低音が生きて聴こえました。

(2013.9.23記)




第17回京都の秋音楽祭開会記念コンサート オーケストラ・ディスカバリー2013 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラ・ア・ラ・カルト」 第3回「和&洋」