第22回京都の秋音楽祭開会記念コンサート


   
      
2018年9月16日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

井上道義指揮/京都市交響楽団

ホルスト/組曲「惑星」
ショスタコーヴィチ/交響曲第12番「1917年」

座席:全席指定 3階 C3列 18番


井上道義が昨年末の京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」(京都市交響楽団練習風景公開)以来、9ヶ月ぶりに京都市交響楽団を指揮しました。今年度は井上道義が京都市交響楽団の自主公演を指揮することはないため、貴重な機会です。「惑星」を1曲目に持ってくるという前代未聞のプログラムです(プログラムの経緯等は後述します)。チケットは9月3日に全席完売しました。

開演前に門川大作京都市長があいさつ。いつものように和服でした。文化庁の京都移転や京都・パリ友情盟約締結60周年などに触れました。団員が入場。客席から拍手で迎えられました。これまでは入場した団員は次々と自分の席に座っていきましたが、今回は立ったまま。コンサートマスターの泉原隆志が入場してから、礼をして全員で着席しました。入場のスタイルが変わったようです。

プログラム1曲目は、ホルスト作曲/組曲「惑星」。井上道義の指揮では京都市交響楽団第516回定期演奏会でも聴きました。また2ヶ月前には大植英次の指揮で大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会で聴きました。
大編成での演奏です。井上道義が走って登場。礼をするとすぐに指揮を始めました。やや抑制された響きで、大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会のほうがスケール感がありました。フェスティバルホールのような広いホールで聴きたいですね。井上道義は、指揮の動きは少なめですが、フレーズの始まりなどここぞというときには全身を使って指揮しました。曲によって指揮棒を使うかどうか変えました。縦線がやや緩め。

「火星」は指揮棒なしの指揮。井上道義は拍を振らずに、腰をかがめて腕を左右にゆっくり動かしました。84小節でシンバルの連打を聴かせました。「水星」は、指揮棒を使って指揮。キラキラと手をはためかせました。「木星」は、音色に品があります。194小節(Andante maestoso)からの有名なメロディーは、マルカート気味に、スコア通りnon legatoで演奏。音符をつなげないで演奏するので、意外にあっさり。京都市交響楽団第516回定期演奏会とは違った演奏。「土星」は指揮棒なしの指揮で、速めのテンポ。ラストのパイプオルガンが重厚に響きました(パイプオルガンはステージの操作卓から演奏しました)。
「天王星」は速めのテンポでしたが、大きな事故が発生してかなりむちゃくちゃな演奏に。138小節からのテューバとユーフォニウムのソロが落ちて、メロディーがなくなりました。井上道義がソロの入りをキュー出ししなかったのと、128小節のフェルマータ後のテンポがそろわなかったのが原因でしょう。演奏が止まるかと思いました。また、193小節からしばらくシロフォンが落ちました。192小節の9/4拍子の後のタイミングが合わなかったためでしょう。かなりヒヤヒヤの演奏でした。井上道義が本番で暴れすぎたか、リハーサルと本番で違うことをしたかでしょうか。
「海王星」は、女声合唱団なしでの演奏。井上が指揮した京都市交響楽団第516回定期演奏会では京響市民合唱団が出演しましたが、今回はプログラムの曲目解説によると「指揮者の希望によりエレクトーンを使用」とのこと。ちなみに、広上淳一が指揮した第16回京都の秋音楽祭開会記念コンサートでは女声合唱の代わりに、パイプオルガンで演奏しました。天井のスピーカーからエレクトーンによる電子音でコーラスが大きめの音量で聴こえてきました。エレクトーンではやはり機械的なので、本物の女声合唱のほうがいいですね。最後はデクレシェンドしていきましたが、まだ音が聴こえているのに、井上道義は振り向いて礼をしました。音楽が終わっていないのに、先に指揮をやめてしまうのは指揮者としてはどうでしょうか。天井スピーカーからの音が、指揮台からは聴こえにくいのかもしれません。終演後は、井上と一緒に女性がステージへ。おそらく舞台裏でエレクトーンを操作していた方でしょう。 

休憩後の予ベル直後に、井上道義が「ちょっとだけお話しさせてください」と話しながら登場して、マイクでトーク。「今日のプログラムは、物語のあるプログラム」と話しました。「惑星」について、「25年くらい前(※正確には1990年)に演奏して、鴨川を背景にした写真のジャケットでCD化された。京都には8年間いて、戦いもあった」と話しました。また、ショスタコーヴィチについては、「当時の本拠地の京都会館は響かないところで、逆にここでしかやれない曲を演奏しようと思った。ショスタコーヴィチのシリーズをやったが、みんな嫌いだった。ロシアではモスクワやペテルブルク以外では、ショスタコーヴィチをやらないし、間違ったイメージで捉えられている」「(1997年に)プラハの春(音楽祭)で、交響曲第12番をやった。つまらないという評価を受けた。変なテーマが入ってくると、音楽がしつこく邪魔に思われた」と話し、トロンボーンのメロディーを実際に歌いました。「今日のプログラムは京響への恩返しです」と話しました。
なお、井上道義のブログには、「今回そのころの思い出深い曲を2曲ならべさせていただいての無理やりのパワハラ的プロ。ソリストなんか要らない!と充分の練習を経てのコンサート」と綴られています。プログラムに協奏曲の打診があったようですが、井上が断ったようですね。

プログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第12番「1917年」。引き続き大編成での演奏。井上道義にとっては、首席指揮者として最後の定期演奏会となった、大阪フィルハーモニー交響楽団第505回定期演奏会(2017.2.17-18)と、大阪フィルハーモニー交響楽団《創立70周年記念》第50回東京定期演奏会(2017.2.22)でも取り上げられ、CD化もされました。

井上は指揮台に上がるとすぐに指揮を始めました。指揮棒なしでの演奏。「惑星」同様に、腕を左右に動かす指揮が多い。4つの楽章からなりますが、休みなく続けて演奏されます。同じテーマが繰り返し現れるので、初心者にも分かりやすいでしょう。細かな音符も丁寧に演奏し、強奏での迫力も十分。この作品の理想的な名演と言えるでしょう。大熱演でした。「惑星」のエラーをじゅうぶん挽回できました。
第1楽章「革命のペトログラード」からスピード感がすばらしい。明るいサウンドで、打楽器が盛大に鳴りました。フルートのアンサンブルがいい。第2楽章「ラズリフ」は長いクラリネットソロが聴かせます。第4楽章「人類の夜明け」はド派手に鳴ります。325小節は長めのパウゼ。ラストも華々しい。ティンパニと大太鼓の強打もすごい。

井上道義が指揮した「惑星」を聴いたのは京都市交響楽団第516回定期演奏会以来2回目でしたが、井上芸術の進化を感じました。ブログでは前述の通り「充分の練習」と書いてありましたが、大きなミスが出たのは残念でした。また定期的に京響を指揮してほしいです。

(2018.12.12記)



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