大植英次プロデュース「大阪クラシック〜街にあふれる音楽〜」


<第22公演>
2018年9月10日(月)18:15開演
Zeppなんば大阪

オーケストラ合同弦楽合奏

チャイコフスキー/弦楽セレナード

座席:1階 K列4番



<第24公演>
2018年9月10日(月)19:30開演
パークスタワー1階エントランス

田中美奈(ヴァイオリン)、力武千幸(ヴァイオリン)、松本浩子(ヴィオラ)、松隈千代恵(チェロ)

エルガー/夜の歌
シューベルト/弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」より第2楽章
モーツァルト/歌劇「魔笛」第2幕より「夜の女王のアリア」
ボロディン/弦楽四重奏曲第2番より第3楽章「夜想曲」

座席:自由


「大阪クラシック」に初めて行きました。2006年から始まって、今年で13年目です。過去12年間で、960公演が開催され、53万人以上が来場しました。御堂筋と中之島を中心に、オフィスビルやホテルのロビーなど普段コンサートが演奏されない場所で開催されます。多くが無料公演で、気軽に聴けるのも特徴です。

主催は大阪クラシック実行委員会(大阪市、公益社団法人 大阪フィルハーモニー協会、御堂筋まちづくりネットワーク)。参加団体は5団体(大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、大阪交響楽団、日本センチュリー交響楽団、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ)ですが、大阪フィルの出演が圧倒的に多い。

今年は、9月9日(日)から15日(土)までの1週間で、81公演が開催され、そのうち有料公演は22公演でした。演奏時間は、無料公演は約30分、有料公演は約45分(フィナーレの第81公演のみ1時間)でした。ほとんどが梅田から本町までの間で開催され、なんば周辺は9月10日(月)のみの開催でした。



<第22公演> 2018年9月10日(月)18:15開演 Zeppなんば大阪 オーケストラ合同弦楽合奏

大阪フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団の合同合奏です。有料公演(全席指定1,000円)で、1階席のみ販売され、2階席は招待席とのこと。チケットは7月28日(土)から発売されました。いくつかのプレイガイドで発売されましたが、多くの場合で座席は選べませんでした。電話予約やインターネット予約よりも直接購入(コンビニ店頭支払)のほうが手数料が安かったため、ローソンチケットで購入しました。ローソンの店舗にあるLoppiで申し込んで発券しました(発券手数料は108円)。

会場のZeppなんば大阪は、なんば駅から南西にかなり離れた場所にあります。2012年に開館しましたが、ライヴ中の観客のジャンプにより周辺の建物に振動問題が発生しているようです。通常はクラシックの演奏会は開催されません。

17:45に開場。客は普段のライヴならありえない年齢層の高さです。入口で袋を受け取りました。当日券も発売されました。この公演は「J:COM PRESENTS公演」で、J:COM×大阪クラシックコラボグッズがプレゼントされました。ピアノの鍵盤がデザインされたチケットホルダーが入っていました。

Zeppなんば大阪はスタンディングで使われることが多そうですが、この日は椅子(スタッキングチェア)が並べられていました。ステージには黒い幕が下ろされ、演奏者はステージ上ではなく、1階客席の前方で演奏します。最前列はH列だったので、私の席は前から4列目の左側でした。また、配布されたプログラムを見ると、出演者は13名。「合同弦楽合奏」となっていて、大人数での演奏を予想していたので、肩透かし。メンバーは、ファースト・ヴァイオリン4名(大阪フィルから田野倉雅秋と三瀬麻起子、大阪響から里屋幸、関西フィルから友永健二)、セカンド・ヴァイオリン3名(大阪フィルから横山恵理、大阪響から永嶺貴洋、関西フィルから増永花恵)、ヴィオラ3名(大阪フィルから岩井英樹と米田舞、関西フィルから飛田千寿子)、チェロ2名(大阪響から大谷雄一、関西フィルから大町剛)、コントラバス1名(大阪響から大槻健太郎)。大阪フィルから5名、大阪響から4名、関西フィルから4名でした。客の入りは8割ほど。

開演前に大植英次があいさつ。大植英次は大阪クラシックのプロデューサーで、前日にはオープニングを飾る第1公演を指揮しましたが、自分が指揮する以外の公演にも登場するとは思いませんでした。ガラガラの声で、「Zeppなんば大阪は、昨年の大阪クラシックで初めて使ったが、クラシックのコンサートはその時が初めてだった。今回の公演は、3つのオーケストラの合同演奏で、大阪クラシックでは初めて。自分が指揮しようとしたが、田野倉さん(コンサートマスター)に指揮者はいらないと言われた。合同演奏は大阪しかできない。この環境はみなさんが作ってくださっている」と話しました。フェスティバルホールで今年まで4年間開催された「大阪4大オーケストラの響演」に在阪4オーケストラが出演していますが、意外にも合同演奏の機会は少ないようです。続いて、大阪フィル、関西フィル、大阪響の3つのオーケストラの歴史を紹介し、「大阪クラシックは13年間無事故無違反でやっている。記録を続けたい。100年は続けたい」と意気込みを話すと、客席から拍手。自身については「62歳だけど元気です」と話しました。

団員が入場。カラフルなシャツで登場。オーケストラによって服装をそろえているようです。この合同合奏のコンサートマスターを務める田野倉雅秋(大阪フィルハーモニー交響楽団首席コンサートマスター)があいさつ。情報交換したり、和気あいあいと練習したとのこと。

曲目はチャイコフスキー作曲/弦楽セレナード。前から4列目でしたが、客席がフラットで段差がないので、奏者がほとんど見えません。コンサートマスターの田野倉は、大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会と同様に前のめり気味にリードしていたようです。視覚的には招待席の2階席のほうがはるかによかったでしょう。また、奏者との距離も近く、反響板もないため、奏者の音がダイレクトに聴こえました。ホールのキャパシティとのバランスは悪くなく、演奏メンバーが少なすぎることはありませんでした。ただ、ステージで演奏すれば違った響きになったでしょう。せっかくステージがある音楽施設で演奏しているのに残念。

演奏は音程がいまひとつ。もともと少人数で演奏する作品ではないので、個人の演奏力量があらわになります。特に第1ヴァイオリンは明らかに揃っていない部分もあって残念。大槻健太郎のコントラバスはしっかり響きました。演奏の完成度よりも合同合奏という企画そのものに意味があるということでしょうか。第2楽章は早めのテンポでしたが、ワルツの優雅さが表現できるといいでしょう。大植英次が指揮したほうが演奏のクオリティは上がったでしょう。

演奏終了後は、田野倉が「もう一度聴きたいところはありますか。一番有名なところをもう一度味わって帰っていただきたい」と話し、第4楽章386小節から最後まで演奏しました。演奏者が手を振って退場して、18:55に終演しました。

普段は一緒に演奏していない3つのオーケストラの合同演奏でしたが、もう少し合わせられたのではないでしょうか。演奏の出来が二の次になってしまいました。合同演奏の企画そのものにも意味はありますが、演奏の精度も求めたいです。

Zeppなんば大阪での開催は、クラシック音楽と異ジャンルのライヴ会場で演奏する意義は感じられますが、演奏者が見えないのがかなりのマイナスでした。 

Zeppなんば大阪(全景) Zeppなんば大阪(北西角) Zeppなんば大阪(開演前) Zeppなんば大阪ホワイエの顔ハメパネル



<第24公演> 2018年9月10日(月)19:30開演 パークスタワー1階エントランス 田中美奈(ヴァイオリン)、力武千幸(ヴァイオリン)、松本浩子(ヴィオラ)、松隈千代恵(チェロ)

第22公演が終わってから、近くのパークスタワーで、無料公演の第24公演が行なわれるので、せっかくなので行ってみることにしました。19:30開演で、本日の最終公演でした。パークスタワーは「なんばパークス Shops&Diners」(商業棟)とは別の建物で、30階建てのオフィスビルです。「なんばパークス」のランドマークになっているとのこと。

19:10頃に着いたところ、1階エントランスは黒山の人だかりで、200人以上は集まっていました。前方に座席がありましたが、ほとんどが立ち見でした。このビルで働いている人は何事かと驚いていました。

開演前に大植英次があいさつ。先ほどの第22公演でもあいさつしましたが、無料公演にもわざわざ顔を出すとは思いませんでした。出演が大阪フィルの団員だからでしょうか。まずパークスタワーの施設所有者である南海電鉄に謝辞。「大阪フィルの練習場(大阪フィルハーモニー会館)は、南海の跡地に建てた。南海がなければ大フィルはない。ラピートにいっぱい乗ってください(台風21号の影響により連絡橋が損傷したためラピートはまだ運休中でした)。大阪クラシックのために、1階ロビーにある「タワーカフェ」は開店休業になっている」と関係者への謝辞を述べました。「大阪クラシックを聴くために青森や福岡など遠方から来ていただいている。若い人が来てくれると、精力がついてくる」と話しました。

演奏曲目はパンフレットでは「弦楽四重奏でお届けする名曲セレクション」と記載されていましたが、会場入口で曲目が書かれた紙が配布されました。立ち見でしたが、奏者は何とか見えました。第1ヴァイオリンの田中美奈のMCで、メンバー紹介。いずれも大阪フィルの団員ですが、この4人は「ブルーメンカルテット」として、地味に長く続いているとのこと。田中はプログラムについて「夜にちなんだ曲を選んだ」と説明しました。なお、「ヴァイオリンの弓は、馬のしっぽでできていて、湿度が高いと水分を吸収して鳴りにくい」と説明しましたが、大植は「きれいです」とツッコミました。カルテットとして活動しているだけあって、さきほどのオーケストラ合同演奏よりも演奏の精度はいい。会場のエントランスにちょうどいい響きで、客は静かに聴きました。

プログラム1曲目は、エルガー作曲/夜の歌。ヴァイオリンとピアノの編成がオリジナルですが、弦楽四重奏曲の編曲を見つけたとのこと。
プログラム2曲目は、シューベルト作曲/弦楽四重奏曲第13番「ロザムンデ」より第2楽章。落ち着いた気持ちになれる心地よいアンサンブルです。
プログラム3曲目は、モーツァルト作曲/歌劇「魔笛」第2幕より「夜の女王のアリア」 。強弱のメリハリがある演奏。
プログラム4曲目は、ボロディン作曲/弦楽四重奏曲第2番より第3楽章「夜想曲」。意外に動きのある曲です。

演奏後に大植英次が4人に花束を手渡す粋なサービス。これはサプライズで、来場者が「大植から演奏者に渡してほしい」と花束を持参したようです。アンコールは、アンダーソン作曲/セレナータ京都ライオンズクラブ創立60周年記念チャリティーコンサートのアンコールで広上淳一が演奏しました。

最後に大植英次がMC。南海電鉄、スタッフ、ボランティアへの謝辞を述べて、20:10に終演しました。終演時にはさらに人が増えて300人以上は集まっていました。

パークスタワー1階エントランス パークスタワー1階エントランス



<全体の感想>
今年で13回目となった大阪クラシックは、すっかり大阪市民に定着していました。平日夜の無料公演にこれだけ多くの人が集まるとは思いませんでした。聴いたのは2公演だけでしたが、とても楽しめました。今後も都合がつけば、ぜひ行きたいです。いくつかの公演をハシゴして聴いている人もいました。

ただ、これは大阪だけではなく、他の都市でも実現可能なイベントでしょう。例えば、京都でも、京都堀川音楽高校、京都市立芸術大学、京都市交響楽団、京都フィルハーモニー室内合奏団、長岡京室内アンサンブルなど、多くの演奏団体があります。京都市立芸術大学の京都駅東部エリアへの移転によって、京都でも気軽にクラシック音楽が聴ける環境ができるとうれしいです。

大植英次は大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を2012年3月で退任して6年半が経ちますが、まだまだ人気があります。自分が指揮する公演以外にも足を運んで、大阪クラシック開催期間中は大阪にどっぷり浸かっているようです。桂冠指揮者としての活躍に期待がかかります。

(2018.9.23記)



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