大阪フィル×ザ・シンフォニーホール ソワレ・シンフォニーVol.11


   
      
2018年5月24日(木)19:00開演
ザ・シンフォニーホール

角田鋼亮指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団
川久保賜紀 (ヴァイオリン)

ベートーヴェン/劇音楽「シュテファン王」序曲
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
ドヴォルザーク/交響曲第9番 「新世界より」

座席:A席 2階BB列27番


注目の指揮者、角田鋼亮(つのだこうすけ)が大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮する演奏会に行きました。角田鋼亮は、1980年生まれで、まだ30代の若さです。2016年4月から大阪フィルハーモニー交響楽団指揮者を務めています。他にも、2015年4月からセントラル愛知交響楽団指揮者、2018年4月から仙台フィルハーモニー管弦楽団指揮者を務め、2019年4月からセントラル愛知交響楽団常任指揮者に就任します。

大阪フィルハーモニー交響楽団を聴くのは、大阪フィルハーモニー交響楽団創立60周年記念公演 ベートーヴェン交響曲全曲演奏会��以来で実に10年半ぶり。2012年3月に大植英次が第2代音楽監督を退任し、桂冠指揮者に就任。2014年4月から2017年3月まで井上道義が首席指揮者を務めました。また、尾高忠明が2017年4月からミュージック・アドヴァイザー、2018年4月から第3代音楽監督に就任して現在に至っています。
大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会は、大植英次が音楽監督に就任した2003年4月にフェスティバルホール(1日公演)からザ・シンフォニーホール(2日公演)に移転しましたが、2014年4月にザ・シンフォニーホール(2日公演)からフェスティバルホール(2日公演)に再移転しました。ザ・シンフォニーホールでは定期演奏会が開催されなくなりましたが、代わって2014年4月から「大阪フィル×ザ・シンフォニーホール ソワレ・シンフォニー」がザ・シンフォニーホールとの共同企画で開始され、今回で11回目となりました。2014年度は年4回、2015年度以降は年2回開催されています。

19:00開演ですが、18:50からプレトーク。事前のアナウンス放送は特になく、角田鋼亮が登場。背が高い。明るく聴きやすい声です。「こんばんわ」と挨拶すると、客席からも「こんばんわ」の声。角田は「返事があるのは大阪らしくていい」とコメント。他会場では返事がないということでしょう。まず、今回が第11回目となる「ソワレ・シンフォニー」の変遷について紹介しました。第1回から第4回まで(2014年)は19:30開演で、プログラムは序曲+交響曲。第5回(2015年)から第8回(2016年)までは19:30開演で、プログラムは序曲+協奏曲+交響曲。第9回(2017年)以降は、開演時間が19:30から19:00に変更になり、序曲+協奏曲+交響曲のプログラムとなりました。角田は「指揮者の負担がどんどん増える」と言って笑わせました。作品の解説については後述しますが、プレトークは5分間で終了しました。客の入りは6割程度でしょうか。2階席後部はほぼ空席でした。
団員が登場。大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会などでは、開演前に団員がばらばらとステージに登場して音出ししていましたが、プレトークがあったせいか、プレトーク後に同時に登場しました。この日のコンサートマスターは、首席客演コンサートマスターの崔文洙(チェムンス)。チューニングは弦楽器→管楽器の順で行ないました。

プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲/劇音楽「シュテファン王」序曲。プレトークで角田は「めったに演奏されない曲。ベートーヴェンは依頼を受けて作曲した。ベートーヴェンが偉い人を書くときに使われる変ホ長調で書かれている。「英雄」や「皇帝」も同じ調性で、堂々として威厳がある」と紹介。続いて、この作品の聴きどころを詳しく説明し、「すぐに楽しんでいただける」と話しました。作品はテンポに変化があり、後半の勇壮なところはベートーヴェンらしい。作曲時期としては「交響曲第7番」と同時期ですが、初期の作品のような雰囲気があります。弦楽器は響きが細い。角田は指揮台に上がると、細身であることが強調されました。指揮の動きが少し硬い。

プログラム2曲目は、チャイコフスキー作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、川久保賜紀。1979年生まれの38歳なので、角田よりも年上です。川久保は2002年のチャイコフスキー国際コンクールで第2位(第1位なし)を受賞しました。2018年度からは、桐朋学園大学院大学教授を務めています。日本フィルハーモニー交響楽団第189回横浜定期演奏会「沼尻竜典正指揮者就任披露演奏会」に出演予定でしたが、右腕の療養が長引いたため出演をキャンセル。今回初めて聴くことができました。プレトークで角田は「メロディーの息が長く、長い絵巻物を見ているような作品」とコメントしました。
川久保賜紀が赤紫色のドレスで登場。髪は短めでした。前曲と代わって、冒頭からオーケストラの響きに深みがありました。川久保賜紀はゆっくり丁寧な演奏。重音奏法ではしっかり二つの音を聴かせました。第1楽章カデンツァも弱音で開始。ゆっくりしたテンポで勢いに任せないところに好感が持てます。第1楽章カデンツァの最後もかなりゆっくりしたテンポ。第3楽章はカットなしで楽譜通りに演奏。17小節からのソロもゆっくりしたテンポ。565小節からの難所も切り抜けました。
オーケストラは川久保の独奏を聴いて寄り添うような伴奏。指揮台の角田鋼亮も正面ではなく、川久保を見られるように左斜めの立ち位置で指揮しました。ヴァイオリンパートの引き締まった響きがすばらしい。第1楽章195小節からはティンパニのトレモロ(f>p)を鳴らしました。第2楽章はフルートソロ(女性 田中玲奈か?)が上手い。クラリネットの金井信之の音色がよく聴こえましたが、息漏れの音も聴こえるのが残念。
ハプニングとしては、第1楽章が終わったところで、客席の男性が「ブラボー!」と叫んで、拍手が起きたこと。楽章の間での意図的の拍手はほとんどないのでびっくり。川久保も少し戸惑っているように見えました。

終演後の川久保は客席を見渡して礼。礼儀正しいです。拍手に応えて、アンコール。川久保が「バッハのサラバンド」と話して、J.S.バッハ作曲/無伴奏パルティータ第2番よりサラバンドを演奏。間を大事にして、ゆっくりしたテンポで演奏されました。音色もきれいで、見た目の弓遣いも美しい。心に染みいるいいひとときでした。川久保は録音の数が多くないので、もっとレコーディングにも取り組んでほしいです。

休憩後のプログラム3曲目は、ドヴォルザーク作曲/交響曲第9番「新世界より」。プレトークで角田は「「家路」はアイオワの英雄の死が描写されている。ドヴォルザークは「てっちゃん(=鉄道ファン)」だったので、蒸気機関車が走り出す音が第4楽章冒頭に表現されている」と話しました。
京都市交響楽団第606回定期演奏会でのラドミル・エリシュカ指揮による自然な演奏とは対照的に、金管楽器と打楽器が強力で、威勢がいい演奏。ティンパニが全体的にうるさく感じられましたが、フェスティバルホールに対応したバランスでしょうか。
第1楽章22小節のティンパニは、2拍目の四分音符を叩き直さずそのままトレモロ。412小節からのトランペットのクレシェンドが強烈。第2楽章はイングリッシュホルンのソロがよく響きました。第3楽章は弦楽器にもう少しボリューム感が欲しいです。第4楽章最後の小節のデクレシェンドはffくらいの大きな音量から徐々に落としましたが、pppまでは小さくなりませんでした。また、残念ながら客席からの拍手のタイミングが早く、余韻を楽しめませんでした。大阪人はせっかちなのでしょうか。
角田は第2楽章までは指揮棒なしで指揮。第3楽章からは指揮棒を使った指揮でした。強奏の前には右から左に腕を勢いよく動かすアクションを見せましたが、指揮の動きの変化に乏しい。また、何を聴かせたいのかメリハリがあってもいいでしょう。

拍手に応えてアンコール。ドヴォルザーク作曲/スラブ舞曲第10番を演奏。角田は指揮棒なしで指揮。演奏ものびやかでいい。

角田鋼亮は、大阪フィルハーモニー交響楽団指揮者に就任して3年目を迎えましたが、オーケストラを把握するにはまだまだと言うところでしょうか。まだ若さが感じられました。「新世界より」のような聴き慣れた曲では、オリジナリティが欲しいです。

大阪フィルハーモニー交響楽団は本拠地フェスティバルホールでの演奏に対応しているせいか、ザ・シンフォニーホールで聴くとバランスが悪いところがありました。ティンパニが大きく感じられたのが残念。またコンサートマスターやクラリネットなど個人の音色が目立って聴こえるのも、オーケストラ全体のバランスを考えると好ましくないでしょう。7月にはフェスティバルホールで開催される第520回定期演奏会を聴きに行くので、どのように聴こえるか聴きくらべたいと思います。

(2018.5.30記)


上福島北公園からザ・シンフォニーホールを望む



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