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<東京バレエ団「真夏の夜の夢」「セレナーデ」>
2018年4月30日(祝・月)15:00開演 ベンジャミン・ポープ指揮/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 セレナーデ 真夏の夜の夢
座席:S席 2階1列16番
<WOWOW「バレエ☆プルミエール」公開収録> 2018年4月30日(祝・月)17:30開演 出演:大貫勇輔、上野水香、阿部さや子、渋佐和佳奈 座席:P席49番 |
東京バレエ団がメンデルスゾーン「真夏の夜の夢」とチャイコフスキー「セレナーデ」を上演しました。「上野の森バレエホリデイ2018」の一環で開催されました。「上野の森バレエホリデイ」は、昨年初めて開催され、32,000人を動員し、今年度は2年目です。4月26日(木)〜30日(祝・月)の期間で、東京文化会館を会場に開催されました。「公開レッスン」「公開リハーサル」「プロジェクションマッピング」「ミニ・コンサート」「バレエ大学」「はじめてのバレエ・レッスン」「バックステージ・ツアー」「バレエマルシェ」など、多くの企画が行なわれました。予想以上に大規模なイベントです。東京文化会館大ホールのホワイエで開催された「バレエマルシェ」は多くの人で賑わっていました。総合パンフレットを1,000円で購入しました。
東京バレエ団「真夏の夜の夢」「セレナーデ」の公演は28日(土)と30日(祝・月)の2回、4歳以上が対象の「親子で楽しむゴールデン・ウィークファミリー公演「真夏の夜の夢」」が28日(土)、29日(日)、30日(祝・月)の3回行われました。
東京文化会館大ホールは日本舞踊×オーケストラVol.2以来2回目ですが、2階席は初めてでした。ステージとかなり距離があり、決してバレエを鑑賞するのに向いている座席ではありません。オーケストラピットも客席を撤去して設置したわけではなく(客席最前列は1列)、ステージの前方にありました。オーケストラ団員は音出し中でした。客の入りは9割ほど。
プログラム1曲目は、チャイコフスキー「セレナーデ」。有名な弦楽セレナードをジョージ・バランシンが振り付けた作品です。意外にも東京バレエ団は初演とのこと。指揮者のベンジャミン・ポープがオーケストラピットに登場。頭だけ見えました。オーケストラの配置は、左から、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ。2列目の正面にコントラバス。
第1楽章はテンポが速く、あまりヴィヴラートしない演奏。オーケストラの音量は豊かでコントラバスがよく効いています。ステージにはセットがなく、照明も青く薄暗く、最初から最後まで同じで、無機質な印象です。出演者にも役名はありません。ストーリー性にも乏しい(後述のWOWOW「バレエ☆プルミエール」公開収録での上野水香のコメントも参照)。青白いドレスの女性が16名立っています。テンポが速くなってから、ダンサーも活発な動き。第1楽章のラストで男性ダンサーが登場。休みなく第2楽章へ。男女が一緒に踊ります。第2楽章の後は第4楽章。テンポがやや遅めなのは、ダンサーへの配慮でしょうか。第4楽章のラストは全員で踊り、女性が倒れました。最後は第3楽章。男性ダンサーはこれまで1名だけでしたが、なんと4名登場。最後は、女性が生け贄のように男性3名に持ち上げられて、幕が閉まりました。カーテンコールの後、休憩に入りました。
休憩後のプログラム2曲目は、メンデルスゾーン「真夏の夜の夢」。オーケストラピットには、先ほどの弦楽器の左後ろに木管楽器、右後ろに金管楽器が配置されました。「序曲」は遅めのテンポで、はっきり聴かせました。ランチベリーの編曲を採用しているため、他の曲でも一部カットがあり、曲順も入れ替わっています。
序曲の途中で幕が開くと、ステージには森の中をイメージした立派なセットがありました。妖精(白い衣装の女性)がバタバタ動き回り、序曲の終わりに、オベロン役のフリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団プリンシパル)が登場して、客席から拍手。続く「Allegro vivace」もテンポが遅い。続いて、森の妖精のパック(宮川新大)が登場。サルのように飛んだり跳ねたり快活に動きます。続いて、ハーミアとライサンダー、ヘレナとデミトリアス(ともに人間で恋人同士)が登場。このあたりは登場人物の入れ替わりが激しい。「Song with Chorus」では児童合唱団の歌声がマイクからの音声で聴こえてきましたが、合唱団の姿は見えません。上野の森フェアリー合唱隊は小学3年生〜高校3年生の30名程度を募集していました。あまり人数が多い感じではなく、音程もあまり合っていません。歌詞は英語でした。タイターニア(沖香菜子)が登場。金髪で日本人に見えませんでしたが、フリーデマン・フォーゲルとのバランスを重視したのでしょう。
このストーリーの大事なアイテムの惚れ薬は、小さくて客席からよく見えませんでした。村の職人たちが登場。職人ボトムの頭がロバ(サイのように見えた)になって、シンバルが鳴って激しい演奏。客席から拍手。「葬送行進曲」はクラリネットソロで、タイターニアとボトムが踊りました。ヘレナを奪い合うシーンでは、ライサンダーとデミトリアスの男2人がお見合いになって、コミカルなしぐさに客席から笑いが起きました。
「Allegro appassionato」からのメロディーが繰り返し使われます。両方の舞台袖からスモークが出てきました。これは「オベロンがすべて正しく置き換える霧を湧かせた」というストーリーにもとづいた演出です。「スケルツォ」はテンポが遅め。ボトムが土下座しています。有名な「結婚行進曲」は一部カット。最後までパックの運動量は衰えません。「Con moto tranquillo」は、オベロンとタイターニアの幸せそうな踊り。客席から「ブラボー!」の声が起こり、拍手を受けました。そのせいで次の曲がなかなか始まりませんでした。最後は、合唱が加わる「Finale」。終演後はカーテンコール。指揮者のベンジャミン・ポープもステージに上がりました。
この演目は、大勢で踊る曲が少なめでした。ステージで踊る人数が多いほうが楽しめますね。メンデルスゾーンの原曲がカットされているなど、バレエならではの編曲に少し戸惑いました。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は期待以上の演奏でした。 2015年度から常任指揮者に就任した高関健の功績でしょう。
<WOWOW「バレエ☆プルミエール」公開収録>
17:30から小ホールでWOWOWの番組「バレエ☆プルミエール」の公開収録が行なわれました。番組としても初めての公開収録とのこと。先ほどのチャイコフスキー「セレナーデ」に出演した上野水香がゲストでした。WOWOW視聴者や大貫勇輔ファンクラブなどを対象に事前申し込み制だったようですが、当日券が16:30から無料で配布されました(WOWOWバレエのTwitterによると、当日券は150枚ほどだったようです)。終演後に急いで行ったところ、当日券をもらえました。座席指定で、当日券の入場者は通路よりも後ろの座席でした。
まず、渋佐和佳奈(WOWOWアナウンサー)が登場して、きれいな声で説明しました。今回は「バレエ☆プルミエール」のコーナー「バレエの王子様」のスペシャル版で、「バレエのお姫様」として、初めて女性ダンサー(上野水香)が登場するとのこと。続いて、進行役の大貫勇輔が登場。初の公開収録について、「いつもは殺風景なスタジオですが、今日は楽しくやれそうです」と話しました。今日はミュージカル「メリー・ポピンズ」(東急シアターオーブ)の本番後に駆けつけているとのこと。また、「今日は本田望結はいません。いつも癒してくれるけれど」と話し、いつもは大貫勇輔と本田望結の二人が進行役を務めていますが、本田望結の出演はありませんでした。なお、実際のオンエアでは、本田望結も出演しています(後述)。
ゲストとして、阿部さや子が登場。阿部は「上野の森バレエホリデイ」で企画協力している有限会社オン・ポワントの企画・制作部長を務めています。続いて、上野水香も登場。赤に白玉のワンピースドレスで、長い髪をおろしていました。顔が小さいですが、声が低くて、見た目とのギャップが激しい。大貫は上野について「宝塚の舞台で共演したことがある。緊張している」とコメント。上野は大貫について「基礎に忠実」とコメントしました。
ステージに置かれたソファーに、左から、大貫勇輔、上野水香、阿部さや子の順で座りました。まず、上野水香のプロフィールの紹介映像が、ステージ上部にあるスクリーンに映りました。東京バレエ団プリンシパルとして活躍し、ベジャールの「ボレロ」を踊れる唯一の日本人女性と紹介されました。すごいところは足の甲がしなやかに曲がることと、軸足がぶれないこと。上野は「自分の軸を意識する」とコメント。また、「つま先にどこまで心がこもっているか」が重要と話しました。
映像が終わり、3名でトーク。先ほど大ホールの「セレナーデ」本番で上野が踊っていたトウシューズがステージに運ばれました。触った大貫は「硬い」とコメント。右足と左足で糸が違うようで、上野は「糸一本で回転が変わる。リボンは自分でつけた」と説明しました。普段意識していることについて、大貫は「物を持つときとかに、どう持つとか、いろんな持ち方の可能性を考える。周りからは「変だね」と言われるが、心と体のポジションのいろんな可能性を考える」と話しました。ベジャールに会って得たことについて、上野は「ボレロの動きがコンテンポラリー寄りで、クラシックではないが、ベジャールに「クラシックの基本の動きを踏まえて踊れ!」と言われた。意外だった」と話しました。
続いて、上野水香の素顔に密着取材した映像が流れました。自家用車で出勤し、「クラス」と呼ばれる毎日の基礎トレーニングをこなし、今日の身体の調子を見るとのこと。昼食は弁当で少なめ。料理はやらないので、「主人が作ってくれる」と話しました(上野は2010年に東京バレエ団プリンシパルの高岸直樹と結婚しましたが離婚。2017年に一般の方と再婚したことが2018年5月にインスタグラムで発表されました)。続いてカバンの中身をチェック。必需品は松やにスプレーで、「靴が脱げなくするため」と紹介。また、「モナコには15〜17歳のときに住んでいてのんびりしていた。和気あいあいと楽しくやっていた。バレエの基礎をしごかれたのがよかった」と話しました。
映像後のトークでは、阿部が上野に「誰に対しても態度が変わらないところがすごい」とコメント。続いて、必需品の紹介。マッサージボールはゴムでできていて硬い。足の裏とかをほぐすために使うとのこと。大貫が上野に「コンディションが悪いときはどうするんですか」と質問。上野は「腰が悪いときはいつもよりも力を入れる。痛いところがあるときに痛いところを考えて力を入れる」と答えました。
先ほどの本番で演じたチャイコフスキー「セレナーデ」について、阿部は「本当に美しい作品。東京バレエ団は初演だったが、これからも大切なレパートリーになる」とコメント。上野は「「セレナーデ」はストーリーがない。音楽に忠実で、音楽をそのまま視覚化した。振付のバレンシンには「表現しないで」と言われた。むかし後ろで踊っていたので懐かしかった。当時は草刈民代が踊っていた。感情を込めないかもしれないが深い表現」とコメント。大貫も「初演の初日は緊張する」と話しました。「生活の中で意識していることは?」の質問には、上野は「とっても自然体。本番前は太らないように食事を減らす。けがしないようにストレッチして、二の腕を美しく引き締める」と答えました。ストレッチは1日100回するとのことで、観客と一緒に二の腕に効くエクササイズ。観客も立ち上がって、上野の見本を見ながら、全員で白鳥の翼のように、両腕を上下に動かしました。ステージから客席を見ていた大貫と上野は「壮観」とコメントしました。
続いて、質問コーナー。大貫が箱の中から質問の書かれた紙を引いて、上野が答えました。最初の質問は「ポワントはどのくらいで履きつぶすか?」の質問。上野は「1回から1週間。「白鳥の湖」や「ドンキホーテ」は消耗する」と答えました。「家に帰ったらまず何をする?」には、「水を飲んでから、ごはんを食べる」。「大貫と上野で踊ってください」という依頼には、客席から拍手が起こりましたが、「今日は無理」と答えました。阿部が大貫に「ドンキホーテを踊ってほしい」とリクエスト。大貫は「いつかバレエ全幕をやってみたい」と答えて、会場から拍手。「大切にしているときはどんなとき?」に、上野は「お客さんと通じ合う瞬間を探すこと、通じたと感じることはある」と答えました。
大貫は「いつものスタジオ収録よりも楽しかった。お客様と会話できた」と話しました。最後に、上野は「公開収録は初めてだったが楽しかった」、大貫は「自分にとって有意義だった」、阿部は「リラックスして話せた」と感想を話しました。大貫が最後に「この番組は5回で終わるはずが1年間続いている。ありがたい。もっとバレエが盛り上がるといい」と話しました。18:40に終了しました。
実際のオンエア(「バレエ☆プルミエール#7」5月13日(日)放送)では、大貫と本田望結が東京文化会館のバックステージを紹介。東京文化会館職員の案内で、楽屋口から大ホールへ。壁のいたるところがサインだらけでびっくり。最古のサインは1967年に書かれたオーマンディ指揮フィラデルフィア管弦楽団のものでチョークで書かれています。大貫と本田もサインしました。下手の舞台袖はすさまじく、大きなポスターやパネルが飾られています。大ホールはステージの奥行きが広い。また、客席の壁面は雲の形を模しており、ブナ材で作られ、乱反射によって音響効果を高めているとのこと。客席の椅子をカラフルにしているのは、設計当初からで、ステージから空席が目立たないようにするためとのこと。出演者がステージのセンター位置が分かるように、1階席後方にランプがあるとのこと。また、大ホールのステージは二階建て構造で、コンサート用の舞台と反響板は地下に収納されているという他に類を見ない構造になっているとのこと。約15分で入れ替えできるとのこと。出演者が利用できる楽屋カフェでは、上野精養軒の料理が食べられます。大貫と本田は、名物の「チャップスイ(670円)」を食べ、大貫は「西洋風の中華丼」とコメントしました。
「上野の森バレエホリデイ」は予想以上に規模が大きく、こんなにイベントが多く開催されるとは思いませんでした。前日のイベントにも参加したかったです。まだ知名度が低いので、もっと広報したほうがよいかもしれません。ゴールデンウィーク中に開催される「ラ・フォル・ジュルネ TOKYO」(東京国際フォーラム、東京芸術劇場)に匹敵するイベントに成長するでしょうか。今後も楽しみです。