京都市立京都堀川音楽高等学校創立70周年記念第45回オーケストラ定期演奏会


   
      
2018年7月23日(月)18:00開演
京都コンサートホール大ホール

三木薫・藏野雅彦指揮/京都市立京都堀川音楽高等学校オーケストラ
津幡泰子(ソプラノ)、井上大聞(バリトン)、韓伽倻(ピアノ)
京都市立京都堀川音楽高等学校合唱団

ブラームス/大学祝典序曲
フォーレ/レクイエム
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ドヴォルザーク/交響曲第9番 「新世界より」

座席:全席自由


京都市立京都堀川音楽高等学校第45回オーケストラ定期演奏会に行きました。京都堀川音楽高等学校オーケストラを聴くのは、第38回オーケストラ定期演奏会以来、7年ぶりです。今回は京都堀川音楽高等学校創立70周年を記念して、豪華なプログラムとなりました。

入場は無料でしたが、事前申込制で、当日券はなし。申し込み方法は、82円切手を貼った返信用封筒とともに、京都堀川音楽高校宛に封書を郵送するという非常に原始的な方法。電話、ファックス、電子メール等での申し込みは不可で、ちょっとめんどくさい。数日でチケットが届きました。なお、申込受付期間は5月14日から7月11日まででしたが、6月27日に予定枚数に達したため受付終了となりました。例年より2週間早かったようです。第38回オーケストラ定期演奏会では、入場整理券がホームページからダウンロードできましたが、入場者の増加に対応して事前申し込み制に変わったようです。また、7月13日(金)には、卒業生の佐渡裕が来学し、オーケストラと合唱を指導した記事が京都堀川音楽高校のホームページに掲載されました。

開場は17:00でしたが。開場待ちの行列ができていて、最後尾は1階のスロープの下まで続きました。この日は祇園祭の後祭りの宵山でしたが、よく集まったものです。ホワイエでは、京都堀川音楽高等学校平成31年度学校案内のパンフレット(CD付き)と、平成24年度から平成29年度までのCDを配布していました。CDはオーケストラ定期演奏会や卒業演奏会のライブ録音で非売品。とりあえず全部もらいました。学校案内によると、京都堀川音楽高校の定員は1学年40名で、声楽専攻、器楽専攻(ピアノ、弦楽、管楽、打楽)、作曲専攻、楽理専攻(表現コース、理論コース)からなります。

プログラムは祝辞にはじまり、メンバー表や曲目解説、オーケストラ定期演奏会の歩みなど充実した内容でした。曲目解説は教員が執筆して、譜例付きで本格的です。今回の演奏会の指揮者・独唱者・独唱者は、5人とも京都堀川音楽高校(前身の京都市堀川高校音楽科を含む)の卒業生。卒業生が第一線で活躍しているのはすごい。指揮を務める藏野雅彦は、2015年度から京都堀川音楽高校教頭を務め、2016年度末をもって退職しました。現在は、京都堀川音楽高校改革推進コーディネーターとして、音楽(指揮・トランペット)を担当しています。プログラムによると、藏野が高校3年生の時に第1回の定期演奏会を立ち上げ、第14回定期演奏会から現在まで毎回欠かさず指揮しています。

メンバー表を見ると、ヴィオラの生徒がヴァイオリン奏者として出演しているのが珍しい。在学生以外には、卒業生だけでなく、京都近隣の音楽大学の卒業生や講師も出演しています。弦楽器が非常に多く、逆に、ファゴット、テューバ、ハープ、オルガンは在学生がいないのか、すべてエキストラでした。オーケストラは対向配置。左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン。チェロの後ろにコントラバス。珍しいですが、教育的な意味があるのでしょうか。客の入りは9割程度でした。

プログラム1曲目は、ブラームス作曲/大学祝典序曲。指揮の三木薫が大股で登場。三木は京都市堀川高校音楽科の卒業生で、現在は京都堀川音楽高校講師として、音楽(クラリネット・合奏・重奏・ソルフェージュ・演奏研究)を担当しています。譜面台なしで指揮。感情を入れない淡々とした指揮でした。オーケストラは大編成での演奏。ほぼ全員と思われ、スコアにはないテューバも演奏しました。アインザッツに乱れがあるのが残念でしたが、オープニングを飾るにふさわしい華々しい演奏でした。演奏が終わると暗転。楽器や椅子の配置転換も生徒が行ないます。

プログラム2曲目は、フォーレ作曲/レクイエム。合唱団が入場。オーケストラの後方に扇型に3列で並びました。パンフレットによると合唱団は総勢88名で、左から、ソプラノ、バス、テノール、アルトの順ですが、男声が少ない。暗譜で歌いました。独唱者は指揮台の横に座りました。向かって左が津幡泰子、右が井上大聞で、二人とも卒業生です。津幡は京都堀川音楽高校教諭で、音楽(声楽・合唱)を担当しています。オーケストラは2管編成で少人数。パイプオルガンはステージ右に設置された演奏台(リモート式)で演奏。第1曲「イントロイトゥスとキリエ」の冒頭から合唱の澄んだ声がすばらしい。第2曲「オッフェルトリウム」も美しい。第3曲「サンクトゥス」での男声の「Hosanna」も力強い。第6曲「リベラ・メ」は、井上のバリトンがよく響きました。「Libera me」が合唱のユニゾンで歌われる93小節からはテンポが速くなってしまって残念。合唱団はずっと立ちっぱなしでしたが疲れも見せず、ステージマナーもすばらしい。名古屋フィルハーモニー交響楽団コバケン・スペシャルVol.16「マイ・フェイヴァリット・マスターピーシーズ4」で見事な歌声を聴かせた愛知県立岡崎高等学校コーラス部・岡崎混声合唱団のような合唱団に成長してくれることを期待します。

休憩後のプログラム3曲目は、ベートーヴェン作曲/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」。ピアノ独奏は韓伽倻(ハン・カヤ)。韓も京都市堀川高校音楽科の卒業生で、現在はドイツのカールスルーエ国立音楽大学教授を務めています。朱色でスパンコール入りのドレスで登場。ベートーヴェンを弾くには奇抜なデザインでしょうか。韓は重厚感を意識せずスラスラ弾きます。弾き終わると、右腕を高く上げるアクションを見せます。第1楽章188小節からは低音の下降音型を強調。第1楽章が終わると、客席から自然に拍手が起こりました。第2楽章はショパンのノクターンのような雰囲気。藏野の譜面台は斜めに設置されていて、韓とアイコンタクトを取りやすいようになっていましたが、韓は藏野をあまり見ないでマイペース。オーケストラとテンポを合わせるつもりがあまりないようでした。

暗転の後、プログラム4曲目は、ドヴォルザーク作曲/交響曲第9番「新世界より」。つい最近大阪フィル×ザ・シンフォニーホール ソワレ・シンフォニーVol.11でも聴きました。藏野は譜面台なしで指揮。トゥッティでテンポが走りやすくなるのが残念。弦楽器は表情豊かで安定した演奏。強奏はもう少し音圧があってもいいでしょう。木管楽器は部分によって出来不出来が激しい。アインザッツの乱れなどのミスがやや目立ちました。やや棒吹きの部分があるので、もう少し表情豊かに。ティンパニが打点が曇っていて拍がはっきりしません。第1楽章は177小節からの1番括弧を楽譜通り律儀に反復。第2楽章のイングリッシュ・ホルンが堂々としてすばらしい演奏でしたが、生徒ではなく京都堀川音楽高校講師の上西綾香でした。第4楽章の冒頭は速めのテンポ。トランペットがよく鳴りました。

演奏後に藏野が指揮台の上で挨拶。「京都市はすごい。芸術を支えてくれる街。世界に活躍する音楽家が生まれると確信している」と話しました。メンバーを追加してアンコール。J.シュトラウス?世作曲/雷鳴と稲妻を演奏。シンバルと大太鼓が派手に鳴りました。華やかなエンディングで、21:10に終演。実に3時間を超える演奏会となりました。

藏野雅彦の指導力をたたえるべきでしょう。同校オーケストラを育て上げた功績はすばらしく、高校オーケストラとしては驚異的な完成度です。また、卒業生を独唱者、独奏者に招き、在学生も励みになったことでしょう。ただ、演奏会が長時間に及んだため、演奏途中で帰る客も散見されたのが残念です。

なお、この演奏会とは別に、堀音同窓会主催の「堀音創立70周年記念演奏会」が12月に開催されます。佐渡裕(京都市堀川高校音楽科卒業生、京都市立京都堀川音楽高等学校芸術顧問)が、卒業生による特別編成管弦楽団・合唱団、卒業生の独唱者を指揮して、ベートーヴェン「第九」他を演奏します。

(2018.7.29記)



大阪フィル×ザ・シンフォニーホール ソワレ・シンフォニーVol.11 大阪フィルハーモニー交響楽団第520回定期演奏会