オーケストラ・ディスカバリー2010 〜こどものためのオーケストラ入門〜 「オーケストラ大解剖!」
第2回「オーケストラの楽器」


   
      
2010年8月29日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
ロザン(ナビゲーター)

シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
ミヨー/組曲「ルネ王の暖炉」から第6曲「ヴァラブルでの狩り」
スザート/ルネサンス舞曲集から
外山雄三/管弦楽のためのラプソディー
グリンカ/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
グリーグ/組曲「ホルベアの時代から」から第4曲「アリア」
ラヴェル/ボレロ

座席:指定席 3階C−2列20番


京都市交響楽団の自主公演「オーケストラ・ディスカバリー2010 〜こどものためのオーケストラ入門〜」に行きました。前常任指揮者の大友直人が始めた「こどものための定期演奏会」をリニューアルしたシリーズです。2年目の今年のテーマは、「オーケストラ大解剖!」。年に4回開催されていて、2010年度の第2回は常任指揮者の広上淳一が登場。今回のテーマは「オーケストラの楽器」です。ナビゲーターとして昨年度からロザンの2人が起用されています。

チケットは、4回シリーズ通し券が先行発売された後に、1回券を発売。京都コンサートホールのホームページからオンラインで購入しました。席種は「指定席」と「自由席」の2種類ありました。3階席Cブロックの後方が自由席になっていたようです。
演奏会当日に、ホール受付で予約番号を伝えてチケットを受け取ります。当日券なしの全席完売でした。前回の第1回「吹奏楽VSオーケストラ」(井上道義指揮)も早々と完売となったので、人気が出てきたようです。
客層はこども連れの親子も多いですが、年輩の方も見られました。パンフレットはすべての漢字に読み仮名が書かれていて親切でした。

開演前に、ロビーで「ロビーイベント」が開催されました。今回は「コントラバス大解剖!」。オリエンテ・ヒガシ絃楽器製作所の協力で、コントラバスの特徴や製作過程が説明されました。分解されたコントラバスの部品が展示されましたが、表板と裏板は意外に薄いですね。こどもたちが鋭い質問をしていました。

シャブリエ作曲/狂詩曲「スペイン」で開演。この曲は第4回京都市ジュニアオーケストラコンサートでも演奏しました。当然ですが、京響のほうが響きが豊かで上手。広上のお気に入りの曲のようです。
ナビゲーターのロザンの2人が登場。京響オリジナルTシャツ(黒地に緑)にジーパンの服装でした。ロザンのトークは、さすが話すことを商売にしているだけあって、広上と変わらないくらいよく話します。ボキャブラリーも豊富。突っ込みも鋭く、冗談もあって、楽しめました。京都市交響楽団スプリング・コンサート京都市交響楽団 at 円山公園音楽堂!では、広上が司会者の女性に逆に質問するという司会者が交替したような展開になりましたが、今回はロザンと団員とのトークを、広上は一歩下がって聞いていました。ときにはロザンのトークに広上が大笑いしました。

続いては、今回のテーマ「オーケストラの楽器」にちなんで、楽器紹介。ステージ中央にスペースを作って、広上に名前を呼ばれた各楽器の奏者が一人ずつ登場しました。パンフレットでも2ページを取って各楽器を丁寧に紹介されました。ロザンが団員にいろいろ質問して進行します。菅広文は「その楽器はおいくらですか」という質問をほぼすべての団員に聞きました。庶民の視点でオーケストラを見ることができて、よかったのではないでしょうか。私は今回のロザンのギャラがいくらなのか気になりましたが(笑)。
最初は木管楽器。フルートの値段600万円に、客席からは「えー」という悲鳴にも似た驚きの声が上がりました。広上はイタリアのオーケストラを指揮したときに、背が低いことから「ピッコロ」と呼ばれたというエピソードを紹介。オーボエのリードは自分で作っている。リードは人間ののどぼとけや声帯に当たるので、リードがないと音が出ない。広上は「オーケストラのチューニングを、オーボエの音に合わせるのは2つの説がある。1つは音が確実になる楽器だから、もう1つは音色が繊細なので合わせやすいから。」と紹介。クラリネットは筒井祥夫さんが登場。私が持っている楽器は30万円程度でしたが、筒井さんの楽器は100万円程度とのこと。
木管楽器の紹介が終わったところで、フルート、オーボエ、ホルン、ファゴット、クラリネットの木管五重奏で、ミヨー作曲/組曲「ルネ王の暖炉」から第6曲「ヴァラブルでの狩り」を演奏。
続いて金管楽器。ホルン、トランペット、トロンボーン、テューバの順に紹介。最後には、トランペット2、ホルン、トロンボーン、テューバの金管五重奏で、スザート作曲/ルネサンス舞曲集からを演奏。明るい響きがすばらしい。
続いて打楽器。うちわ太鼓やキン?(鈴)と言った珍しい楽器も紹介。ティンパニについて、広上は「ティンパニにはかなわない。ほとんど指揮者」とコメントしました。

最後は全楽器で外山雄三作曲/管弦楽のためのラプソディーを演奏。広上が「実は昨日粗相した。練習に遅刻してしまった。金沢で飲みすぎた。私の先生の外山先生は指揮者として一番大事なことは、遅刻しないことと言っていた」と話しました。石川県立音楽堂で行なわれた「第2回 井上道義による指揮者講習会」で講師を務めたので、疲れが出たのでしょうか。
演奏は、打楽器が大活躍。最後の拍子木の連打はぞくっと来ました。弦楽器はもう少し鳴ってほしいです。

休憩後は、グリンカ作曲/歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲でスタート。ヴァイオリンがよく揃っています。

続いて、楽器紹介の後半戦で、弦楽器の紹介。ヴァイオリンは「家が建つ」ほどの値段。チェロは飛行機で移動するときは、子供料金を払って座席に乗せる。コントラバスは、ケースに入れて荷物扱いにするとのこと。ちなみに、広上淳一の指揮棒は900円とのこと。
弦楽合奏で、グリーグ作曲/組曲「ホルベアの時代から」から第4曲「アリア」を演奏。この曲はつい先月の京都市交響楽団第537回定期演奏会でアンコールとして演奏しました。
最後にハープの紹介。奏者は、松村衣里さんと松村多喜代さん。姉妹です。7本のペダルと47本の弦で演奏する。海外で演奏するときは、飛行機で運ばないで現地の楽器を使うとのこと。

最後は、ラヴェル作曲/ボレロ。小太鼓の福山直子さんが、第2ヴァイオリンとチェロの間に移動。ロザンは「出世しましたね」と話して笑わせました。演奏は、管楽器のソロが不調。京都市交響楽団の「ボレロ」は、京都市交響楽団第525回定期演奏会でジョン・アクセルロッドの指揮で聴きましたが、それに比べると完成度が落ちました。291小節から加わる2台目の小太鼓は、最後列のやや左側で演奏しました。広上淳一の指揮は、序盤はメロディーを担当している楽器に向かって腕を広げて歌わせましたが、次第に腕を小刻みに動かして激しい指揮となりました。
演奏後は、広上が「ボレロは今日紹介した楽器が順番にメロディーを演奏する曲だった」と種明かしをしました。広上の演奏会にしては珍しく、アンコールなしでお開きとなりました。16:30に終演。休憩を含めて、2時間半。子供向けなので短いかと思っていましたが、意外にも長くて内容も充実した演奏会でした。大人でもじゅうぶん楽しめるシリーズでしょう。

(2010.9.13記)


ロビーイベント「コントラバス大解剖!」



京都市交響楽団第537回定期演奏会 京都市交響楽団練習風景公開