円山公園音楽堂
広上淳一指揮／京都市交響楽団
秋田美幸（司会）
バーンスタイン／「キャンディード」序曲
アンダーソン／舞踏会の美女
アンダーソン／シンコペーティッド・クロック
アンダーソン／タイプライター
アンダーソン／トランペット吹きの休日
ハイマン／ポップスホウダウン
Ｊ．シュトラウス�鏡ぁ身�しく青きドナウ
Ｊ．シュトラウス�鏡ぁ人詭弔氾展�
ヴェルディ／「アイーダ」凱旋行進曲
ワーグナー／「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
座席：全席自由
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２０１０年６月６日（日）15:00開演 円山公園音楽堂
広上淳一指揮／京都市交響楽団 バーンスタイン／「キャンディード」序曲 座席：全席自由 |
京都市交響楽団が円山公園音楽堂で野外コンサートを開催しました。入場無料。しかもわざわざ常任指揮者広上淳一が指揮するという豪華イベントです。京都市交響楽団にとって円山公園野外音楽堂は第１回定期演奏会（1956.6.19）が行なわれた記念すべき場所です。4500人もの聴衆が集まったとのこと。すごい。
私が小学生の頃、夏の夜に円山公園音楽堂で開催された土曜コンサートを聴きに行っていましたが、それ以降は京都市交響楽団は野外コンサートを久しく行なっていないようです。円山公園音楽堂は京都市が管理する施設なので、有効に活用したいということでしょう。コンサートホールを飛び出して、新たなファンを獲得しようという狙いもあるでしょう。大阪フィルが数年前から行なっている「大阪フィルハーモニー交響楽団星空コンサート」に対抗したいのかもしれません。
雨天中止でしたが、無事に晴れました。円山公園音楽堂は、京阪の祇園四条駅から徒歩15分。八坂神社の境内を抜けます。13:30頃に着きました。オーケストラはリハーサル中で、場外からでも音が聴こえました。
14:00に開場。全席自由です。せっかくなので前へ。前から５列目というかなり前の列に座りました。開場しても、団員は出たり入ったりしていました。団員は黒い半袖Ｔシャツを着ていました。緑色で楽器のイラストが描かれています。この日が初お披露目となったようです。
円山公園音楽堂の座席数は3010席ですが、2500人くらいは来ていたのではないでしょうか（オフィシャルブログでは「1300人以上」と書かれていました）。ホールの演奏会では入場できない子供連れも多数来られていました。場内は飲食可でした。
15:00に開演。団員が入場。オーケストラは中編成ですが、ステージにぎっしりです。コンサートマスターの泉原隆志が立ち上がってチューニング。広上淳一が登場。メンバーと同じデザインのＴシャツですが、オレンジ色の生地に黄色でプリントされていました。
プログラム１曲目は、バーンスタイン作曲／「キャンディード」序曲。ステージの近くで聴きましたが、あまり響かない環境にもかかわらず意外に表情が濃い。慣れない環境ですがあまり演奏の不利になっていないようです。広上の「うん」といううなり声がいつもより多くて大きく聴こえました。「大阪フィルハーモニー交響楽団星空コンサート」ではスピーカーで音を大きくして聴かせていましたが、この演奏会はマイクやスピーカーは使わず、生の音をそのまま聴かせているところに好感が持てました。
司会の秋田美幸が登場。α-STATIONでＤＪを務めているとのこと。このイベントの後援がＦＭ京都だったので選出されたのでしょう。広上と同じオレンジ色のＴシャツを着ていました。秋田が広上に司会の台本を渡そうとしましたが、広上は「いらないです」と言って受け取りませんでした。「京都市交響楽団スプリング・コンサート」と同じように、自由奔放なトークがスタート。２人でマイクで対談。まず、Ｔシャツについて、広上が「おしゃれでしょ」と自慢。「同じ服を着て団結心を高めよう」と意図を説明しました。背面には「今日、京響？」と書かれているようです。「オレンジは好きな色」とのこと。円山公園音楽堂については、「第１回定期演奏会が行なわれた思い出の場所に戻ってきた」「雨男なので心配していたが、晴れてよかった」と話しました。
秋山があまりクラシック音楽に詳しくないということで、広上が自分で曲紹介もこなします。アンダーソンについて「ボストンポップスオーケストラの音楽監督」と紹介。「大好きな作曲家」と話しました。プログラム２曲目は、アンダーソン作曲／舞踏会の美女。３拍子の曲です。日曜日の午後にふさわしい雰囲気の選曲です。
プログラム３曲目は、アンダーソン作曲／シンコペーティッド・クロック。ウッドブロックが大活躍。秋田曰く「高島屋のＢＧＭで流れている」とのこと。
プログラム４曲目は、アンダーソン作曲／タイプライター。指揮台の横にタイプライターが運び込まれました。秋田がタイプライターの練習は必要なのかと聞いたところ、奏者（福山直子）が腕で×印。広上が「練習しないでうまくいく」と確認しました。タイプライターは立って演奏。両手でタイプライターの「キー」を叩きますが、「マージンベル」（チーン）と「キャリッジリターン」（ザッ）は、後方の打楽器奏者がそれぞれ演奏します。途中でキャリッジリターンのタイミングが遅れたので、広上がガクッと指揮台にもたれかかりそうになりましたが、わざとタイミングを外すようにスコアに書かれているとのこと。演出上手ですね。
プログラム５曲目は、アンダーソン作曲／トランペット吹きの休日。トランペット奏者３人が指揮者の後ろに並んで立奏。広上は「休日というのはひねったニュアンスで、実際にはトランペット奏者は超絶技巧で休むヒマがない」と話しました。
プログラム６曲目は、ハイマン作曲／ポップスホウダウン。広上は「アメリカの南部の特徴がよく出ている」「豚、馬、羊などの動物が出てくる」と紹介。確かに冒頭のヴァイオリンの連符は民族音楽を想起させます。中間部は聴いたことがあるメロディーでしたが、フォークダンスの定番「オクラホマミキサー」ですね。その後、打楽器が動物の鳴き声を次々と表現。豚の鳴き声がする笛、ピストル、ボクシングで使われるファイトゴングなど、珍しい楽器ばかり。圧巻は、一斗缶。打楽器奏者がステージ前まで出てきて両手で一斗缶を無造作に投げ下ろしました。大きな音にびっくり。あまりの大胆な楽器？の使い方に「今のはなんだったんだ」という反応で場内がザワザワしました。こんなに楽しい曲があったとは知りませんでした。オーケストラも笑いながら演奏しました。秋田がニコニコ笑いながら指揮している理由を聞いたところ、広上は「指揮者は音が出せないので、オーケストラに対して負い目がある。空気を振っているだけで邪魔。笑ってないと失礼」と話しました。オーケストラに敬意を持って接していますね。
プログラム７曲目は、Ｊ．シュトラウス�鏡ず邏福身�しく青きドナウに続いて、プログラム８曲目は、Ｊ．シュトラウス�鏡ず邏福人詭弔氾展�。ティンパニがかなり大きめ。
プログラム９曲目は、ヴェルディ作曲／「アイーダ」凱旋行進曲。広上は「今年はサッカーワールドカップの年で、この曲はサッカーの応援として使われる。士気が高まる曲。私はサッカーよりも野球が好きですが」と話しました。
秋田が「今日の演奏会はいかがでしたか」と聞くと、広上は「今日は無料ということで。タダほど怖いものはない。このような機会は毎年やっていきたい」「今日はデパ地下の試食です。なかなかおいしいと感じられた方は、月に１回レストラン（＝定期演奏会）で召し上がって欲しい。ＣＤは撮り直ししているのでハプニングがない。完璧だがいつ聴いても同じ。食事に例えるとカップヌードル。いつ食べても同じ味。レストランはその日によって味付けが違う」と話し、生演奏のよさと定期演奏会をＰＲ。広上淳一は音楽をレストランに例えることが多いですね。
プログラム１０曲目は、ワーグナー作曲／「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。「マイスタージンガーとは親方歌手という意味。長いのでほとんど寝てますね。ワーグナーは99％は悲劇だが、この作品だけはハッピーエンド」と話しました。
演奏終了後に、広上は「日本の教育が悪かった。音楽大学に入ってくる学生を見て感じるが、クラシック音楽は気軽に聴いていただきたい」と話し、「中学生の頃は桜田淳子の追っかけをしていた」と暴露しました。アンコールは、宮川泰作曲／宇宙戦艦ヤマト。秋田が「キムタクが好き」ということで、木村拓哉が出演する「宇宙戦艦ヤマト」の実写版映画が冬に公開されるので選曲されたようです。格調高い演奏でした。
16:35に終演。当初は16:00頃終演の予定だったので、30分以上オーバーしました。トークが盛り上がったからでしょう。終演後のアナウンスで、団員が着ていた「京響オリジナルＴシャツ」が来週から京都コンサートホールで限定発売されることが紹介されました。京都市交響楽団のホームページによると、デザインはこの日着ていた「デザイン� 廖淵屮薀奪�・オレンジ）に加えて、別デザインの「デザイン�◆廖淵屮薀奪�・ブルー）の２種類。値段は。サイズによって1300円〜2000円と良心的な価格設定です。１枚買おうかな。
広上淳一が「試食品」と話した無料の野外コンサートでしたが、京響の魅力を堪能できました。プログラムもよく、普段の演奏会では聴けないような珍しい打楽器も登場しました。メンバーも楽しんで演奏していました。無料だからと言って手を抜いて演奏している感じはまったくなく、かなりいいレベルです。野外という不利な条件を感じさせない演奏でした。野外なので暑さが心配されましたが、終盤には涼しい風が吹いてきました。広上は毎年続けたいと話しましたが、気楽に聴ける演奏会として来年以降もぜひ開催して欲しいです。「大阪フィルハーモニー交響楽団星空コンサート」の9300人には行かないまでも、より多くの人に京響の演奏を聴いていただきたいと思います。
(2010.6.9記)
