第4回京都市ジュニアオーケストラコンサート


   
      
2009年2月1日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市ジュニアオーケストラ

シャブリエ/狂詩曲「スペイン」
グノー/歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽
ベートーヴェン/交響曲第7番

座席:全席自由


昨年10月の京都市交響楽団練習風景見学(「ミュージック・フリー」リハーサル)ですばらしい演奏を披露した京都市ジュニアオーケストラをまた聴くことができました。2005年の設立以来、定期演奏会に相当する「コンサート」を年に1回開催していて、これまで大友直人、山下一史、井上道義などが指揮しました。第4回の今年は、京都市交響楽団常任指揮者で、ジュニアオーケストラのスーパーヴァイザーに就任した広上淳一が指揮します。京都新聞の記事によると、広上は本番1週間前の練習で初めてジュニアオーケストラを指揮したようです。「ミュージック・フリー」では選抜メンバーが出演していましたが、今回のコンサートは全員が出演しました。
チケットは当日券を13:00に購入しました。開場は13:30ですがホール入口前にはすでに行列ができていました。全席自由なので座席は早い者勝ちです。1階席の中央に座りました。客の入りは8割ほど。よく入りました。
プログラムに出演者が記載されていました。総勢97名で、11歳から23歳までで構成されています。男女比は女子のほうが多いです。パート別ではヴァイオリンが人気で最多の24名。逆にヴィオラはたったの5名。京都市交響楽団の団員がエキストラとして入っていましたがそれでも少ない。楽器編成はかなりアンバランスなオーケストラです。

プログラム1曲目は、シャブリエ作曲/狂詩曲「スペイン」。メンバーに続いてコンサート・ミストレスが登場して、チューニング。続いて、広上淳一が登場。広上は身長が低いですが、コンサート・ミストレスよりも背が低かったです。プロのオーケストラを指揮するときよりも背の低さが目立ちました。演奏は細部がもう少しそろえばいいですが、作品が持つ華やかな雰囲気はじゅうぶん出ていました。

メンバー入れ替えの後、プログラム2曲目は、グノー作曲/歌劇「ファウスト」よりバレエ音楽」。個人プレイにならず、オーケストラとしてよくまとまっています。譜面に書かれた音符を弾くだけではなく、表情もしっかりついています。第3曲「ヌビアの奴隷の踊り」のピッコロとフルートのハーモニーも秀逸。最後の「フリネの踊り」も速いテンポで手加減なしに一気に演奏しました。広上の指揮はダンスを踊っているようで、見ていて笑けてしまいます。広上が得意とする曲のようで、ノッていました。

休憩後のプログラム3曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第7番。上述した楽器編成の悪さが演奏に現れました。ヴァイオリンが強力すぎる。木管楽器、トランペット、ホルンはもっとがんばってほしいです。また、全体的にもう少し客席に音が飛んでくるとなおよいでしょう。広上は若いエネルギーに喚起されたのか、指揮台を左右に動きまくり。また「うっ」といううなり声が京都市交響楽団を指揮するときよりも大きめでした。反復記号をすべてスコアどおり繰り返していたためか、聴いていて少し飽きました。第1楽章は256〜257小節と260〜261小節のティンパニに、スコアにないクレシェンド・デクレシェンドをつけました。第4楽章はヴァイオリンのうまさが際立ちました。ホルンが聴こえなくて残念。

演奏終了後にカーテンコールが何回か行なわれた後、広上淳一がマイクで挨拶。「年寄りは私だけでございました。ジュニアオーケストラの名声はかねてから聞いておりましたが、こんなにうまいオーケストラだとは。エネルギーや生きる活力を与えてくれます。私はスコットランドやオランダのユースオーケストラを指揮したことがあり、東京でも音大の教員をやっています。ジュニアオーケストラは小学校3年生から大学生まで幅広い若い世代で構成されていますが、全員が音楽家になるとは限らない、普通の勉強をしている人もいます。それで、これだけのクオリティを持っているのは誇っていい。機会があれば、東京に連れて行きたい」と話しました。客席からは大きな拍手が送られました。また、「合奏指揮」として指導してきた京都市立芸術大学の学生2名が紹介されました。粟辻聡は「日に日に集中力が増して、音大生顔負け」。秋山愛美も「ここまでうまくなるとは」と感嘆していました。広上は2名について「私の仕事を取ろうとしている人たちです」と言って笑わせました。
最後にアンコール。ブラームス作曲/ハンガリー舞曲第5番を、3人の指揮で振り分けました。粟辻→秋山→広上の順で指揮台に上がりました。ベートーヴェンで降り番だったメンバーもステージ後方に並んで立奏しました。

選抜メンバーで出演した京都市交響楽団練習風景見学(「ミュージック・フリー」リハーサル)に比べると、全員出演の今回の演奏は少し魅力が劣った気がしますが、それでもパート練習4日間、合奏7日間という短期間の練習でこれだけそろった演奏を聴かせるとは驚きです。2009年度の新入団員の募集が始まりました。次回の出演は、8月の「みんなのコンサート」、2010年1月の「第5回定期演奏会」です。ともに広上淳一が指揮することが決まっています。広上とジュニアオーケストラはいい組み合わせだと思うので、今後活躍の幅が広がることを期待しています。

(2009.2.8記)


芸術文化センター管弦楽団第21回定期演奏会 アムステルダム・バロック管弦楽団 結成30周年記念公演