読売日響第116回東京芸術劇場名曲シリーズ


   
2005年4月30日(土)18:00開演
東京芸術劇場大ホール

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮/読売日本交響楽団

ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番

座席:C席 3階 D列48番


スクロヴァチェフスキがショスタコーヴィチを指揮するというので迷わず聴きに行きました。ハレ管弦楽団との録音(ショスタコーヴィチ/交響曲第1番&第6番:ハレ管弦楽団自主制作盤 CDHLL7506)を聴いて以来、スクロヴァチェフスキが指揮するショスタコーヴィチに興味を持っていました。スクロヴァチェフスキは読売日本交響楽団に定期的に客演しています。読売日本交響楽団の演奏を聴くのは今回が初めてです。

チケットは完売。さすがに人気の高さをうかがわせます。スクロヴァチェフスキがゆっくりと登場。譜面台なしで指揮しました。

プログラム1曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第6番「田園」。中編成での演奏。解像度が高い演奏で、なぜこの音符が書かれているのか、なぜこの旋律はこの楽器が演奏するのか、作曲家でもあるスクロヴァチェフスキが分析し解明していく姿勢が印象的でした。強奏でも勢いに任せて省略したりせず丁寧。常に交通整理がなされていました。個性的な解釈がいろいろ飛び出すかと思いましたが、意外に仕掛けが少なく、もっといろいろやってくれるかと思っただけに期待外れ。この作品は工夫の余地が少ない作品なのかもしれません。スクロヴァチェフスキのうなり声がたまに聴こえました。
読売日本交響楽団の演奏はいまひとつ。特にホルンは音を外すなど技術的な弱さが目立ちました。ヴァイオリンも縦線や音程が気になりました。ヴィオラやチェロの音型がホール音響のせいかぼやけ気味だったのも残念。木管楽器のソロはとても美しい音色を聴かせてくれました。第4楽章の「雷雨と嵐」では、金管が鳴りません。ティンパニにくらべて金管楽器の音量が小さすぎる。もっと鳴って欲しいです。全体的に表情の変化が乏しい演奏になってしまったのが残念。

休憩後のプログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第5番。大編成での演奏。前曲同様、見通しがよく、アーティキュレーションをはっきり聴かせました。全体的にホルンの音色が汚く異質で、弦楽器の音色と溶けこめません。強奏で興奮をそがれました。特に第1楽章247小節〜252小節の弦楽器とのユニゾンはもったいなかったです。ヴァイオリンは弱奏で音程の乱れがありましたが、強奏では厚みのある響きを聴かせました。あまり間を置かず第2楽章へ。ピッコロがアクセントを吹ききっていてシニカルな表情が表現されていました。クレシェンド・デクレシェンドをつけて、おどけた感じを出すのに成功していました。第3楽章は、弦楽器が透き通った音色を聴かせました。ソヴィエトの民衆の苦しさを表現したようなショスタコーヴィチの音楽を、スクロヴァチェフスキの母国ポーランドの戦時の状況を重ね合わせたかのように聴こえました。フルートの倉田優がすばらしい演奏。休みなしで第4楽章に突入。金管楽器が高らかに鳴り響きました。このために今までパワーを蓄えていたように感じました。スクロヴァチェフスキは、8小節4拍目と54小節4拍目のアクセント付きの四分音符をテヌート気味に延ばしました。スクロヴァチェフスキの本領発揮といったところです。その後の弦楽器の細かい音符が連続する部分も一点一画をおろそかにせず正確に演奏していました。124小節以降はさっと流しました。247小節からはゆっくりとしたテンポで弱奏からはじめました。第4楽章の284小節はスコア通りの音で演奏。ラストまで遅いままのテンポを維持して演奏しました。

演奏終了後は、盛大な拍手が送られました。アンコールはありませんでした。

スタニスラフ・スクロヴァチェフスキの演奏を聴いたのは、昨年の第17回NTT西日本N響コンサート以来でしたが、舞台袖から指揮台までの足取りが弱くなったように感じました。昨年はもっと元気な姿を見せてくれただけに少しショックでした。また、東京芸術劇場大ホールは残響が多いホールなので、音符単位で厳格に音楽を作り上げるスクロヴァチェフスキの音楽性からすると、少し響きすぎるように感じました。もっとも、3階席でそう感じたので、席が違えば聴こえ方が違った可能性もありますが。
スクロヴァチェフスキは、今年12月にも来日し、読売日本交響楽団を指揮して、ベートーヴェンの第九を演奏します。CDでは、ザールブリュッケン放送交響楽団を指揮してエームス・クラシックスからベートーヴェン交響曲全集をリリースする予定もあるようなので、目が離せません。

読売日本交響楽団は木管楽器がとても充実しています。ただ、ホルンはいただけません。

この演奏会は、マイクが設置されていたので、CD化されるかもしれません。演奏ミスなどが修正されればCDコレクションに加えてみたいと思います。

※演奏会当日に多大なご尽力をいただきました東京芸術劇場チケットサービス、読売日本交響楽団の職員の方に心より感謝を申し上げます。

(2005.5.5記)




ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭2005「ベートーヴェンと仲間たち」?114 京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター平成17年度第1回公開講座 「祇園囃子の世界」