ミューザ川崎シンフォニーホール
飯森範親指揮／東京交響楽団
滝千春（ヴァイオリン）
バーンスタイン／「キャンディード」序曲
シベリウス／ヴァイオリン協奏曲
レスピーギ／交響詩「ローマの松」
レスピーギ／交響詩「ローマの祭」
座席：Ｓ席 ３階Ｃ ２列３８番
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２００６年５月５日（祝・金）14:00開演 ミューザ川崎シンフォニーホール 飯森範親指揮／東京交響楽団 バーンスタイン／「キャンディード」序曲 座席：Ｓ席 ３階Ｃ ２列３８番 |
いずみシンフォニエッタ大阪リハーサル見学会で、緻密なリハーサルを披露した飯森範親が、正指揮者を務める東京交響楽団を指揮しての演奏会です。
ミューザ川崎シンフォニーホールで演奏会を聴くのは、東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第１回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」以来でした。ストリートオルガンの演奏にのせて開場。ホールに入って改めて気づきましたが、このホールは座席が傾斜して配置されています。変なホールですね。客の入りは９割程度。
プログラム１曲目は、バーンスタイン作曲／「キャンディード」序曲。１曲目から気合いの入った演奏。冒頭のトゥッティからすっきり整理された演奏にびっくり。整理されている割には、奏者の演奏はいきいきしていて、指揮者にコントロールされたような堅苦しさを感じません。飯森が各楽器の役割を明確に指示しているからでしょう。不純物がなく、音色の透明度が高い。音程も狂いがなく、技術的にも文句なし。打楽器も必要以上にうるさくならないで、すっきり聴かせます。情報量が多い演奏で、Ｅ♭クラリネットやホルンの刻みなどいろいろな旋律が聴こえて、新発見が多くありました。
プログラム２曲目は、シベリウス作曲／ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は滝千春。グレーのドレスで登場。1987年生まれの若い奏者ですが、期待以上の堂々とした演奏で、第１楽章冒頭からゾクゾクしました。しっかりしたボウイングで、女性が弾いているとは思えません。音色も太く、丁寧に響かせています。ミスも少なく、演奏技術もすばらしい。今まで３人の奏者（堀米ゆず子（日本フィルハーモニー交響楽団第189回横浜定期演奏会「沼尻竜典正指揮者就任披露演奏会」）、庄司紗矢香（ロンドン交響楽団来日公演）、五嶋みどり（バイエルン放送交響楽団来日公演））でこの作品を聴きましたが、今回の滝千春の演奏が最もいい出来でした。難曲ですが、実演でもこれだけの完成度で演奏できることを証明してくれました。滝千春の今後の活動は要チェックです。オーケストラも表情豊かな伴奏でした。
休憩後のプログラム３曲目は、レスピーギ作曲／交響詩「ローマの松」。第１曲「ボルゲーゼ荘の松」から、音程が正確で色彩感がすばらしい。水の流れをイメージさせるほどみずみずしい演奏で、清潔な楽しさが感じられました。第２楽章「カタコンブ付近の松」の舞台裏のトランペット独奏は、ステージ上手袖で演奏。強奏でパイプオルガンが実に効果的に響きました。ＣＤではここまではっきり聴き取れません。第３楽章「ジャニコロの松」のナイチンゲールの鳴き声は、録音を再生していたようです。第４楽章「アッピア街道の松」で、バンダが登場。パイプオルガンをはさむように、３階席左（３−Ｌ４扉付近）にトランペット奏者が４名、３階席右（３−Ｒ５扉付近）にトロンボーン奏者が３名(?)登場。熱演でしたが、バンダには照明が当たらなかったのが残念。ラストに向けて大きく盛り上がりましたが、ちょっとティンパニが大きすぎ。
プログラム最後の４曲目は、レスピーギ作曲／交響詩「ローマの祭」。ブッチーナ（Buccine）パートがステージ最後列に３名登場。立ったまま演奏しました。強奏が目立つ作品ですが、飯森の演奏姿勢は変わりません。スキのない演奏を聴かせました。前曲同様きらびやかな演奏で、弦楽器、木管楽器（特にフルート）、打楽器それぞれの色彩感がすばらしい。ラヴェルのような音響が何度か現れたので、レスピーギはラヴェルに師事したことがあるのではないかと感じました。第１曲「チルチェンセス」は、パイプオルガンが効果的。第３曲「十月祭」では、弦楽器が多彩な音色を聴かせました。マンドリンは、指揮者の正面（第２ヴァイオリンとチェロの間）に配置されていました。第４楽章「主顕祭」は、もう少しトランペットの音量が大きければさらによかったでしょう。
演奏終了後の拍手に応えて、飯森範親がマイクを持って挨拶。日中友好のため、来週から「北京で会いましょうフェスティバル」で公演を行なうとのこと。その北京公演で演奏する中国の作品を今から演奏するということで、作曲者名や曲名を紹介しようとしましたが、「漢字が読めない」「読めません」と言って、聴衆を笑わせました。終演後のロビーの掲示によると、鄭路・馬洪業作曲／北京喜訊到辺寨（北京からの良い知らせ）。中華料理の番組のＢＧＭとして使われそうな分かりやすい曲で、音楽にのせて中国人女性が歌いだしそうでした。
飯森範親の指揮は、強奏では頭や腕を上下に動かすなど激しく動きます。弱奏では、ほとんど止まったように静止します。魅せる指揮でした。飯森は音楽を整理して聴かせるのに長けているようなので、複雑な作品にも挑戦して欲しいです。欲を言えば、強奏に比べると弱奏が少し一本調子に聴こえることがあるので、さらに研究して欲しいです。
東京交響楽団の演奏は、響きが軽いのが印象に残りました。ホールの音響がいいので、大きな音量を無理に出す必要がないからでしょう。音量よりも鮮やかな音色を磨き続けているようです。
ミューザ川崎シンフォニーホールの音響は、やはりすばらしいですね。響き方が自然で、演奏が美しくクリアーに響きます。木管楽器が背景のように、弦楽器に乗っかるという感じです。ステージと客席との距離が３階席でも近いので、視覚的にもすばらしい。私の中では、日本で一番いいホールだと思っています。交通の便もいいので、まだ行かれてことがない方にはぜひおすすめです。
(2006.5.14記)
