杉並公会堂開館記念コンサート


   
      
2006年6月3日(土)18:30開演
杉並公会堂大ホール

小林研一郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団
木嶋真優(ヴァイオリン)

芥川也寸志/弦楽のための3楽章
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」

座席:A席 1階 17列12番


6月1日に杉並公会堂が開館しました。1957年に開館した杉並公会堂を2003年から3年間かけてリニューアルしました。杉並区と友好提携を結んでいる日本フィルハーモニー交響楽団の本拠地となります。創立50周年を迎えた日本フィルハーモニー交響楽団にとっては、念願のフランチャイズホールが実現しました。
日本フィルハーモニー交響楽団が、新しい杉並公会堂のこけら落としとなる開館記念コンサートを開催しました。チケットは、A席4,000円と安め。杉並公会堂に電話して確保。予約番号を伝えられて、最寄りのチケットぴあで受け取るようにとのこと。少し変わったシステムです。小林研一郎と日本フィルの演奏会は何度か聴きに行っていますが、2004年3月の日本フィルハーモニー交響楽団音楽監督就任以降は初めて聴く演奏会でした。チケットは前売り段階で全席完売でした。

杉並公会堂の最寄り駅は、JR中央線の荻窪駅。新宿駅から快速電車で8分。意外に早く着きました。東京地下鉄丸ノ内線も通っているので、交通の便は悪くないです。荻窪駅北口を出ると、すぐそこはバス乗り場。道も狭く、ごちゃごちゃとした場所です。ちょっとびっくり。ホールの場所が分からなかったので、荻窪駅北口交番に聞くと、「2つめの歩道橋を左」と教えてくれました。青梅街道を北に歩いて、2つめの歩道橋の左を曲がると、突然ホールが現れました。1階のハーモニープラザに立ち寄ったところ、18時の開場にあわせてオープニングファンファーレが演奏されるとのこと。2階の大ホールロビーで開場を待ちました。
18時に日本フィルハーモニー交響楽団の金管奏者と打楽器奏者によるオープニングファンファーレが演奏されました(演奏曲は不明、けっこう長い曲でした)。大ホールの中へ。座席数は1,190席なので、コンサートホールにしてはサイズが少し小さめ。また、パイプオルガンが設置されていないので、演奏曲に大きな制約が出るでしょう。ステージも奥行きは狭くて、幅が広いという変わった形です。ホールの外の通路も狭く、トイレやドリンクコーナー、3階の喫煙所は大混雑でした。3階のホワイエで日本フィルスタッフによる「オーケストラ・ガイド」が開催されていましたが、人が多くて近づけませんでした。

いよいよ開演。今回の演奏会のプログラムは、日本フィルハーモニー交響楽団第5回ヨーロッパ公演(5月25日〜28日)で、5月27日にプラハのスメタナ・ホールで演奏されたプログラムと同じでした。プログラム1曲目は、芥川也寸志作曲/弦楽のための3楽章。弦楽器のみの作品で、弦楽器奏者がフル編成で登場し、続いて小林研一郎が小走りで登場。小林研一郎は全曲譜面台なしで指揮しました。第1楽章では、速いパッセージの細かな音符で縦線のズレがありました。第3楽章の変拍子でも同様で、中低音が遅れて聴こえるように感じました。日本フィルの弦ならもっと上手に演奏できると思いますが、ちょっと意外な出来。前述したようにステージが横に広く、ヴァイオリンとコントラバスでは距離があるので合わせにくいのかも知れません。第2楽章では、ヴィオラやコントラバスで、左手で楽器を叩く奏法が見られました。小林研一郎は腰をくねらせて指揮。

プログラム2曲目は、メンデルスゾーン作曲/ヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は、1986年生まれの木嶋真優。木嶋のドレスにびっくり。黒のドレスのすそに二重のフリルがついていて、ピンク色のラインが入っています。また、ドレスにはピンクの花びらの模様がありました。さらに、フリルにラメが入っていてキラキラ光ります。まるで魔女のようなドレスでした。こんなに装飾の多いドレスは珍しいでしょう。ドレスに気が行ってしまって、演奏を集中して聴けませんでした。
木嶋は指揮台にかなり位置で演奏していました。小林研一郎に寄り添っているみたいで、小林研一郎に演奏を聴かせているように見えました。木嶋の演奏は、線が細く、音量もあまり大きくないので、もう少し自己主張を見せて欲しいです。ただ、自分のペースで自信を持って演奏していました。マナーも落ち着いていて、ソリストとしてのプライドを感じさせました。これからが楽しみなヴァイオリニストでしょう。

休憩後のプログラム3曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ音楽「春の祭典」。破綻寸前の演奏を予想していましたが、技術面では問題を感じさせませんでした。驚いたのは、金管楽器がよく鳴ったこと。今までの日本フィルにくらべて、金管セクションは大幅にパワーアップしています。予想外の進化に本当にびっくり。小林とオーケストラとの一体感もすばらしく、集中力を切らすことなく演奏しました。最後の「神聖な舞踏(選ばれた処女)」では、これから殺人でも犯すような鬼気迫る演奏でした。小林研一郎も頭を激しく動かしたり、両手と左足を挙げたりして一心不乱に指揮。オーケストラはこの小林の指揮でよく揃いますね。ある意味すごいです。また、いつものようにうなり声を上げていました。これを嫌う評論家もいるようですが、一生懸命指揮していることが伝わってくるので、私は評価したいと思います。ただ、座席とステージとの距離が近かったこともありますが、小林研一郎は何を聴かせたいのかがよく分かりませんでした。また、こういう大規模作品を演奏するにはこのホールはキャパシティが小さいですね。ちょっと音量過多で直接的に聴こえるのが残念。

花束贈呈の後、小林研一郎が挨拶。「ヨーロッパ公演は大成功でした」と報告。「スタンディングオベーションをいただきました。今日は結構でございます」と話し、客席の笑いを誘いました。「ヨーロッパ公演の成功は杉並のみなさんのおかげです」と話し、アンコール。「「プラハの春」音楽祭でアンコールで演奏しました」ということで、ドヴォルザーク作曲/スラヴ舞曲第10番を演奏。
「お別れに」ということでアンコール2曲目は、「コバケンの作品をやることになってしまいました」ということで、小林研一郎作曲/パッサカリアより「夏」を演奏。打楽器奏者がはっぴを着て演奏。打楽器の連打が続き、最後はトランペット、トロンボーン、テューバが立奏し、熱狂的な盛り上がり。全員で一礼し、終了しました。

終演後に、1階ハーモニープラザで「ミニ交流会」が開催されました。100人ほどが集まりました。木嶋真優と日本フィルのトロンボーン奏者2名が参加。木嶋は、1日何時間練習しますかとの質問に対して、「やるときはやる。やらないときはやらない。」と話しました。また、「包丁が怖いので料理はやらない」「日本食懐石が好き」とのこと。「今日は気持ちよく演奏できました」と話しました。木嶋の対応は大人びていました。日本フィルの団員からは、今回のヨーロッパ公演は短かったこと(長いほうがいいらしい)、「春の祭典」の演奏は緊張するという話や、旧杉並公会堂の思い出(救急車のサイレンがホールに聞こえた)を話し、新しいホールの音響を絶賛していました。オーケストラの団員とは思えないほど話がうまく楽しめました。日本フィルの定期演奏会などでも「ミニ交流会」を開催しているので、次回以降も参加しようと思います。

杉並公会堂ですが、前述したようにステージの形が変わっている(横に長い)ので、オーケストラの楽器の配置が一般的な配置と異なります。意外な場所から意外な楽器が聴こえてくるので、慣れるまでに時間がかかるでしょう。座席数もホールの容量も小さいので、1階席よりも2階席のほうが音響としてはいいように感じました。ただ、パイプオルガンが設置されていないので、演奏される曲に制限が出てきます。大規模作品を聴くのにはあまりおすすめできません。
日本フィルハーモニー交響楽団は、3月からリハーサルで使用しているとのことです。現在のところ杉並公会堂で定期演奏会を開く予定はないようです。在京のオーケストラでホールとフランチャイズ契約を結んでいるのは、新日本フィルハーモニー管弦楽団とすみだトリフォニーホール、東京フィルハーモニー交響楽団とBunkamuraオーチャードホール、東京交響楽団とミューザ川崎シンフォニーホールなどの例がありますが、いずれも本拠地で定期演奏会を開催しています。杉並公会堂でどういう演奏会が開催されるのか注目したいです。

(2006.6.11記)


アプローチ広場 ポスター 1階エントランス 1階エントランスホールのディスプレイ オープニングファンファーレ オープニングファンファーレを演奏する日本フィル ミニ交流会(ハーモニープラザ) ミニ交流会でインタビューに答える木嶋真優 上萩一丁目交差点から望む



N響オーチャード定期第39回 京都大学交響楽団第179回定期演奏会