早稲田大学交響楽団国内ツアー2026大阪公演


  2026年3月7日(土)14:00開演
ザ・シンフォニーホール

寺岡清高指揮/早稲田大学交響楽団

リスト/交響詩「前奏曲」
ドヴォルザーク/交響詩「英雄の歌」
R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」

座席:S席 2階AA列24番


早稲田大学交響楽団(愛称:ワセオケ)を初めて聴きました。1913(大正2)年に創立されて、早稲田大学の学部生のみで構成される早稲田大学公認のオーケストラです。2023年に楽団創立110周年を迎えました。これまでに、モーツァルト「交響曲第35番「ハフナー」」やショスタコーヴィチ「交響曲第13番「バービィ・ヤール」」の日本初演や、マーラー「交響曲第8番「千人の交響曲」」やメシアン「トゥーランガリラ交響曲」のアマチュア世界初演を行ないました。
名誉顧問に山岡重信(2022年没)、名誉指揮者に大友直人、高関健、山下一史が名を連ねています。過去には、小澤征爾、岩城宏之、ズデニェク・コシュラーの指揮で演奏したことがあり、ヘルベルト・フォン・カラヤンやサイモン・ラトルがリハーサルを指導したこともあります。なお、2000年から永久名誉顧問を務めていた田中雅彦は、海外演奏旅行の金銭問題が原因で2018年7月に辞任し、パンフレットからもホームページからも記載がなくなり、2024年に亡くなりました。
約3年に1度海外公演を行なっていて、これまでに16か国70都市以上を訪問したとのこと。2024年には約6年ぶりとなる第16回海外公演である「ヨーロッパツアー2024」では、ベルリン・フィルハーモニーやウィーン楽友協会を含むドイツとオーストリアの9都市で演奏しました。海外公演のライブ録音のCD化もされています。

今回の「国内演奏ツアー2026」は、大阪公演(=本公演)と、翌日の福井公演(福井県立音楽堂ハーモニーホールふくい大ホール)で、国内ツアーを行なうのは意外にも42年ぶりとのこと。それだけこれまでは海外公演が活動の主軸になっていました。大阪公演は、約100年ぶり(!)の大阪公演となる「創立110周年記念大阪特別公演」(2023.3.11 ザ・シンフォニーホール)以来3年ぶりです。なお、本公演前日の3月6日(金)には、国内ツアー2026特別企画として「早稲田大学交響楽団 音の輪プロジェクト」と題する演奏会が、早稲田大学大阪高等学校(=早稲田大学の系属校)で行なわれました。また、本公演の約2週間後には、第218回定期演奏会(2026.3.16 サントリーホール大ホール)が同一のプログラムで開催されました(チケットは完売)。

指揮の寺岡清高は、早稲田大学第一文学部の卒業で、早稲田大学交響楽団のミュージック・アドヴァイザーを務めています。プログラムのメンバー表の一番上に名前があるので、常任指揮者のような役割でしょうか。第8回 中学・高校吹奏楽部 公開レッスンコンサート 指揮・指導:寺岡清高で聴きました。

チケットは、Ticketta!(チケッタ!)から申し込み。座席選択が可能でしたが、S席は2500円のはずが、2000円(+購入手数料160円)で決済されました。QRコードをスキャンして入場。意外にも空席がかなり多く、4割程度の入りでした。開演5分前にバラバラとメンバーが入場して音出し。プログラムに掲載されたメンバーは全員で282名(ただし一部誤植があるので正確な人数は不明)で、ヴァイオリンだけで82名、フルートだけで18名、トロンボーンだけで15名、打楽器だけで15名もいます。どう見ても本公演にメンバー全員が出演していませんが、どうやってメンバーを選出しているんでしょうか。なお、ハープの2名は賛助でした。また、トレーナーが22人もいます。NHK交響楽団の奏者を中心に手厚い指導体制です。

全体の印象としては、学生オーケストラとしてはレベルがかなり高い。細かなキズはありますが、ここまで完成度が高い演奏ができる学生オーケストラは少なく、プロ級の完成度を求めたくなります。オーケストラのサウンドがまとまっているのは、常任指揮者的な立場で定期的に指導する寺岡がいるからでしょう。その点が京都大学交響楽団にはない魅力です。寺岡はメガネをかけて指揮しました。

プログラム1曲目は、リスト作曲/交響詩「前奏曲」京都大学交響楽団第218回定期演奏会でも聴きましたが、ヴァイオリンは抑揚をつけて演奏するのがうまい。131小節から金管楽器が短く演奏。160小節からはアクセントをつけてアグレッシブな演奏。打楽器が入る370小節(Tempo di marcia)からテンポを落として演奏。小太鼓を聴かせました。

メンバーを入れ替えて、プログラム2曲目は、ドヴォルザーク作曲/交響詩「英雄の歌」。初めて聴きましたが、ドヴォルザーク最晩年の作品です。マーラーが指揮するウィーンフィルが初演したというのが興味深い。クラリネット×2がメロディー。葬送行進曲のような雰囲気で、金管楽器が入って盛り上がります。後半はアメリカ音楽のような華やかな響きで、ドヴォルザークらしくないところがあります。

休憩後のプログラム3曲目は、R.シュトラウス作曲/交響詩「英雄の生涯」。2009年の第12回海外演奏旅行におけるベルリン・フィルハーモニーでのライヴ録音がCD化されています(指揮は田中雅彦)。ホルンはスコアでは8人ですが、11人もいました。京都市交響楽団第698回定期演奏会の名演がまだ頭から離れなくてどうしても比較してしまいましたが、個人の音が溶け込んでパートの音になっているのがいい。第1部「英雄」冒頭の主題がスラーで流れてしまうのが残念。もう少しかちっと聴きたいです。第2部「英雄の敵」は、木管楽器が見せ場を作ります。自信を持って演奏しているので、確信に満ちた響きです。第3部「英雄の伴侶」は、コンサート・ミストレスが長いヴァイオリンソロを速く弾こうとして、本番はうまくいかなかったところがありました。トランペット×3が下手に退場して、第4部「英雄の戦場」は、下手舞台裏からトランペット×3。やや速めのテンポで、434小節のダブルバーも間を空けずに突っ込みます。よく鳴って戦場にふさわしい表現です。管楽器と打楽器は京都大学交響楽団以上のクオリティー。638小節からホルン×11が神々しささえある響き。寺岡は強奏の音色が少し汚くなっても音圧を求めるようです。

演奏終了後に、寺岡がマイクであいさつ。「普通はこの曲の後にアンコールはしないが、せっかくの大阪公演なので早稲田にちなんだ作品を」と話し、 アンコールとして芥川也寸志作曲/早稲田の栄光を演奏。1952(昭和27)年に早稲田大学創立70周年記念事業として作曲された学生歌のようです。続けてもう1曲。東儀鉄笛作曲/早稲田大学校歌を演奏。早稲田大学講師だった東儀鉄笛(てってき)によって、1907(明治40)年の早稲田大学創立25周年に作曲されました。「わせだ わせだ…」の歌詞があまりにも有名です。のびのびと演奏。手旗を持ち込んで振っている卒業生もいました。16:00に終演。

今後も定期的に関西で公演して欲しいところですが、お客さんが意外に少なかったので、広報に工夫の余地があるでしょう。早稲田大学交響楽団のX(@wsotokyo)のフォロワーは約4600人ですが、早稲田大学国内ツアー2026のX(@wsojapan2026)のフォロワーは約100人と桁違いに少なく、本公演の開催があまり拡散されなかったのが原因でしょうか。なお、2027年2月から3月にかけてベルリンやウィーンなどで第16回海外公演(ヨーロッパツアー)が開催されます。

ザ・シンフォニーホール 本日のアンコール曲

(2026.4.11記)

 

同志社交響楽団第10回海外公演出発演奏会 京(みやこ)の音楽会Vol.4「「マンガ」の音楽会」