オムロン パイプオルガン コンサートシリーズVol.77「世界のオルガニスト「イヴ・レヒシュタイナー」」
|
|
|
2026年2月28日(土)14:00開演 京都コンサートホール大ホール
イヴ・レヒシュタイナー(パイプオルガン)、石川りほ(アシスタント)、黒澤雄太(カリヨン)
シューベルト(レヒシュタイナー編)/「死と乙女」より第2楽章 フランク/交響的大曲 ベルリオーズ(レヒシュタイナー編)/幻想交響曲
座席:全席指定 3階C1列26番
|
「幻想交響曲」全曲のオルガン編曲に興味があり、ひさびさに「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」を聴きました。「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」は1年に2公演が開催されています。
Vol.69「オルガニスト・エトワール「大平健介&長田真実」」以来で、4年ぶり2回目です。チケット代は、京響友の会会員価格は1350円です。
今回の出演は、イヴ・レヒシュタイナー。1969年スイス生まれで、リヨン国立高等音楽院古楽科教授やトゥールーズ・オルガン音楽祭芸術監督を務めています。京都コンサートホールのX(@KCH_Kyoto)によると、レヒシュタイナーは京都はもちろん、西日本で演奏するのも今回が初めてとのこと。2日前の26日からレジストレーションが始まりました。なお、レヒシュタイナーは、本公演の前に、ミューザ川崎シンフォニーホール(2026.2.21)と(秋田)アトリオン音楽ホール(2026.2.23)で公演がありました。また、本公演後には、盛岡市民文化ホール(2026.3.7)でも演奏しました。
ポディウム席の客入れはなく、お客さんの入りは8割程度。100名が招待されました。ステージ中央にはリモート式の演奏台がパイプオルガンの方向に向いて置かれていました。開演前に日本語と英語のナレーションで、「オムロン パイプオルガン コンサートシリーズ」は、1997年からオムロンが協賛して開催していることが紹介されました。舞台中央のリモート式の演奏台とパイプオルガンのみに照明を当てました。レヒシュタイナーはやや白髪混じりで細身です。メガネをかけています。
プログラム1曲目は、シューベルト作曲(レヒシュタイナー編)/「死と乙女」より第2楽章。原曲は弦楽四重奏曲です。楽譜は手書きではなく印刷されていました。楽譜は白く、派手にカラーマーカーで着色したりはしないようです。
弱音でスタート。宗教的でおごそかです。楽想のまとまりごとに音色を変えて、いろんな音色が登場して、主題が変奏されていきます。両手両足が意外に忙しい。最後も弱音で終了。パイプオルガンはこんな小さな音が出るんですね。
アシスタントの石川りほが譜めくりを担当しました。演奏台の左に置かれた丸イスに座って、静かに立ち上がって数歩歩いて譜めくりしました。石川はチェンバロ奏者で、レヒシュタイナーが教授を務めるリヨン国立高等音楽院に留学して、レヒシュタイナーに師事しました。現在はリヨンを拠点に活動しています。
退場せずに続けて、プログラム2曲目は、フランク作曲/交響的大曲。当初からオルガンのために作曲された作品です。1曲目と違って、ついに大きな音量で演奏。名前負けしない壮大な曲です。中間部は弱音でやさしいメロディー。柔らかい音色を選択して、バッハのような重厚さとは異なる演奏。レヒシュタイナーが4つあるうちの一番上の鍵盤で高い音を弾いているときに、アシスタントの石川が立ち上がって、レヒシュタイナーと同じイスの左に座って少し鍵盤を弾いて、また戻りました。一瞬fだけ四手連弾になりましたが、メロディーを追加したかったということでしょう。最後は両足のペダルも含めて全開で鳴らしました。
休憩後のプログラム3曲目は、ベルリオーズ作曲(レヒシュタイナー編)/幻想交響曲。楽譜がくたびれていましたが、それだけ何回も弾いたことがあるということでしょう。レヒシュタイナーは2013年にCDをリリースしました。また、2018年のライヴ録音がYouTubeチャンネル(@yvesrechsteiner3139)にアップされています。今回の来日公演では、秋田公演(2026.2.23)でも演奏しました。
レヒシュタイナーが一人で何役もこなしていて一人で演奏しているとは思えない演奏でした。言うまでもなくオーケストラで演奏される作品を、1人のオルガン奏者が両手両足で演奏できるパートは限られます。それでもリストのピアノ編曲よりは多くの旋律が盛り込まれています。ただし、打楽器がないと作品の印象が変わります。予想以上に重厚感は少なめで、この作品は打楽器の役割が重要だということに気がつきました。こうやってオルガンの編曲を聴くと、あまり意識してこなかったメロディーが聴こえてきて、オーケストラの原曲をより知ることができます。
第1楽章「夢、情熱」はテンポが速い。28小節からフルートとクラリネットで演奏される細かい連符を弾きました。50小節から第1ヴァイオリンの旋律を口笛のような音色で演奏しましたが、原曲にこんな旋律があったかと感じるほどでした。64小節からのティンパニのパートは演奏されないので、物足りなく感じました。111小節から金管楽器の音色に変えてよく鳴らしました。304小節からは迫力があります。410小節からは全開の演奏。
第2楽章「舞踏会」は、冒頭のハープの旋律がかわいらしい音色。再現部の176小節からは第1ヴァイオリンの細かな装飾音を入れて演奏。コーダはペダルの低音を効かせました。この楽章はパイプオルガンで演奏しても違和感がなく、親和性があります。
第3楽章「野辺の風景」は、冒頭からカウベルの音と鳥の鳴き声の録音を、天井のスピーカーから流す予想外の演出。野の情景をイメージしやすくしてもらうためでしょうか。メロディーが一本調子で単調だからでしょうか。レヒシュタイナーを招聘したオフィス山根のInstagram(@office_yamane)によると、オフィス山根のスタッフがカウベルを演奏したようです。アシスタントの石川がレヒシュタイナーと同じイスの右側に座って左手で演奏。原曲のコールアングレとオーボエの旋律の掛け合いを忠実に再現したかったためででしょう。後半にも再度演奏しました。131小節から第1ヴァイオリンの細かな連符を演奏することで、ガヤガヤした雰囲気がよく出ています。終盤のティンパニは両足ペダルの低音で表現。原曲はティンパニのみで演奏される小節があり、クレッシェンドとデクレッシェンドがありますが、この演奏ではメロディーと重ねて演奏しました。低音ペダルだけでは演奏にならないからでしょうか。またカウベルの録音が流れました。
第4楽章「断頭台への行進」は、冒頭からティンパニ×2の細かな連符を聴かせます。またアシスタントの石川がレヒシュタイナーと同じイスの右側に座りましたが、すぐに立ち去ったので何をしたか分かりませんでした。この楽章はメロディーのみを弾くので、あまり行進曲らしくない演奏。62小節からの第2主題はオルガンの魅力が現れた演奏。77小節の後の反復記号は冒頭ではなく、62小節に戻って繰り返しました。最後も目一杯鳴らして、最後の二分音符は長めのフェルマータ。
第5楽章「魔女の夜宴の夢」は弱音で始まりました。その後も音色を増やして重厚感を増すことはしません。下手から黒澤雄太が登場。黒澤は京都市立芸術大学管・打楽専攻4年生で、
Kyoto Music Caravan 2025「打楽器アンサンブル・コンサート」や
第9回京都市立芸術大学サクソフォン専攻生によるアンサンブルコンサート「Saxtation」などあちこちで名前をお見かけします。102小節からステージ下手側に置かれたカリヨンを演奏。客席から見て左側が小、右側が大で、かがんで叩きました。「怒りの日」の後の147小節からと176小節からの金管楽器のアンサンブルの音色が美しい。この部分は音色を頻繁に切り替えました。414小節から金管楽器で演奏される「怒りの日」はペダルで演奏。ただし、その後の479小節からはちょっと音が重なりすぎで、何を演奏しているか分からない状態になってしまったのが残念。
カーテンコールは走って出てきてアンコール。
J.S.バッハ作曲/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番より第3楽章「ラルゴ」を高音で演奏。16:00に終演。終演後はロビーでサイン会が開催されました。
本公演では、パイプオルガン本体の演奏台(トラッカー式)での演奏はなく、全曲がステージ上のリモート式の演奏台で演奏されました。開演中以外は写真撮影OKで、休憩中にリモート式の演奏台の写真を撮っている人が多くいました。
なお、2028年から予定されている京都コンサートホールの改修工事は、パイプオルガンも対象で、7155本のパイプを分解して確認する計画で、約2億円が見込まれています。この計画と費用が妥当かどうか議論になりそうですが、パイプオルガンを聴いたことがある京都市民を増やしたいところです。本公演はパイプオルガンに興味を持つ人を増やすのに一役買ったと言えるでしょう。