神尾真由子&N響メンバーによるアンサンブル「四季」×「四季」
 |
|
2025年10月18日(土)14:00開演 京都コンサートホール大ホール
神尾真由子(ヴァイオリン)、大宮臨太郎(コンサートマスター)、三又治彦(第1ヴァイオリン)、横島礼理(第2ヴァイオリン)、東條太河(第2ヴァイオリン)、横溝耕一(ヴィオラ)、村松龍(ヴィオラ)、辻本玲(チェロ)、矢部優典(チェロ)、西山真二(コントラバス)、圓谷俊貴(チェンバロ)
ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」 ピアソラ(デシャトニコフ編)/ブエノスアイレスの四季
座席:S席 1階20列28番
|
神尾真由子がヴィヴァルディの「四季」とピアソラの「四季」を演奏するコンサートに行きました。神尾はこのプログラムの魅力を「一度に北半球と南半球の四季を楽しむことができます」と語っていました。
神尾真由子のInstagram(@kamiomayuko)によると、ヴィヴァルディもピアソラも再演になるとのことで、昨年の神奈川県立音楽堂での公演(2024.11.4 開館70周年記念ガラコンサート 紅葉坂の四季)のリハーサルの動画(ヴィヴァルディ「四季」夏の第3楽章)が掲載されました。ピアソラも含めた「四季四季」は、ジェネオケ旗揚げ公演第1弾(2022.12.7 紀尾井ホール)で演奏されましたが、関西では初公演になるとのことです。
本公演のリハーサルは、2日前の17日からスタート。神尾のInstagramにピアソラのリハーサル動画が掲載されました。地下室のような場所でのリハーサルです(どこでしょう?)。ピアソラ「ブエノスアイレスの春」の途中で演奏を止めて、神尾が何か話しています。神尾は「攻めに攻めた四季をお聞かせします(?)」と意気込みを綴っていました。
開場前に1階の前田珈琲京都コンサートホール店で、10月9日から始まったランチメニューの「たっぷりきのこの和風ハンバーグランチ」(税込1480円)を食べました。ホールのエントランスに置かれている500円割引券が、11月9日までの期間限定で使用できました。
チケットはS席6,000円でしたが、S席のペア券は11,000円で1,000円安い。本公演は主催の京都ミューズの「2025年度クラシック・シリーズ」第4回10月例会の位置づけで、会員が先にチケットを確保しているためか、あまりいい席がありませんでした。ポディウム席とその左右は客入れなしで、8割くらいの入り。当日券も発売されました。お客さんは女性が多い。ステージではチェンバロを調律中でした。
全員が同時に登場して開演。左から、第1ヴァイオリン×2、第2ヴァイオリン×2、チェンバロ、チェロ×2、ヴィオラ×2の順で、チェロの後ろにコントラバス。チェロとチェンバロ以外は立って演奏しました。
伴奏の弦楽アンサンブルは、NHK交響楽団のメンバーで、首席奏者が2人、次席奏者が5人もいる豪華メンバーです。本公演でコンサートマスターを務める大宮臨太郎は、第2ヴァイオリン首席奏者。第1ヴァイオリンの三又治彦は、第1ヴァイオリン次席奏者。第2ヴァイオリンの横島礼理は、第2ヴァイオリン次席奏者。ヴィオラの横溝耕一は、第1ヴァイオリン次席奏者。ヴィオラの村松龍は、ヴィオラ次席奏者。チェロの辻本玲は、チェロ首席奏者。コントラバスの西山真二は、コントラバス次席奏者です。神尾は襟つきの白いドレスで、半円の中央ではなく、ヴァイオリンの前方で、ヴィオラの方を向いて演奏しました。全員が男性なので、まさに紅一点です。全員が譜面台を立てて演奏。照明は中央にしぼって、チューニングなしで演奏開始。
プログラム1曲目は、ヴィヴァルディ作曲/ヴァイオリン協奏曲集「四季」。神尾はちょっと音程が乱れがちですが、ライブならではのスリリングな演奏。立ち位置を変えてよく動きました。後述するようなスコアにはない装飾音やアーティキュレーションがありました。伴奏のメンバーとは目を合わせずに演奏しました。
「春」の第1楽章は、肩の力が抜けた演奏でややテヌート気味。46小節からの32分音符×8の上昇音型を、神尾とヴァイオリン×4で1拍ずつずらして掛け合いにして変更。これはおもしろいアレンジです。60小節からはテンポを揺らして演奏。第2楽章はヴィオラが大きいですが、スコアではヴィオラがfで、ソロヴァイオリンはmfなので、スコア通りです。神尾はスコアにはない装飾音を入れて、ややリズムを崩して演奏。神尾のオリジナルの解釈でしょう。第3楽章はリズミカルに弾きます。神尾のソロは強弱に独自性がありました。
曲間で拍手はなく、続いて「夏」へ。第1楽章の冒頭は、チェンバロが響きを抑えて、箏のような音色。31小節(Allegro e tutto sopra il canto)から大暴走と言っていいほどの速いテンポで激しい演奏。途中で神尾のヴァイオリンが変な音がしたのは何でしょうか。伴奏の弦楽アンサンブルは神尾を好サポート。ただし伴奏の主張はあまりありません。第2楽章もよくそろっています。神尾のソロはスコアでは(mf)ですが、弱音で演奏。第3楽章は大爆走でロックのノリ。
「秋」の第2楽章は、チェンバロのソロが目立ちましたが、神尾の出番はなく休み。スコアではソロパートが第1ヴァイオリンと同じなので、ここは神尾は演奏しなかったということでしょう。第3楽章はテンポが速い。アーティキュレーションがユニークで、3小節は跳ねずにスラーでつなげて演奏しました。
「冬」の第1楽章は速いテンポで、12小節からのソロもそのままのテンポ。第2楽章はいいメロディーですが、伴奏は雨には聴こえませんね。
演奏後に神尾が「前半ですが、しゃべっていいとのことなので」とマイクを持って話しました。一人ずつメンバー紹介。次のピアソラでソロがある辻本や、テンポを担当する西山には一言コメントして、プレッシャーをかけました。本公演の伴奏の人選は「私が集めたのではなく、メンバーは横溝さんに一任した。横溝さんは高校の同期生(注:桐朋女子高校 ※共学)で、私の黒歴史を知っている」とのこと。メンバーを見渡して「おじさん」と呼び、「女の人とも演奏したい」と、ストイックな演奏とは一転して、トークはゆるい。
休憩後のプログラム2曲目は、ピアソラ作曲(デシャトニコフ編)/ブエノスアイレスの四季。休憩中にチェンバロが撤去されました。神尾は黒のノースリーブのドレスに衣装チェンジ。背中がばっくり見えます。チューニングなしでスタート。
同じ「四季」ですが、ピアソラの四季はヴィヴァルディとはまったく曲想が違います。もともとの楽器編成は、バンドネオン、ピアノ、ヴァイオリン、エレキ・ギター、コントラバスの五重奏ですが、デシャトニコフが独奏ヴァイオリンと弦楽オーケストラのために編曲しました。ピアソラの指示通り、秋→冬→春→夏の順に演奏しました。ヴィヴァルディ「四季」からの引用があります。
「ブエノスアイレスの秋」は、いきなり神尾のノイズからスタート。チェロの長いソロは辻本が担当。神尾のソロは濃厚に歌います。
「
ブエノスアイレスの冬」は、しっとりと始まります。ヴィヴァルディ「夏」第3楽章からの引用があります。神尾はのけぞりながら目一杯歌いました。
「
ブエノスアイレスの春」は、
京都市立芸術大学 芸大祭2017「弾丸はチョコレイト」の「学生コンサート」で、サックス6名+コントラバス1名の編成で聴きました。第2ヴァイオリンがギギギギギというノイズ。終盤は神尾のソロからテンポアップ。最後にヴィヴァルディ「春」からの引用があります。
「
ブエノスアイレスの夏」は、ヴァイオリンソロの下降グリッサンドが不協和音で不穏な雰囲気。ヴィヴァルディ「冬」第1楽章からの引用があります。伴奏の第1ヴァイオリンからチェロまで順番に、ストラヴィンスキーの「火の鳥」の序奏に出てくるような特殊奏法(弱音器をつけてグリッサンド)の繰り返し。コントラバスが強く弦を弾いたり、神尾が「キュイン」という音を連発。最後は全員で下降グリッサンド。
演奏後に神尾が「いかがでしたでしょう?」とMC。「豊中出身だが、親戚はほとんど京都。恩師の工藤千博先生は京響のコンサートマスターだったので、京都コンサートホールの客席でよく聴いていた」と意外なエピソードを披露。「ここ(大ホール)は初めて出た。いつもは小ホール。いいフィードバックがあれば、また呼ばれるかもしれない」と話しました。なお、京響の定期演奏会と大阪フィルの京都特別演奏会にソリストとして演奏しているので、大ホールの出演がまったく初めてだったわけではありません。
最後にアンコール。サラサーテ作曲/サパティアードの弦楽合奏版を演奏。「スペイン舞曲集」(全8曲)の第6曲で、もともとはヴァイオリンとピアノのための作品とのこと。またテンポが速い。さっきまでの話のテンポと演奏のテンポはまったく違います。当日のゲネプロの演奏の一部が神尾のInstagramに掲載されました。神尾は「スピード勝負や超絶技巧技巧系を弾くと無心になるので、近頃私にとっては変な話ですが禅のような癒しになっています。」と綴っていますが、この曲が癒しになるというのはすごい心境です。15:45に終演。終演後にロビーで、神尾のサイン会が行なわれました。CDを購入した先着50名が対象で、神尾はステージ衣裳のまま登場。メガネをかけたかわいい息子さんがおられました。
神尾は弓をたっぷり使って弾いて、期待通りの演奏でしたが、視覚的にも音響的にもステージからの距離を感じたので、もう少し小さいホールでもよかったでしょう。指揮者なしでもよくまとまっていて、さすがN響はレベルが高い。神尾の新譜のリリースがしばらくないので、せっかくなので録音してほしいです。
なお、この日は、NHK交響楽団第2046回定期公演AプログラムがNHKホールで開催されました。ヘルベルト・ブロムシュテット(桂冠名誉指揮者、98歳!)がストラヴィンスキー「詩篇交響曲」とメンデルスゾーン「交響曲第2番「讃歌」」を指揮しました。本公演のメンバーは当然出演していないわけですが、N響は第1ヴァイオリンだけでもなんと17名(+コンサートマスターは3名)もいて、乗り番のやりくりができるので、本公演が実現したということでしょう。