京都ライオンズクラブCN70周年記念チャリティーコンサート 京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科第174回定期演奏会


  2024年7月5日(金)19:00開演
京都コンサートホール大ホール

阪哲朗指揮/京都市立芸術大学音楽学部・大学院管弦楽団
生駒由奈(ピアノ)

ブラームス/大学祝典序曲
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第1番
ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」

座席:全席自由


京都市立芸術大学の定期演奏会に行きました。定期演奏会は年に3回開催されて、夏と冬はオーケストラ公演で、春はオペラ公演です。本公演は夏のオーケストラ公演で、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第1番」が演奏されるのが大変珍しい。めったに演奏されず、昨年のラフマニノフ生誕150年でも聴く機会がありませんでしたが、今年秋のロンドン交響楽団の来日公演(サー・アントニオ・パッパーノ指揮)で、ユジャ・ワンが第1番を演奏します。私は「第3番」よりも好きな作品なので、急に脚光を浴びてきたようでうれしいです。

本公演は「京都ライオンズクラブCN70周年記念チャリティーコンサート」として開催されました。CNとは「チャーターナイト」の意味で、ライオンズクラブ国際協会から正式に承認されてから70周年とのことで、本公演のチケット収益の全額は、京都ライオンズクラブにおいて社会に貢献できる奉仕活動の中で利用するとのこと。10年前の京都ライオンズクラブ創立60周年記念チャリティーコンサートは客員教授の広上淳一が指揮しましたが、本公演の指揮は、2023年度に着任した阪哲朗(指揮専攻教授)です。

会場で『第174回定演のトリセツ!』の冊子が配付される予定でしたが、スタッフに聞いたところ、もうないとのこと。京都市立芸術大学のX(@kyoto_geidai)によると、音楽学専攻の学生を中心に作成されて、コラムやインタビューなど30ページを超える内容とのこと。第169回定期演奏会でも配布されて、充実した内容で、今回も楽しみにしていたので残念です。次回からは増刷を希望します。

チケットは全席自由で2,000円でした。客は8割の入り。オーケストラは対向配置で、左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリン。チェロの後ろにコントラバス。ホルンは上手側(テューバとファゴットの右)に配置。

プログラム1曲目は、ブラームス作曲/大学祝典序曲。大編成での演奏。 聴かせどころを押さえた演奏で、強奏でもイケイケどんどんにならず抑制的で余裕があります。芸大生らしいノーブルで美しい響き。阪は腰を曲げてオーケストラをコントロール。

舞台転換を利用して、京都ライオンズクラブの会長が挨拶。プログラムでは藪内紹智があいさつ文を書いていますが、「7月1日に会長に着任したばかりで、まだ4日目の新米」という男性があいさつ。名前は名乗りませんでしたが、おそらく武田純で、どうやら武田病院の院長のようですね。「クラシック音痴で。初めてクラシックの演奏会に来た」と話し、ライオンズクラブを「世界最大の社会奉仕団体」と紹介しました。続いて、音楽学部長の岡田加津子(作曲専攻教授)があいさつ。ソリストかと思うような露出が多いドレスでした。「大学祝典序曲」と「田園」は、学生だった阪哲朗が初めて演奏したプログラムと同じとのこと。「田園は演奏が難しい曲」と紹介しました。

プログラム2曲目は、ラフマニノフ作曲/ピアノ協奏曲第1番。ピアノ独奏は、生駒由奈(ピアノ専攻4回生)。各専攻の成績優秀者を対象に、入学式後に実施する学内オーディションで最優秀に選ばれたとのこと。黒のドレスで登場。暗譜で演奏しました。第1楽章は第1主題のヴァイオリンのメロディーが最高。第2主題のピアノ伴奏も輝かしい。カデンツァはしびれました。第2楽章はソロがショパン風で、若々しくて瑞々しい。表情豊かな演奏でした。第3楽章はオーケストレーションがちょっと奇抜で、ヘンテコなところがありますが、そのまま聴かせました。ラストはピアノを聴かせるためか、オーケストラは控えめ。生駒は期待以上の演奏で、将来が楽しみです。

休憩後のプログラム3曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第6番「田園」。京都市立芸術大学の定期演奏会で演奏されるのは、学生だった阪が入学した年以来で約40年ぶりとのこと。この作品を演奏会で聴くのは、京都市交響楽団スプリング・コンサート以来で、本当にひさびさです。各楽器のバランス感覚が優れた演奏。木管楽器のソロが安定していますが、音色が洗練されればなおよいでしょう。第1楽章「田舎に着いたときの、爽快な気分の目覚め」はやや速めのテンポ。自然の情景が目に映りました。 第2楽章「小川のほとりの情景」は、第1ヴァイオリンの音色がもう少し暖かみがあるといい。長く感じました。第3楽章「農夫たちの楽しい集い」は躍動的。第4楽章「雷雨、嵐」は、もっと激しい音圧でもよい。第5楽章「牧歌、嵐のあとの喜ばしい感謝に満ちた気持ち」は、すがすがしさが感じられました。

配布された「演奏会スケジュール2024 8月~12月」によると、昨年度から始まった「オーケストラ協演の夕べ」が今年も10月6日(日)に開催されます。また、今年度から新たに吹奏楽の演奏会として、管・打楽専攻による「オータムエインズフェスト」が11月13日(水)に京都市立芸術大学堀場信吉記念ホールで開催される予定です。演奏会が増えるのはうれしい。なお、ロビーで置かれていた『京都市立芸術大学 大学案内 2024-2025』の卒業生インタビューに、京都コンサートホールプロデューサーの高野裕子が登場していて、生い立ちを語っていて興味深い内容でした。

 

(2024.7.15記)

 

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