京都大学交響楽団第215回定期演奏会


  2024年7月6日(土)19:00開演
京都コンサートホール大ホール

飯森範親指揮/京都大学交響楽団

ロッシーニ/歌劇「セビリアの理髪師」序曲
フォーレ/組曲「マスクとベルガマスク」
ブルックナー/交響曲第4番「ロマンティック」(1878/80年稿 ノヴァーク版)

座席:S席 3階C1列26番


飯森範親が京都大学交響楽団を初めて指揮しました。生誕200年となるブルックナー「ロマンティック」の大曲に挑戦しますが、京都大学交響楽団のホームページ(http://kyodaioke.com/)に掲載されたインタビュー記事によると、飯森から選曲の提案をしたとのことです。また、飯森の祖父は京都大学交響楽団でチェロを演奏していて、同時期に朝比奈隆もヴァイオリンで在団していたとのこと。飯森はX(@iimoriconductor)に、祖父と朝比奈が映っている集合写真を掲載しました。祖父から「もし機会があったら京大オケを指揮して欲しい」と言われたことがあったとのことで、「祖父の遺言がいよいよ実現❗️」と綴っています。

飯森はもともと京都大学交響楽団第207回定期演奏会(2020年6月)を指揮する予定でしたが、コロナ禍の影響で中止になりました(予定されていた曲目は、シベリウス「フィンランディア」、ベートーヴェン「交響曲第2番」、シベリウス「交響曲第2番」)。今回は4月15日と16日に飯森が指揮してホール練習(来箱)を行なうなど、満を持しての客演です。本公演の2日前に、神戸公演(7月4日 神戸国際会館こくさいホール)も開催されました。京都大学交響楽団の演奏を聴くのは、第212回定期演奏会以来でした。

飯森範親は、パシフィックフィルハーモニア東京音楽監督、日本センチュリー交響楽団首席指揮者、群馬交響楽団常任指揮者 、山形交響楽団桂冠指揮者、いずみシンフォニエッタ大阪常任指揮者、東京佼成ウインドオーケストラ首席客演指揮者、中部フィルハーモニー交響楽団首席客演指揮者を務めていますが、日本センチュリー交響楽団の首席指揮者は今シーズンで退任します。

チケットは全座席指定制で、S席2,000円、A席1,500円、学生席1,000円(中高生限定)、オンライン配信1,000円(京都公演のみ)。チケットはteket(テケト)から購入。クレジット決済後にメールでQRコードが届き、ホールの入口でスタッフが手持ちのスキャナに読み込ませて入場します。

プログラムの演奏者一覧によると、メンバーは客演を含めて116名で、大学院生が14名もいて、学生指揮の池田智之も大学院生です。他大学の団員も16名います(京都工芸繊維大学、京都市立芸術大学美術学部、京都府立大学、京都府立医科大学、京都女子大学、同志社大学、同志社女子大学、立命館大学、滋賀大学)。今年春に入学した1年生は演奏せずに、誘導などの裏方を担当しました。プログラムのパート紹介が今回もユニークでおもしろい。開演前に音楽部長の依田高典(経済学研究科教授)が挨拶。客は8割くらいの入り。飯森は譜面台なしで指揮しました。

プログラム1曲目は、ロッシーニ作曲/歌劇「セビリアの理髪師」序曲。ヴァイオリンの透明感がすばらしく、1曲目から期待以上の演奏。オーケストラのまとまりとしては、前日に聴いた京都市立芸術大学(京都ライオンズクラブCN70周年記念チャリティーコンサート 京都市立芸術大学音楽学部・大学院音楽研究科第174回定期演奏会)以上で、プロ級と言ってもよいでしょう。歌心にあふれた演奏がいい。バロックティンパニをわざわざ使ったのも効果的でした。

プログラム2曲目は、フォーレ作曲/組曲「マスクとベルガマスク」。今年はフォーレ没後100年なので、選曲されたのでしょう。この作品の演奏機会が少ないのは、長さが中途半端(約20分)なのとハープが必要だからでしょうか。「序曲」「メヌエット」「ガヴォット」「パストラル」の4曲からなります。フランス音楽ですが、ドイツ音楽のような響き。スイスイ進みましたが、管楽器の音色に色気が出るとよいでしょう。

休憩後のプログラム3曲目は、ブルックナー作曲/交響曲第4番「ロマンティック」(1878/80年稿 ノヴァーク版)京都市交響楽団第684回定期演奏会でカンブルランの名演を聴いたばかりなので、分が悪いですが、なんと第211回定期演奏会(2022年6月)で、下野竜也の指揮でブルックナー「交響曲第5番」を演奏しているのがすごい。雛壇最後列は、左からティンパニ、トロンボーン×4、テューバ。その前列がホルン×5とトランペット×4の配置。
京大オケの歴史に残る会心の出来で、ミスが少なくすごく整っていて、学生オーケストラの域を超えています。強奏もよく鳴ってすばらしい。細部まで手を抜かないで丁寧に演奏。飯森との相性もいい。
第1楽章は冒頭のホルンソロが少しだけ不安定でしたが、学生にしては上出来すぎる演奏(京響が完璧すぎただけ?)。やや速めのテンポで進み、練習番号I(253小節)からはかなり速いテンポ。練習番号Q(485小節)からもテンポアップ。緩急をつけてダラダラ演奏しません。メリハリがついているので退屈しません。第2楽章はクライマックスがよく鳴りました。第3楽章はやや速めのテンポ。26小節でティンパニをクレシェンドさせてとどろかせました(その後も同じ)。第4楽章は3小節からホルンよりもクラリネット×2を聴かせて、19小節からトランペットよりもフルート×2を聴かせるのが珍しい(スコアでは前者はpp、後者はp)。139小節からはゆっくり演奏。練習番号P(383小節)からの金管楽器が伸びやかですばらしい。聴きどころが多い演奏でしたが、コーダの最後はちょっと音色が汚くなってしまったのが残念。

カーテンコールでは飯森がメンバーのところまで歩いていって握手。飯森が「エアコンにのどをやられて、大きな声は出せませんが」と言ってマイクなしであいさつ。「父方の祖父が1910年生まれで朝比奈先生と同時期に団員だった。祖父はチェロで、朝比奈先生はヴァイオリンだった。天国で聴いてくれていると思う」と話しました。クオリティの高さに、メンバーに「勉強大丈夫?」と心配しましたが、「ありがとう。いい時間を過ごせました」と話して、21:10に終演しました。

学生の課外活動のオーケストラとしては、驚異的なレベルです。今後もこの調子で頑張って欲しいです。飯森はX(@iimoriconductor)で「京都大学交響楽団の皆さんとの昨日の演奏会は、とても素晴らしい時間となりました。あのクオリティ、モティベーションの高さ、運営力は100年以上の伝統なのでしょうね…携われた全ての皆さんに感謝の気持ちをお伝えします❗️」と綴っていて、演奏だけでなく、運営にも感銘を受けたようです。また客演して欲しいです。

なお、本公演に先立って、6月15日(土)17:30から、京都河原町ガーデンの1階ピロティで、アンサンブルステージが開催されました。四条河原町の交差点の近くで、車の騒音や信号機(ピヨピヨ)がかなりうるさく、集中して演奏できる環境ではありませんでしたが、多くの人が集まりました。弦楽四重奏(ドヴォルザーク「アメリカ」第4楽章、崖の上のポニョ)、木管五重奏(1曲目は不明、千と千尋の神隠し、となりのトトロ、スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス)、金管五重奏(ドラえもん、となりのトトロ、魔女の宅急便、サウンド・オブ・ミュージック)を演奏しました。こういうシーンでは久石譲のジブリ音楽が定番ですね。50分ほどのステージで、京都大学交響楽団のX(@kyodaioke)にダイジェスト映像が掲載されました。

アンサンブルステージ(弦楽四重奏) アンサンブルステージ(木管五重奏) アンサンブルステージ(金管五重奏)


(2024.7.18記)

 

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