尾高忠明指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団「未完の交響曲」
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2024年4月27日(土)15:00開演 兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 シューベルト/交響曲第7番「未完成」 座席:A席 2階2A列34番 |
尾高忠明が大阪フィルハーモニー交響楽団を指揮して、ブルックナー「交響曲第9番」を演奏する演奏会に行きました。本公演では未完成の交響曲を2曲演奏しました。大阪フィルハーモニー交響楽団を聴くのは、井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.3~道義×絶品フレンチと和のコラボ×大阪フィル~、関西6オケ!2024に続いて今月は3公演目で、こんな頻度で大フィルを聴くのは初めてでした。
チケットは先行発売でなんとか2階席を確保しました。客は9割の入り。コンサートマスターは崔文洙(ソロ・コンサートマスター)。指揮台の左に小さな踏み台がありました。尾高忠明はいつものように指揮棒なしで指揮。
プログラム1曲目は、シューベルト作曲/交響曲第7番「未完成」。第1楽章から落ちついたテンポで、鋭角的な表現はしません。メロディーを歌心を持って演奏することに主眼があり、細部のえぐり出しはありません。管楽器と打楽器は弦楽器のサボート役で、ティンパニが弱い。110小節でスコア通りに繰り返し。134小節からfzの管楽器は顔を出さないので、緊迫感は生まれません。第2楽章は、33小節から弦も管もテヌートで演奏(スコアではスタッカート)。
休憩後のプログラム2曲目は、ブルックナー作曲/交響曲第9番(コールス校訂版)。尾高のブルックナーは第7番を大阪音楽大学第64回定期演奏会で聴きましたが、尾高は第9番について、「うちの親父がN響を最後に振ったのがブルックナー9番だったという話を聞いて、僕はブルックナー9番でデビューするんだと決めていたが、23歳の若造にブルックナー9番を振らせてくれるオーケストラはなかった。東京フィルでもN響でもブラームス1番を指揮した」「朝比奈先生が亡くなられてから大フィルはずっとブルックナーをやっていなかった。その後大フィルが初めてブルックナーをやったのは9番で、それを僕に頼んでくれた。一番大事な9番を頼んでくださって、本当にうれしかった」(注:おそらく大阪フィルハーモニー交響楽団第374回定期演奏会(2004.1.30))と、大阪4オーケストラ活性化協議会のシーズンプログラム共同記者発表会で話しています。尾高にとっては「この曲を指揮したくて指揮者になった」と言えるほど、重要な曲です。この作品を聴くのは、東京交響楽団第580回定期演奏会以来ひさびさです。コールス校訂版とは、ウィーンで発見された筆写譜を参考に、ドイツ人のベンヤミン・グンナー・コールスが2001年に出版した版とのこと。
オーケストラは人数が増えて大編成。ワーグナーチューバは左上の雛壇最後列に4、フレンチホルンはその前に4。演奏は、押しつけがましさはなく、自然と受け入れられる演奏。細かなキズはありましたが、さすが大フィルで、オーケストラの総合力で聴かせます。弱奏の音量が大きめで、もう少し落としてほしいと感じました。いつものフェスティバルホールの仕様なのか、このホールがよく響くからなのかどちらかでしょう。ホルンが高らかに響き、ヴァイオリンはしっかりまとまって引き締まった響き。残念ながら客席ノイズが多めで、この作品を初めて聴いた人もいたようです。
第1楽章19小節から力がこもった指揮で、音の密度が明らかに前曲の「未完成」よりも高まりました。27小節からヴァイオリンはテヌートで長い。テンポアップして、63小節からトランペットとトロンボーンははっきり鳴らしました。97小節からの弦楽器のメロディーはスコアの指定はpですが、音量が大きい。123小節のチェロのメロディーは、尾高と一緒にがんばりました。ラストもしびれました。第2楽章は、43小節から金管楽器がアクセントを強調して荒々しい。ラストもテンポ落とさずに走り切りました。
第3楽章はやや速め。155小節からのメロディーは、低弦を聴かせました。206小節のフェルマータは短め。241小節からの最後の四分音符3つのうち、最初の2つはピツィカートではなくアルコで演奏しました。
演奏後に、コントラバス奏者の三好哲郎にパートのメンバーから花束贈呈。尾高に指揮台の近くに呼ばれました。尾高によると、本公演を最後に事務方に移るとのこと。5月以降は「パーソナルマネージャー」として名前が載っています。尾高が譜面台のスコアを持って退場。17:00に終演しました。
今年はブルックナー生誕200周年の「ブルックナーイヤー」で、尾高忠明と大阪フィルは、ブルックナー交響曲全曲演奏を達成する予定です。今年1月には交響曲第6番を演奏(2024.1.18&19 第574回定期演奏会、2024.1.22 第56回東京定期演奏会)。ザ・シンフォニーホールで3回シリーズの「シンフォニストの理想を求めて~モーツァルトとブルックナー」で、交響曲第0番、交響曲第2番、交響曲第1番を指揮して、全曲演奏を達成します。2022年の大阪4オーケストラ活性化協議会のシーズンプログラム共同記者発表会で、尾高は「僕はブルックナー全曲なんてことは夢にも考えたことがない指揮者だった。ブルックナーは7番、8番、9番がすばらしい。神様の域に達したのはその3つで、それだけでいいよといろんなところで言っていた。でも、僕はもっと早くやってればよかったなという思い」「これは全曲をやらされてしまうのかな」と語っていました。ちなみに、大阪フィルは井上道義でも第7番を演奏します(2024.7.7 井上道義 ザ・ファイナル・カウントダウン Vol.4~道義×大ブルックナー特別展×大阪フィル~<ブルックナー生誕200年記念>)。
尾高忠明と大阪フィルは、8月に第62回大阪国際フェスティバル2024で、マーラー「復活」を指揮します。期待が高まります。