関西フィルハーモニー管弦楽団「第九」特別演奏会


  2023年12月9日(土)14:30開演
ザ・シンフォニーホール

鈴木優人指揮/関西フィルハーモニー管弦楽団
澤江衣里(ソプラノ)、久保法之(カウンターテナー)、櫻田亮(テノール)、加耒徹(バリトン)
関西フィルハーモニー合唱団

ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付」

座席:S席 2階AA列33番


今年も「第九」シーズンの到来です。はじめに、関西フィルハーモニー管弦楽団の「第九」特別演奏会に行きました。

関西フィルは実は初めて聴きました。意識して敬遠していたわけではないのですが、これまで聴く機会がありませんでした。1970年に発足して、2020年に楽団創立50周年を迎えました。2管編成で、3人の指揮者体制が長期に渡っていて、オーギュスタン・デュメイ(2008.9~首席客演指揮者、2011.4~音楽監督)、藤岡幸夫(2000.1~正指揮者、2007.4~首席指揮者)、飯守泰次郎(2001.1~常任指揮者、2011.1~桂冠名誉指揮者)が支えていましたが、飯守泰次郎は今年8月に急性心不全で亡くなりました。

鈴木優人は今シーズンから関西フィルの首席客演指揮者に就任しました。関西フィルとの共演はこれまで3回で、「大阪4オーケストラ活性化協議会 2023-2024 シーズンプログラム共同記者発表会」(2022.11.24)によると、首席指揮者の藤岡幸夫からの強い推薦があったようです。京都市交響楽団第674回定期演奏会はいまひとつぱっとしなかったので、2管編成は鈴木が指揮するにはいいサイズと言えるでしょう。首席指揮者の就任披露は、「鈴木優人 首席客演指揮者就任披露記念演奏会」(2023.10.20)。メインはブラームス「交響曲第1番」で、ストラヴィンスキー「プルチネルラ」(全曲版)では、本公演にも出演するバリトンの加耒(かく)徹が出演しました。

チケットは、8月9日から発売。関西フィルWEBチケットで購入して、ファミリーマートで発券できました(手数料は150円)。チケットは12月4日に全席完売しました。

前日のリハーサルは、「関西フィルハーモニー管弦楽団によるおにクル試聴公演」として公開され、茨木市文化・子育て複合施設(おにクル)のゴウダホールで行なわれました。おにクルは茨木市市民会館の跡地に11月にオープンしました。ゴウダホール(大ホール)は1201席で、まだオープン前ですが、今回は音響テストを兼ねてのリハーサルだったようです。750人の見学者が集まったとのこと。なお、こけら落とし公演は2024年4月21日(日)に日本センチュリー交響楽団が行なう予定です。

開演前に関西フィルハーモニー合唱団が入場。2013年に発足しました。ステージ後方に左から、ソプラノ(39名)、テノール(19名)、バス(17名)、アルト(36名)の順に4列で並びましたが、男声が少ない。コンサートマスターは堀江恵太(アソシエイト・コンサートマスター)。最後列の金管楽器は、左からホルン、トロンボーン、トランペットの順で、第4楽章しか出番がないトロンボーンがセンターなのがおもしろい。プログラムのメンバー表には「本日休演」のマークがついていて、誰が出演しているのかが分かりやすい。

鈴木優人はメガネをかけていませんでした。やや速めのテンポで、ピリオド楽器のように音型は短いですが、トゲトゲはしていません。音符が短い分、それだけアインザッツの精度が問われます。全曲が短く感じられました。細部のデフォルメなく、解釈はオーソドックスで、聴き慣れた第九と言えますが、細かな点で鈴木の工夫が見られました(後述)。鈴木の個性は、他の大阪のオーケストラにはない特徴があると言えるでしょう。鈴木の指揮は、指揮棒をすばやく小さな円を描くように動かします。下から上に掘り起こすような動きもありました。関西フィルの演奏は、あまり前に音が飛んできません。木管楽器は自己主張が控えめでもっと目立って欲しい。ソロやアンサンブルの精度は京都市交響楽団よりも劣りました。

第1楽章は513小節からもテンポを落としません。第2楽章はスコア通り388小節からの「1を実行。第3楽章では弦楽器が歌い込みました。「大阪4オーケストラ活性化協議会 2022−2023 シーズンプログラム共同記者発表会」(2021.11.17)で、藤岡幸夫は関西フィルのセールスポイントを「よく歌うオーケストラ」と表現しましたが、納得です。117小節から第1ヴァイオリンの音型を目立たせました。最後も遅くならずインテンポで演奏。第4楽章が始まってから独唱四人と打楽器三人が入場。演奏が始まってから入場させたのは楽章間で拍手が起こるのを嫌ったためでしょう。独唱者の位置がユニークで、舞台端の左右に椅子が置かれてあり、下手にソプラノとテノール、上手にバリトンとカウンターテナーが座りました。独唱者を舞台脇に待機させる配置は初めて見ました。8小節からのチェロとコントラバスのメロディーはあまり力を入れて弾いていないようで、もっとゴリゴリやってほしい。有名なメロディーが始まる92小節(Allegro assai)の前で間を開けずに、突っ込み気味に開始しました。スコアにはダブルバー(||)はありますが、休符は書かれていないことを表現したかったのでしょう。116小節からのファゴットは二人で演奏。四人の独唱者が、指揮台の周りに楽譜を持って集まりました。左からソプラノ、テノール、バリトン、カウンターテナーの順。バリトンソロが235小節で聴いたことがない音程で歌いましたが、スコアにはad lib.とフェルマータが書かれているので、ここを大胆に遊んでみたということでしょう。合唱団は楽譜なしで歌いました。テンポが速く、330小節のフェルマータも短い。四人の独唱はふたたび左右のイスに戻りました。カウンターテナーの久保法之は、読売日本交響楽団第31回大阪定期演奏会での藤木大地よりも特徴的な声。合唱団は男声が少ないので、音量も弱い。発声もソフトでした。833小節からの四重唱の前でふたたび独唱四人が集まり、最後は合唱団の前の両脇に立って一緒に歌いました。

カーテンコールでは、合唱指揮(コア・マイスター)の畑儀文が客席から登場。指揮者、独唱者、オーケストラ、合唱団の全員で最後に一礼。15:50に終演。あまりにテンポが速くて重厚感がなく、昼公演ということもあって、まだ年末の気になりませんでした。

鈴木は、来年度は関西フィルを指揮するのは2公演で、「鈴木優人×関西フィル 二つの「四季」と「春の祭典」」(2024.6.12 フェスティバルホール)と、第353回定期演奏会(2025.3.8)ではブルックナー「交響曲第7番」に取り組みます。本日の演奏を聴く限りでは、スリムで快速なブルックナーになりそうです。なお、関西フィルは、本公演の翌日には、「姫路第九 第47回公演」(アクリエひめじ大ホール)に出演しました(指揮は田中祐子)。忙しいです。

第2回欧州公演のためのクラウドファンディングが8月から実施されました。今回のヨーロッパツアーは8年ぶりで、10月12日~14日に、ベルギー(ゲント)、フランス(パリ)、ドイツ(フランクフルト)の3か国3都市にて開催されました。クラウドファンディングは500万円を目標に行なわれました。「コース⑧直筆サインコース(鈴木優人 首席客演指揮者 就任披露記念演奏会)」(1万円)を申し込み。鈴木優人のサインは、京都市交響楽団第656回定期演奏会ですでに持っていますが、森麻季のサインに興味がありました。12月末にようやく届きました。「関西フィルハーモニー管弦楽団 特別演奏会「鈴木優人 首席客演指揮者 就任披露記念演奏会」」のプログラムに、鈴木優人(指揮)、森麻季(ソプラノ)、鈴木准(テノール)、加耒徹(バリトン)の4人のサインが書かれています。その他に、「第2回欧州ツアー記念ステッカー」、「第2回欧州公演」の写真集も同封されていました。最終的に202名から約532万円が集まりました。

 

ザ・シンフォニーホール

(2024.1.2記)

 

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