【無観客ライブ配信】京都市交響楽団第656回定期演奏会
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2021年5月15日(土)14:30開演
京都コンサートホール大ホール
鈴木優人指揮/京都市交響楽団
上村文乃(チェロ)
ヘンデル/歌劇「忠実な羊飼い」序曲から
ラモー(鈴木優人編)/歌劇「みやびなインドの国々」組曲
ヴィヴァルディ/チェロ協奏曲ト長調RV414
ベートーヴェン/交響曲第7番
座席:S席 3階C2列14番
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京都市交響楽団第656回定期演奏会を聴きに行く予定でしたが、緊急事態宣言の延長を受けて無観客ライブ配信となりました。
指揮は鈴木優人(まさと)。鈴木雅明(バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督)の息子で、バッハ・コレギウム・ジャパンの首席指揮者や、読売日本交響楽団の指揮者/クリエイティヴ・パートナー、調布国際音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサー、アンサンブル・ジェネシスの音楽監督、九州大学客員教授を務めています。また、全国各地のオーケストラに客演して、古楽以外の作品も指揮しています。京都市交響楽団とは今回が初共演でした。
本公演のチケットは、京都コンサートホール・ロームシアター京都Club会員を対象には4月10日から発売されましたが、収容人数の50%を超えたためか、4月26日にチケットが販売休止となりました。チケット代金の払い戻しは、封書が郵送で届きました。「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ、無観客ライブ配信(無料)を行うことといたしました」とのこと。オンライン購入でチケット未発券の場合は、自動的にキャンセル処理されるので手続き不要でした。返金までに数ヶ月かかる場合があるとのことでしたが、5月19日に早くも返金されました。
4月25日から5月11日までの期間で発令された緊急事態宣言が、5月31日まで延長することが5月7日に決定されました。3回目の緊急事態宣言は強い措置が実施され、コンサートホールやシネコンは休館となりました。延長後は延長前よりもいくぶん緩和されたものの、京都コンサートホールを含む京都府や京都市の施設は、引き続き臨時休館が5月31日まで延長されました。近隣のホールでは、ロームシアター京都やザ・シンフォニーホール、フェスティバルホールは休館が継続されましたが、兵庫県立芸術文化センターやサントリーホール、東京芸術劇場は営業を再開し、対応が分かれました。もともと国の指針では、5000人以内であれば収容率50%までの観客は認めていますが、京都府と大阪府の要請が厳しいようです。
本公演は5月10日に無観客ライブ配信の実施が発表されました。「新型コロナウィルス感染症を巡る状況を鑑み、お客様及び出演者、関係者の安全と健康を第一に考え、やむなく無観客公演を行い、その様子を無料でライブ配信することといたしました」とのこと。5月11日にはニコニコ生放送(ニコ生)で配信されることが発表され、番組名は「【ベートーヴェン、ヴィヴァルディ】京都市交響楽団による無観客クラシックコンサート 生中継」。ニコニコへの会員登録は不要で、だれでも無料で視聴できるとのこと(見逃し配信も無料)。かつてはお堅いイメージがあった京響がよくやったものです。関係者の意識がずいぶん変わりました。京都市民としてもうれしいです。
京都コンサートホールは休館しているのに、演奏できるのは、京響は特別待遇ということでしょう。リハーサルやゲネプロの写真などがTwitterで配信されました。また、前日にはプレトークの開催が決定しました。プレトークはもともと京響の定期演奏会では毎回行なわれていて、この日も14時頃からの予定でした。
なお、京響の定期演奏会のライブ配信は今回が2回目で、前回の第643回定期演奏会(2020年3月28日)は「カーテンコール」(https://curtaincall.media/)での無料配信で、4万5千人が視聴したようです(アーカイブ配信はなし)。ニコニコ生放送は東京交響楽団が利用していて、「【観客のいない音楽会】ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集第155回 Live from Muza!」(2020年3月8日)では、20万人以上が視聴しました。
14:00少し前から配信がスタート。ステージ上でチェンバロを調律されていて、私服姿の石田泰尚も映りました。実際の演奏会では奏者が私服で現れることはまずないでしょう。生放送は2番組あり、カメラアングルが切り替わる「複数カメラ番組」と、わざわざ「固定カメラver」が用意されました。「固定カメラver」は3階席中央から拡大したようなアングルでした。
14:00からプレトーク。鈴木優人が登場。マスクはなく、まだ40歳ですが、少し白髪が混じっていて風格があります。京響ポロシャツを着ていました。鈴木のすぐ隣でニコニコ生放送のコメントが読めるようになっていて、たまにコメントに反応しながら話をしました。いい声で話もうまい
。鈴木はニコ生デビューとなったようです(YouTubeライブなどは経験があるとのこと)。
「前半はバロック時代の作品で、チェンバロを弾きながら指揮する」と話し、「休憩時間もスペシャルコンテンツがあるかも」と予告しました。「モダンオーケストラならではのバロック音楽の楽しみ方を提案したい」と話しました。曲目解説については後述します。最後に「今日の配信は無料だが、チケット代の代わりと思って投げ銭をいただけたらうれしい」と呼びかけました。鈴木優人のTwitter(@eugenesuzuki)でも「配信費用はオーケストラの負担になっておりますので、支援の投げ銭を是非よろしくお願い申し上げます」と書かれていました。また、「音楽は心に寄り添うもの、癒しを感じるもの」と話しました。13分ほどで終了しました。
ホール内にいつもと同じ開演前のアナウンス音声が流れましたが、自宅から聴けるとは思いませんでした。開演前に、演奏者名や曲名を字幕で紹介。NHKのテレビ番組のような立派な作りです。プログラムがないため、曲目解説が読めないのが残念でしたが、クラウドファンディングで入手できました(詳細は後述)。
プログラム1曲目は、ヘンデル作曲/歌劇「忠実な羊飼い」序曲から。プレトークで鈴木は「遅いテンポと速いテンポのコントラストが分かりやすい。なんとこの曲は京響第1回定期演奏会で演奏された。会場は歌舞練場だった」と話しました。厳密に言うと、第1回定期演奏会(1956年6月19日)が行なわれたのは円山音楽堂で、その前日の披露演奏会(1956年6月18日)の会場が先斗町歌舞練場でした。演奏曲目はどちらも、ヘンデル「忠実な羊飼い序曲」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」、ヴェルディ「ナブッコ序曲」、シベリウス「フィンランディア」、ブラームス「ハンガリー舞曲第5番、第7番」、J.シュトラウス�鏡ぁ崕佞寮次廚如∋愆�は初代常任指揮者のカール・チェリウスでした。このヘンデルの作品が、京都市交響楽団が初めて演奏した歴史的な作品ということが、かなり意外です。なお、パンフレットの相場ひろの解説によると、この作品は全6部からなる長大な作品のようですが、本公演では第1部が演奏されました。
団員が入場。マスクをしている人がいるのとしない人がいるのはこれまでと同じです。全員が起立して、特別客演コンサートマスターの石田泰尚と鈴木優人が同時に入場。石田の隣にコンサートマスターの泉原隆志が座っていました。鈴木が緑色のチェンバロを弾いて、オーボエでチューニング。管楽器はオーボエが2本だけで、弦楽器も中編成です。
鈴木は立ったり座ったりしながら指揮。運動性がある指揮で、立ったまま弾いたりしました。カメラアングルもよく、非常に期待できる1曲目でした。演奏が終わると、パソコンの前で、自然と拍手をしていました。なお、投げ銭をする人がいると、「ニコニ広告しました」や「ギフトを贈りました」が画面の下部に流れました。
プログラム2曲目は、
ラモー作曲(鈴木優人編)/歌劇「みやびなインドの国々」組曲。プレトークで鈴木は「優雅なインドの国々」と紹介し、「器楽で演奏できる名曲を抜粋して6曲の組曲にした。読売日本交響楽団のために編曲した。当時はなかったクラリネットが入っているし、アーティキュレーションも変えた」と話し、有名な「野蛮人の踊り」の一部をチェンバロで演奏しました。ラモーと言えば、
読売日響第160回東京芸術劇場名曲シリーズの歌劇「ダルダニュス」組曲も印象に残っています。
木管は各2名(フルートはピッコロ持ち替え)の編成。指揮とオーケストラの一体感がある演奏で、初共演とは思えません。指揮もリズミカルで分かりやすい。ヴィオラの後ろで、胴の長い太鼓(プロヴァンス太鼓)を腰から下げて、立って叩きます。
3曲目「西風の神の第1エール」は「ピッコロがデュエットで、珍しく第1ヴァイオリンが通奏低音を演奏する」と鈴木がプレトークで紹介しました。4曲目「北風の神と薔薇のエール」は速い弦とゆっくりした木管楽器との対話。5曲目「未開人たちと平和のパイプの踊り」では大太鼓がいいアクセント。なお、プロヴァンス太鼓と大太鼓を演奏した中山航介のTwitter(@Kosuke_timpani)によると、アドリブでの演奏だったようです。
プログラム3曲目は、ヴィヴァルディ作曲/チェロ協奏曲ト長調RV414。チェロ独奏は上村文乃(かみむらあやの)。上村はバッハ・コレギウム・ジャパンでバロックチェロ奏者としても活躍しています。プレトークで鈴木は「明るいイタリアの太陽のような作品で、うだるようなぐったりするような夏バテのような第2楽章がある。チェロ独奏は当時としては最高難度の作品」と語りました。
チェロの演奏台を中央の少し右寄りに設置して、チェンバロを左に移動。上村文乃が水色のロングスカートで登場。オーケストラは管楽器はなく、弦楽器も少し人数が減って14名。
上村は楽譜を見ながら弾きましたが、冒頭から独奏チェロも一緒にトゥッティを演奏。バロックチェロということで、いつものチェロと音色が違います。見た目は同じ楽器に見えますが、弦が硬いのか、こするのに力がいりそうです。速いパッセージもありました。鈴木は弾き振りなので、髪を揺らすように指揮。YouTube神奈川フィルチャンネルの「ヴィヴァルディ作曲/4本のヴァイオリンのための協奏曲変ロ短調RV.580」(石田泰尚が第1ヴァイオリンソロを演奏)が結構はまって繰り返し聴いているのですが、それにくらべると、華やかさに欠けて地味な作品です。プレトークで第2楽章が「夏バテのような」と紹介されたのは、ゆっくりしたテンポで、メロディーがじっとりしているからでしょうか。
オーケストラ団員が拍手が起こり、鈴木が楽譜を持って登場して、アンコール。ボッケリーニ作曲/チェロ・ソナタ第6番より「アレグロ」を鈴木と上村が2人で演奏。曲名が字幕で出ました。チェロパートは高音も使うし速いし、なかなかの難曲です。演奏が終わると、二人で手を振りました。鈴木の優しい人柄も伝わりました。
休憩時間に、チェンバロが撤去されて、指揮台が搬入されました。指揮台の前に鈴木優人が登場して、「スペシャルコンテンツコーナー」ということで、「第2プレトークコーナー」がスタート。上村とイスに座ってトーク。鈴木は上村を「あやのさん」と呼びました。先ほど演奏したチェロは、バロック時代のチェロで、楽器は新しいがモダンチェロとは違うとのこと。見た目では違いはよく分かりませんでしたが、弦の色が黄色く、ガット弦とガット弦に銀をまいていたり、弓も形が違ってとんがっていて、新幹線みたいとコメントしました。鈴木と上村は、指揮者とチェリストとしては初共演だったとのこと。
また、スタッフから渡された「投げ銭タイム!!スタート!!」と書かれた大きな紙を見せて、「温かいご支援をお願いします」ということで、投げ銭のお願い。画面上部の「ギフト」を押すとできるとのことでしたが、クレジットカード決済ではなく、ニコニコポイントを購入する必要があるのが面倒です。この時点で10万円を達成し、23,000人が視聴していたようです。効果は絶大で、「〇〇さんがギフトを贈りました」という字幕が画面下にずっとひっきりなしに流れたので、これだけ集金できれば大成功でしょう。ちなみに、鈴木は昨日は西本願寺に行ったとのこと。クリスチャンのイメージがあるので意外でした。コメントの質問にも答えました。10分ほどで終了しました。上村は後半は客席で聴くとのこと。鈴木と上村もマスクなしで、ほのぼのとしたトークでした。
休憩後のプログラム4曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第7番。鈴木はプレトークで「カメラアングルでいろいろな楽器を見ていただきたい。バロックティンパニにはペダルがなく、ハンドルを回して音程を変える」と話しました。大編成で、この作品は対向配置で演奏。左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンで、チェロの後ろにコントラバス。実際のホールで聴いたなら、対向配置が効果的だったでしょう。鈴木は
指揮棒を持って指揮しました。
古楽寄りのアプローチではなく、低音も効いて重厚感のある演奏。鈴木の解釈は一般的で、細部をいじったりデフォルメしたりせず、全体の流れやフレーズを重視しました。スピード感があって、リズムの歯切れがよい。バロックティンパニもシャープ。石田泰尚が頭を上下に激しく動かして頑張ってる感がすごい。第1楽章は繰り返しあり。第1楽章から第2楽章と、
第3楽章から第4楽章は、続けて演奏しました。第4楽章12小節で第2ヴァイオリンのフレーズを聴かせるのがユニーク。
演奏後は、自然と団員から拍手が起こって、鈴木が再登場。パートごとに立たせました。アンコールはなく、鈴木が「みんなで手を振りましょう」と呼びかけて、全員で手を振って終わりました。16:25頃に終演。団員が話しながら退場。
鈴木も団員と談笑していました。後片付けの様子も映り、最後に視聴者に「本日の番組はいかがでしたか?」というアンケート。5択でしたが「1.とても良かった」が97.1%を占めました。かなりの高評価で、多くの視聴者が満足したようです。約2時間半の配信でした。見逃し配信が来週の5月22日(土)23:59まで視聴できました。再生回数は終演後の段階で約3万回、5月22日現在で4万1千回(+固定カメラverは8,000回)再生され、投げ銭は25万5千円を超えました。なお、京都市交響楽団のTwitterによると、最終的な視聴回数は49,606回だったとのこと。
演奏としては、前半の弾きぶりのほうが楽しめました。鈴木は中編成の作品のほうが得意なのかもしれません。京響とは初共演でしたが投げ銭にも協力的で、ニコ生デビューとは思えないほどでした。また客演して欲しいです。
チケットを購入した者としては、ぜひホールで聴きたかったというのは間違いありませんが、中止になるよりもはるかによかったです。関係者の努力に敬意を表したいです。ニコニコ生放送は、最初は少しつながりにくいところがありましたが、配信は安定していました。カメラワークなどもよかったです。1週間限定で繰り返し見られるのもいいですね。
コメントを見ていると、普段クラシックのコンサートに行かない人も見ていたようです。配信開始前に「のだめ主題曲「ベートーヴェン第7番」のコンサート」のようなプッシュ通知が流れたことで、多くの人が釣られて見に来たようです。
公演プログラムはもらえませんでしたが、京都市交響楽団のクラウドファンディングで購入した「2021年度シーズン定期演奏会全公演の指揮者・ソリストのサイン入りプログラム」(3万円)で、12月になって届きました。今回のプログラムはプレミアの価値が出るかもしれません。
なお、次回の第657回定期演奏会(2021年6月25日(金))もチケット発売が延期されています。今年度末で第13代常任指揮者兼芸術顧問を退任する広上淳一が指揮するので、ぜひ実施して欲しいです。なお、翌週の第11回名古屋公演(2021年5月22日(土) 愛知県芸術劇場コンサートホール)は開催されました。大阪府内のオーケストラは公演中止が相次いでいるので、恵まれていると言えるでしょう。ちなみに、京都市交響楽団オフィシャルブログ「今日、京響?」(https://ameblo.jp/kyotosymphony/)が、なぜか4月から更新されていません。中の人が交代したのでしょうか。
文化庁長官の都倉俊一から「文化芸術に関わる全ての皆様へ」というメッセージが5月11日に文化庁のホームページに掲載されました。そのなかでは、「文化芸術活動の休止を求めることは、あらゆる手段を尽くした上での最終的な手段であるべきと考えます。皆様におかれては、これからも文化芸術に関する活動を、可能な限りご継続ください。文化庁長官として私が先頭に立って、そのための支援に全力を尽くしてまいります。」と訴え、「感染症対策が適切に講じられている公演や展示において、来場者間で感染が広がった事例は報告されていません。(中略)私たちに安らぎと勇気、明日への希望を与えてくれたのが、文化であり芸術であったということです。文化芸術活動は、断じて不要でもなければ不急でもありません。」と関係者に対して前向きなメッセージとなっています。オーケストラへの支援もぜひお願いしたいです。
京都市交響楽団に触発されたのか、5月20日に大阪交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団の大阪の4つのオーケストラが、無観客ではなく、国の方針に沿って観客の人数を制限した形で公演が行えるよう措置の緩和を求める吉村大阪府知事宛の要望書を提出しました。東京オリンピックが優先されて音楽活動が犠牲になるということは本当に避けていただきたいです。
(2021.5.22記)
(2022.1.10更新)