祝100周年! オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ特別演奏会「カルミナ・ブラーナ」


  2023年9月2日(土)15:00開演
フェスティバルホール

大植英次指揮/Osaka Shion Wind Orchestra
老田裕子(ソプラノ)、清水徹太郎(テノール)、青山貴(バリトン)
大阪フィルハーモニー合唱団、岸和田市少年少女合唱団

大栗裕/大阪俗謡による幻想曲
ラヴェル(佐藤正人編)/「ダフニスとクロエ」第2組曲
オルフ(マス・キレス編)/カンタータ「カルミナ・ブラーナ」

座席:S席 2階1列38番


Osaka Shion Wind Orchestraの100周年を記念した特別演奏会が、フェスティバルホールで開催されました。第61回大阪国際フェスティバル2023としての開催で、主催は、朝日新聞文化財団、朝日新聞社、大阪市音楽団、フェスティバルホール。
「カルミナ・ブラーナ」の全曲を合唱入りで演奏します。理事長で楽団長の石井徹哉は、SPICE(エンタメ特化型情報メディア)のインタビューで「通常の自主公演では出来ないスケールの大きな曲、例えば「カルミナ・ブラーナ」を閃いた。「カルミナ」を演奏出来るなら、指揮は大植マエストロ以外には考えられないと思い、大阪フィルさんに相談させていただいたところ、スケジュールも上手くハマり、大阪フィルハーモニー合唱団の出演や稽古場の問題も協力いただけることになった」と、選曲と指揮者選定の経緯を語っています。

Osaka Shion Wind Orchestraは、日本で最も古い交響吹奏楽団で、1923(大正12)年に大阪市音楽隊が結成。1946(昭和21)年に大阪市音楽団に改称され、2014年に大阪市の直営から民営化して、2015年にOsaka Shion Wind Orchestraに改称しました。現在の音楽監督は宮川彬良、芸術顧問は秋山和慶。団員は20代から60代までの31名が所属しています。

指揮は大植英次。大阪フィルハーモニー交響楽団桂冠指揮者、ハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー名誉指揮者、ハノーファー音楽大学終身正教授を務めていますが、Osaka Shion Wind Orchestraを指揮するのは今回が初めてです。チケットはShionオンラインチケットから申し込みましたが、「がんばれ!Shion応援団」レギュラー応援団対象の割引はありませんでした。セブンイレブンで発券しました(発券手数料は110円)。
大阪国際フェスティバルのX(旧Twitter)によると、リハーサルは4日間行なわれて、2日目(8月31日)は上述したように大フィルの協力が得られたようで、なんと大阪フィルハーモニー会館でリハーサル。本番前日の9月1日は、フェスティバルホールでホール練習を行なう万全の態勢です。

客席は9割の入り。文化庁の補助金事業で、小学生から18歳以下の400名が無料で招待されたので、制服姿の生徒もちらほらいました。メーンホワイエで、大植英次サイン入りの『Osaka Shion Wind Orchestra 創立百周年記念誌』(4400円)が5冊限定で販売されました。

Gの音でチューニング。大植英次の指揮台は、いつもの踏み台つき指揮台でした。大植は全曲譜面台なしで指揮。前半の2曲は、大阪府立淀川工科高校吹奏楽部が吹奏楽コンクールでよく演奏している曲です(ほとんどこの2曲のローテーション)。プログラム1曲目は、大栗裕作曲/大阪俗謡による幻想曲。もともとは1955年に管弦楽のために作曲され、1974年に大阪市音楽団(Osaka Shion Wind Orchestraの前身)が大栗に吹奏楽版を依頼して初演しました。序奏からトランペット×7とトロンボーン×3が強力。Chanchikiが叩かれる第一主題はやや遅いテンポで、大阪国際フェスティバルにふさわしいお祭りムード。第二主題の後のホルンのゲシュトップとトロンボーンのグリッサンドの掛け合いがいい。第三主題のピッコロソロは立って演奏(最初は1人で、3人に増えた)。木管楽器、金管楽器、打楽器のバランスがちょうどいい。コーダは速いテンポですが、最後はリタルダンドで締めくくるのが大植らしい。胸が熱くなる演奏でした。

プログラム2曲目は、ラヴェル作曲(佐藤正人編)/「ダフニスとクロエ」第2組曲。大植はSPICE(エンタメ特化型情報メディア)のインタビューで「ボストン交響楽団を指揮してプロとしてデビューした思い出の曲」と語っています。ハープ×2とチェレスタが加わりました。原調通りのアレンジですが、京都市交響楽団第678回定期演奏会で原曲を聴いたばかりなので、弦楽器のほうが表現が勝る部分がいくつもあると感じてしまいました。第1曲「夜明け」は、夜明けにしては音色が明るすぎる。メロディーも弦楽器のほうがなめらかに聴こえますね。第2曲「無言劇」もクラリネットとフルートの高音域が耳につきました。第3曲「全員の踊り」は最初のE♭クラリネットソロからテンポが速い。最後列に並んだ打楽器7人も迫力があり、合唱団がいなくても楽しめました。

休憩後のプログラム3曲目は、オルフ作曲(マス・キレス編)/カンタータ「カルミナ・ブラーナ」。大植の指揮で昨年12月の大阪音楽大学第65回定期演奏会で原曲を聴いていて、今回の吹奏楽版と聴き比べになりました。吹奏楽編曲は、スペインのフアン・ビセンテ・マス・キレス(1921~2021)。原調通りで、ぶっとんだアレンジではありません。吹奏楽での演奏は独唱も合唱もないことがほとんどなので、独唱も合唱も加わって聴けるのは貴重な機会です。なお、児童合唱の岸和田市少年少女合唱団は大阪音楽大学第65回定期演奏会に続いて、今回も出演しました。
大阪国際フェスティバルのX(旧Twitter)によると、ソリスト3人+オケ62人+合唱団130人+児童合唱36人とのこと。大阪フィルハーモニー合唱団がステージ後方に6列で楽譜を持って入場。Shionよりも合唱団のほうが人数が多く、中央が女声で、右側が男声。女:男は2:1の割合。ちなみに、大阪フィルハーモニー合唱団は1973年創立で、今年で創立50周年です。ティンパニは2セット使用。ピアノも2台ありました。指揮台の前にイスは2つ置かれました。大植と一緒にバリトン独唱の青山貴が入場。向かって右側のイスに座りました。また、歌詞の日本語訳が字幕モニターに、横書きで2行ずつ表示されました(字幕は藤野明子、字幕操作はミチヤシステムズ)。この曲を初めて聴いた人には歌詞の内容が衝撃的に感じられたことでしょう。

大植は大振りしない堅実な指揮。大植の解釈は大阪音楽大学第65回定期演奏会と同じか深化したと言えるでしょう。Osaka Shion Wind Orchestraは、第146回定期演奏会でホルスト「惑星」を取り上げたように、クラシック作品のアレンジに慣れているため、聴いていて吹奏楽であることを忘れることがありました。合唱団はマスクなしでしたが、もう少し歌詞がはっきり聴こえるとよいでしょう。

第1曲「運命の女神よ」は遅めのテンポ。管楽器の四分音符をあまり聴かせません。第2曲「運命に痛めつけられ」は、piu mossoから速いテンポ。第4曲「太陽は恵みをふり注ぐ」でバリトンが立ち上がって、楽譜を持って指揮台の横で歌います。伴奏のクラリネットの和音がユニークで斬新に感じました。原曲ではヴィオラで目立たないので、新たな発見でした。第5曲「そらご覧!」は遅いテンポ。poco rit.の「Hyemis sevitia」をゆっくり歌って、「a」の後のカンマでパウゼ。a tempoからは速いテンポ。3回繰り返しますが、3回目を大きく歌わせました(スコアの指示は1回目がp、2回目がf、3回目がff)。第10曲「世界がすべて我が物でも」はpoco ritenutoでテンポを落としました。第11曲「抑えようもない胸のうち」は、オーケストラにはない木管楽器の色彩感がいい。最後の十六分音符と四分音符の二発をリタルダンド。第12曲「かつて私は湖に住んでいた」は、テノール独唱の清水徹太郎が楽譜を持って下手から歩いて登場。バリトンの前で歌います。三番の最後には笑って退場しましたが、大阪音楽大学第65回定期演奏会の高橋淳のインパクトが強すぎました。第14曲「みんな居酒屋にいるときにゃ」は頻繁にパウゼを入れて、テンポを早くしたり遅くしたり。
第15曲「愛の神さまキューピッド あちこち気ままにとびまわる」で、ソプラノ独唱の老田裕子が、白いドレスで下手から登場。指揮台の前の左側のイスに座りました。岸和田市少年少女合唱団が上手から入場して、上手脇で三角形のような隊列で立って歌います。岸和田市少年少女合唱団は1988年に設立されて、小学3年生から高校3年生までの約50名が在籍しているとのこと。今回の出演は36人で、女子のほうが男子よりも多い。大阪音楽大学第65回定期演奏会と同じように、腕を動かすなど振り付けつきで歌いました。第16曲「昼も夜もなにもかもが」は、チェレスタが客席に向けて配置されていたので大きく聴こえました。第18曲「胸のうちは様々な思いで」が始まると児童合唱団が退場。第19曲「もし男の子と女の子が」の最後のフェルマータから、大植が指揮台でジャンプして、第20曲「おいで、おいで、さあおいで」へ。児童合唱団が上手奥から登場して、ステージ後方の女声合唱の左に並びました。 第21曲「揺れ動く心を はかりにかける」のソプラノ独唱の伴奏は、この編曲の管楽器のほうがいいかもしれません。第22曲「今こそ楽しいときだ」のカスタネットは座って叩くのではなく、両手に持って顔の近くで鳴らしました。スコアに指定があるのかは不明ですが、珍しい。第24曲「幸いあれ、姿やさしき方」冒頭のグロッケンシュピールは二人で演奏。大阪音楽大学第65回定期演奏会では途中で演奏が止まってしまいそうになるハプニングがありましたが、事故は起こらず、感動的なトゥッティでした。最後の第25曲「運命の女神よ」は、スコアにはない児童合唱も加わって歌いました。

カーテンコールでは、それぞれの合唱指揮も登場(大阪フィルハーモニー合唱団合唱指揮の福島章恭と、岸和田市少年少女合唱団合唱指揮の廣野寛子)。最後は100周年を迎えたOsaka Shion Wind Orchestraに合唱団からも大きな拍手が送られました。17:00頃の終演予定でしたが、17:20に終演。

大植とShionが初共演だったことと出演人数が多いため、縱線が揃わないことがたまにありましたが、大阪クラシックの前後にまた指揮して欲しいです。なお、大植英次は9月10日から大阪クラシックに出演します。
Osaka Shion Wind Orchestraの100周年事業として、9月と10月に特別演奏会「バーンズ・チクルス」が開催されます。ジェイムズ・バーンズの交響曲9曲を4回に分けて、作曲者のバーンズ本人が指揮する予定でしたが、体調悪化のため来日が叶わなかったため、ポール・ポピエルが指揮します。また、12月には初の海外演奏(シカゴのミッドウエスト・クリニック)で、「大阪俗謡による幻想曲」を演奏する予定です。

 

エントランスホワイエ入口

(2023.9.10記)

 
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