大阪音楽大学第65回定期演奏会


  2022年12月10日(土)18:00開演
ザ・シンフォニーホール

大植英次指揮/大阪音楽大学管弦楽団
幸田浩子(ソプラノ)、高橋淳(テノール)、田中勉(バリトン)
大阪音楽大学合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス少年少女合唱団、岸和田市少年少女合唱団

バーンスタイン/「キャンディード」序曲
レスピーギ/交響詩「ローマの松」
オルフ/カルミナ・ブラーナ

座席:座席指定 2階CC列23番


第62回定期演奏会第63回定期演奏会第64回定期演奏会に続いて、4年連続で大阪音楽大学定期演奏会に行きました。いつもは金曜日でしたが、今年は土曜日の開催でうれしいです。

今年の指揮は大植英次。2003年度から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務め、2012年度からは桂冠指揮者に就任しています。大阪音楽大学を指揮するのは今回が初めてというのが意外すぎます。
 
チケットは全席指定で3,500円。10月11日から「大阪音楽大学オンラインストア」で申し込みが開始。備考欄に座席の希望が入力できました。クレジットカード決済が可能で、すぐに送料無料でチケットがレターパックで届きました。
 
チケットに必要事項(氏名、住所、電話番号)を記入し、チケットは大きいほうがもぎられて、チケットの半券を持って入場します。ザ・シンフォニーホールで長らく休止していたクロークがついに営業していましたが、カフェ、ショップ、プレイガイドは引き続き休止中でした。ポディウム席とその周辺は客入れはされませんでしたが、客の入りは7~8割くらい。当日券も発売されました。今年も入場無料の制服姿の高校生が多い。昨年は前後左右を一席空けた配席でしたが、今年は通常通りでした。
 
大阪音楽大学管弦楽団は、管弦打楽器専攻で選抜された学生を中心に編成され、プログラムによるとメンバーは123名で、大学院2年2名、大学院1年1名、大学専攻科4名、大学4年32名、大学3年31名、大学2年16名、大学1年8名、短大専攻科1名、短大2年4名、教員4名、演奏員11名、卒業生9名。管楽器はほぼ在学生ですが、弦楽器は教員、演奏員、卒業生が多い。チューニングは、木管楽器→金管楽器→コントラバス→その他の弦楽器の順に、4回に分けて合わせます。
大植は譜面台なしで指揮。指揮台はいつもの踏み台が横にある持ち込みの指揮台ではありませんでした。
 
プログラム1曲目は、バーンスタイン作曲/「キャンディード」序曲。管楽器(特にホルン)が強め。シンバルを目立たせるように鳴らします。弦楽器のメロディーは立体感があります。表情豊かで生命力があり、トゥッティの音色やバランス感覚はさすが音大生。
 
プログラム2曲目は、レスピーギ作曲/交響詩「ローマの松」。第1曲「ボルゲーゼ荘の松」は遅めのテンポで、すぐに水がイメージできるほど、鉄琴、ハープ、ピアノ、チェレスタがみずみずしい。中音域の内声が豊か。第2曲「カタコンベ付近の松」は、舞台裏からのトランペットの音量が小さい。ザ・シンフォニーホールのパイプオルガンは、モニターの映像ではなく、左上に取り付けられた丸いミラーで指揮を確認します(初めて気づきました)。ホルン×4がクライマックスのfffでベルアップ。第3曲「ジャニコロの松」のナイチンゲールの歌声は、打楽器奏者が水が入っている紙コップにストローを差して吹きました。ただ、鳴き声の音量が大きかったので、スピーカーからの録音も併用でしょう。第4曲「アッピア街道の松」は、イングリッシュホルンのソロの音量が大きい。バンダは2階席後方の左に、トランペット×4と右にトロンボーン×2。大植英次はほとんど後ろを振り返ってバンダを指揮しました。私の席では3方向からのステレオ効果が楽しめました。
 
休憩後のプログラム3曲目は、オルフ作曲/カルミナ・ブラーナ。演奏会で聴くのは初めてです。休憩中に、大阪音楽大学合唱団がポディウム席に入場。大阪音楽大学合唱団は声楽専攻の学生を中心に編成され、プログラムによると、ソプラノ32名、アルト36名、テノール15名、バス25名。左の2ブロックは女声で、右の1ブロックが男声。ポディウム席の後ろのパイプオルガンの前にもパイプ椅子を並べて座りました。合唱団はマスクを着けて、譜面を持って歌いました。ステージには、バリトン独唱の田中勉(声楽科教授)が指揮台の前の右のイスに座りました。
全曲休みなく続けて演奏。大植の指揮はテンポに緩急をつけるなど、ユニークな解釈が随所で見られました。オーケストラは弱奏が多く神経を使います。打楽器の表情づけがうまい。
第1曲「おお運命の女神よ」は、合唱団はマスク越しですが、よく響きました。ただしオーケストラの強奏ではかき消されました。5小節からの合唱はテヌート気味で歌いました。第2曲「運命の打撃を」は、男声合唱が4小節と8小節を長く伸ばすのがユニーク。後半のpiu mossoは猛スピード。第4曲「万物を太陽は整える」は、バリトンの田中がマスクなしで譜面を持って歌いました。1階席の前3列を空けていたのは、独唱者がマスクなしで歌うための配慮でしょう。歌い終わると上手へ退場。第5曲「見よ、好ましい」は、「Hyemis sevitia」の「a」の二分音符を長く伸ばしました(続く2回も同じ)。第7曲「森は華やぐ」で、ティンパニを二人で叩きました(スコア通り)。第9曲「輪舞」は私が好きな曲。第10曲「世界が我が物になろうとも」は、ファンファーレが高らかに鳴りました。
第11曲「胸の内に燃え上がる」で、バリトンの田中が再入場。わざと音程を外すような歌い方でした。最後の十六分音符と四分音符の二発をテンポを落として演奏(スコアにpesanteの指示があるからか)。バリトンはまた退場。第12曲「かつては湖に住んでいた」で、下手からテノール独唱の高橋淳が千鳥足で登場。フラフラでゾンビみたいです。指揮台の近くで楽譜なしで歌いましたが、泣き叫ぶようなオーバーな歌い方で、笑ってしまうほどです。オペラのような演劇性を披露して、最後は指揮台のバーにもたれて、顔を両手で覆いながら退場しました。高橋の出番はこれだけでしたが、インパクトは強烈でした。最後の小節のホルンを長く伸ばしました(スコアもフェルマータ)。第13曲「おれは修道院長だ」は、バルトンの田中が下手から歌いながら入場。音程がないような歌い方でした。終わるとまた退場。第14曲「酒場に我らがいるときは」は、scatenato(最後の9小節)は、遅いテンポからアッチェレランド。
児童合唱がポディウム席の左のLAブロックに入場。ザ・カレッジ・オペラハウス少年少女合唱団(11名)と岸和田市少年少女合唱団(19名)の混成で、小学6年から高校3年までのメンバーで、マスクを着けて歌いますが、譜面はなし。同時にステージには下手からソプラノ独唱の幸田浩子(特任准教授)が白いドレスで入場。指揮台の前の左のイスに座りました。第15曲「愛の神は至るところを飛び回る」は、児童合唱が腕を動かすなど振り付けをつけて歌いました。ソプラノ独唱の幸田は楽譜を持って歌いました。ヴィブラートが多くなく、きれいな声です。第16曲「昼も夜も、そしてすべてが」でバリトンがまた入場。ピッコロ×2がパイプオルガンのような響き。第18曲「私の心のまわりには」は、バリトン独唱のクセが強く、ほとんどオペラのセリフのようです。第22曲「楽しみの季節だ」では、ソプラノ独唱の幸田が、児童合唱団とのユニゾンを意識して、斜め後ろをチラチラ見ながら歌いました。第24曲「ああ、このうえなく美しい人よ」は、グロッケンシュピールを左右の両サイドに置いて、チャイムのような効果。ティンパニは二人で叩きました。後半でアクシデントが発生。大植が振り間違ったからなのか、大植が指揮しているのに演奏が止まってしまい無音になってしまいました。ここで終わってしまいそうになってドキドキしましたが、大植は指揮を続けて何とか立て直して続行しました。
カーテンコールでは、合唱指導の本山秀毅(学長!)と松尾卓郎(講師)がステージへ。20:25に終演しました。
 
カルミナ・ブラーナのような大規模作品は、大植英次でもまとめるのは大変なようです。なお、大植は2日後には「大植英次「第九」2022 Japan General Orchestra 旗揚げ公演 Part2」(東京オペラシティコンサートホール)を指揮しました。多忙です。
 
なお、来年の第66回定期演奏会は、第63回定期演奏会に続いて井上道義が指揮します。2024年末での引退を表明していますが、どんな作品を指揮するのか今から楽しみです。
 

ザ・シンフォニーホールのクリスマスツリー

(2022.12.26記)

 

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