久石譲、日本センチュリー交響楽団×九州交響楽団が奏でる「春の祭典」愛知特別公演 in 一宮


  2023年2月18日(土)15:00開演
一宮市民会館ホール

久石譲指揮/日本センチュリー交響楽団、九州交響楽団

久石譲/Metaphysica(交響曲第3番)
ストラヴィンスキー/バレエ音楽「春の祭典」
マルケス/ダンソン第2番

座席:S席 2階15列30番


久石譲が首席客演指揮者を務める日本センチュリー交響楽団と、九州交響楽団の合同演奏で「春の祭典」を指揮しました。久石譲は今年で72歳で、最後にマルケス「ダンソン」第2番を演奏する変わったプログラムです。

本公演は、前日の「日本センチュリー交響楽団第270回定期演奏会」(2023.2.17 ザ・シンフォニーホール)と同一プログラムで、できれば行きたかったのですが、平日は仕事が忙しくて断念。「大阪4オーケストラ活性化協議会 2022-2023 シーズンプログラム共同記者発表会」(2021.11.17)で、日本センチュリー交響楽団の望月正樹楽団長が「名古屋のほうでも演奏会を企画している」と説明していたので、期待して待っていました。てっきり愛知県芸術劇場かと思っていたら、一宮市民会館でした。土曜日なら聴きに行けるので、一宮まで行くことにしました。余談ですが、この日の愛知県芸術劇場では、高嶋ちさ子が2回公演を開催しました。

大阪公演の2日前には、福岡でも「九州交響楽団特別演奏会」(2023.2.16 アクロス福岡シンフォニーホール)が行なわれました。つまり、本公演は福岡→大阪→一宮と続いた千秋楽に当たります。九州交響楽団は二管編成で、今年創立70周年を迎えました。聴くのは嘉穂劇場第九 其ノ陸以来です。

本公演の主催は、株式会社Shadowとクラシック名古屋。株式会社Shadowは大阪府豊中市にあり、小田弦也(日本センチュリー交響楽団専務理事兼事務局次長、パシフィックフィルハーモニア東京マーケティングディレクター)が設立して代表取締役を務めています。今シーズンの日本センチュリー交響楽団は好調で、定期演奏会が軒並み完売。前日の大阪公演も1月13日に早くも完売しました。なお、本公演の1週間前には、「矢井田瞳 with 日本センチュリー交響楽団 プレミアムコンサート」(2023.2.11 豊中市立文化芸術センター大ホール)が開催されました。入場無料で、豊中市電子申込システムで申し込みましたが、残念ながら抽選の結果落選しました。

チケットは、クラシック名古屋のアイ・チケットwebで購入して、ファミリーマートで発券しました。一宮市民会館へのアクセスは、尾張一宮駅からは距離があり、i-バス(一宮市循環バス)に乗ると11分ほどで着きますが、1時間に1本しかないので、歩くことに。途中に一宮の由来となった真清田(ますみだ)神社があります。徒歩30分ほどで着きました。
1974年の開館で、外観がレンガ造りで重厚。かなり古くて、昭和感が半端ない。館内案内図で「ホワイエ」が「フォワイエ」になっていました。クロークはありません。駐車場が非常に広く、387台も駐車できます(しかも無料)。

一宮市民会館ホールの客席は1,588席。2階15列は15列目でなく、2階席中央の最前列です(両サイドのでっぱり席から連番で振られているため)。ステージとの距離は予想以上に近い。客の入りは3~4割で、2階席と1階席後方は空席が多い。広くないステージに、ところ狭しと配置されました。

プログラム1曲目は、久石譲作曲/Metaphysica(交響曲第3番)。プログラムに曲目解説も出演者名も載っていないのが不親切で残念ですが、久石譲がComposer in Residence and Music Partnerを務める新日本フィルハーモニー交響楽団の創立50周年委嘱作品で、2021年9月に久石自身が指揮して初演されました。「Metaphysica」は「メタフィジカ」と読み、ラテン語で「形而上学(=存在と知識を理解することについての哲学の一つ)」の意味で、音の運動性のみで構成する音楽を目指したようです。3つの楽章から成り、40分ほどの作品。マーラー「巨人」とほぼ同じ4管編成で、一緒に演奏されることを想定したとのこと(初演時は休憩後に「巨人」が演奏されました)。
舞台袖と脇花道からもメンバーが登場。九州交響楽団のTwitterに掲載されたメンバー配置図によると99名での演奏で、どちらの楽団の奏者かは見分けがつきません。コンサートマスターは、西本幸弘(九州交響楽団)。対向配置で、ホルンが雛壇を含めて下手隅の左上の一角を占めます。第1トランペット奏者の松居洋輔(九州交響楽団)が椅子の上に何かを置いていました。下手の脇花道を通って久石譲が登場。メガネはかけていません。自作でもスコアをめくりながら指揮しました。

反復する動機で交響曲を作曲しようとする挑戦的な作品で、ミニマル・ミュージックにジャンル分けされる作品でしょう。大編成のオーケストラが必要かは微妙です。
第1楽章「existence」は、旋律を担当する楽器が細く、伴奏の音符が細かい。スコア通り演奏しているのか分からないほど、リズムが複雑です。雛壇に置かれたドラムセットも活躍。盛り上がったところで突然休止。第2楽章「where are we going?」は、弦楽器によるエレジーからトゥッティに発展。第3楽章「substance」はチャイムやピアノが活躍。ヴィオラから第2ヴァイオリンと第1ヴァイオリンが上昇音型を繰り返します。

休憩後のプログラム2曲目は、ストラヴィンスキー作曲/バレエ音楽「春の祭典」。久石譲は2019年に東京交響楽団を指揮したライヴ録音がリリースされています。休憩中に後方の反響板を開けてティンパニをもう1セット搬入しました(転換の様子が日本センチュリー交響楽団のTwitterに動画で公開されました)。九州交響楽団のTwitterによると、105名での演奏。
序奏のファゴットはゆったり始まりますが、速めのテンポ。「春のきざし」は速い。バーバリスティックな表現は控えめで、細部の仕掛けは気にせず、淡々とハイスピードで進んでいきます。久石譲×日本センチュリー交響楽団 京都特別演奏会での快速テンポの「イタリア」を思い出しました。楽団が違うせいか、管楽器はパート内で音色や音量に凸凹ありますが、揃いすぎていないほうがこの曲にはふさわしい気がします。ただし、ホルンは音を外しやすい。「春のロンド」の練習番号49からは、1拍目のコントラバスと大太鼓を強調。雛壇の後ろに座っているホルン×2がワーグナーチューバに持ち替えました。久石の指揮は両腕の上下が基本で、バリエーションが少ない。
第2部の序奏は、管楽器の和音の面白さには興味がないようです。「いけにえの賛美」の前のティンパニ連打が速い。久石譲は拍通りに振って、たまに左手でキュー出し。「祖先の儀式」は遅めのテンポ。激しく腕を上下させて、速いテンポがストイックですが、オリジナルな表現が欲しい。最後の「いけにえの踊り」は少しアンサンブルが乱れました。ティンパニが大きすぎる。速いテンポで、手に汗握る表現でした。

プログラム3曲目は、マルケス作曲/ダンソン第2番ライプツィヒ ユース シンフォニー オーケストラ演奏会で聴きましたが、こんな大人数で演奏されることは少ないのではないでしょうか。ようやくメロディアスな作品です。ピアノをよく聴かせて、ギロやマラカスなどの打楽器を強調。ティンパニは本来は1セットですが、2セットで演奏。ヴァイオリンソロでテンポを落としました。久石譲も感情を込めた指揮。

拍手に応えてアンコール。久石譲作曲/My Neighbor Totoro。「となりのトトロ」の英訳で、コントラバスでトトロのメロディーが出ます。久石譲もオーケストラも久石の分かりやすい曲が一番イキイキしていて、二つのオーケストラとは思えないまとまった演奏でした。久石譲が手を振って退場。オーケストラ全員で一礼して、終演後は楽団員同士が労をねぎらいました。

一宮市民会館は100名を超えるオーケストラを演奏するホールとしては不向きで、色彩感が半減するような響きでした。ザ・シンフォニーホールとの差は歴然で、別の作品のように聴こえたかもしれません。やや空調の音が大きいのも気になりました。

 

一宮市民会館 広い駐車場 九州交響楽団のトラック ロビー ステージのモニター映像

(2023.3.19記)

 

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