久石譲×日本センチュリー交響楽団 京都特別演奏会


2021年9月20日(祝・月)15:00開演
京都コンサートホール大ホール

久石譲指揮/日本センチュリー交響楽団

メンデルスゾーン/交響曲第4番「イタリア」
久石譲/DA・MA・SHI・絵
久石譲/Symphonic Suite “Castle in the Sky”(交響組曲「天空の城ラピュタ」)

座席:S席 3階C2列19番



今年4月から久石譲が日本センチュリー交響楽団の首席客演指揮者に就任しました。久石が日本センチュリー交響楽団の前身の大阪センチュリー交響楽団を初めて指揮したのは2008年で意外に共演歴は長い。2021年3月に行われた次期首席客演指揮者就任記者会見で、久石は「新しい感覚を持つオーケストラという印象を持っている」「何回もやり直しながらアンサンブルを磨きたい」「自分の作品を演奏する、海外の現代作品を紹介する、古典の繰り返しではない新しいクラシックをやる」と抱負を語りました。「4オケの4大シンフォニー2021」(2021.4.17 フェスティバルホール)では、ベートーヴェン「交響曲第8番」を指揮しました。久石譲の指揮を聴くのは、久石譲コンサート2013 in festival hall「第九スペシャル」以来です。

チケットは、5月に100%の座席で販売されました。「センチュリー・ネットチケット」では定価での販売でしたが、京都コンサートホールのオンラインチケットでは、5%割引で購入できました。
緊急事態宣言が9月末まで延長されたことを受けて、京都府からのイベント開催制限(収容定員の半数)の要請により、9月12日でチケット販売は終了となりました。当日券の販売もありませんでした。

なお、本公演のプログラム2曲目は、久石譲作曲/mládí for Piano and Stringsの予定でしたが、都合により、久石譲作曲/DA・MA・SHI・絵に変更することが9月2日に発表されました。
ちなみに、同一プログラムで、9月17日(金)に「久石譲×日本センチュリー交響楽団 プレミアムコンサート」(長良川国際会議場メインホール)が予定されていましたが、岐阜県で緊急事態宣言が延長されたため中止されました。また、本公演前日の9月19日(日)には「久石譲×日本センチュリー交響楽団 姫路特別演奏会」が、アクリエひめじ大ホールで行われました。アクリエひめじ(姫路市文化コンベンションセンター)は今年9月に開館したばかりの新しいホールで、「アクリエひめじオープニングシリーズ」として開催されました。

京都府も緊急事態宣言が9月30日まで延長されましたが、3連休の最終日で、人出が増えました。第25回「京都の秋 音楽祭」(9月12日(日)〜11月23日(祝・火))が開催中ですが、本公演はラインナップに含まれていません。今年は25周年を記念して、例年より音楽祭の飾りつけを増やしているとのこと。25年分のポスターが1階のエントランスホールに展示されました。

団員がバラバラと入場して音出し。コントラバスを左に配置する対向配置 でした。コンサートマスターは松浦奈々。弦楽器と打楽器はマスクをつけて演奏しましたが、チャイコ3連投!熱狂コンチェルト−2021−と違って、白いマスクでした。なお、J:COMの特別番組収録のため、テレビカメラが入っていました。ネット情報によると、年末に放送予定のようです。客は6割ほどの入り。女性や若い客が多めです。

久石譲が登場。70歳ですが、軽やかな足取りです。プログラム1曲目は、メンデルスゾーン作曲/交響曲第4番「イタリア」。飯森範親の指揮で聴いたメンデルスゾーン生誕200年記念 ロマンティック・メンデルスゾーンでは改訂稿の演奏でしたが、今回はよく演奏される初演稿をもとにした演奏です。全体的にやや速めのテンポ。よく響くザ・シンフォニーホールで弾き慣れているからか、こじんまりした響きです。久石譲はスコアをめくりながら指揮棒を持って指揮。 腕を左右対称に動かします。つまり両腕の動きが同じです。指揮棒のテクニックは改善の余地ありでしょうか。
第1楽章の187小節はスコア通り繰り返しあり。後半はアッチェレランド気味に進みました。第2楽章もそんなに歌い込まず、やや速めテンポで淡々と進みました。第3楽章に続けて、第4楽章は速い。30小節からティンパニを強調しましたが、確かにスコアの指定はffです。オーケストラも速いテンポによくついていって、なかなかインパクトが強い演奏。ロックのようなノリですが、音はあまり客席に飛んできません。186小節からの弦楽器のアクセントをテヌート気味に長めに演奏。239小節からのフルートのメロディーが心に沁みました。

休憩後のプログラム2曲目は、久石譲作曲/DA・MA・SHI・絵。上述のように、当初の曲目から変更されました。プログラムの久石の解説によると、1985年に作曲され、2009年にオーケストラ用に編曲されたようです。タイトルは、だまし絵で有名なM.C.エッシャーから触発されて名付けたとのことですが、特定の絵ではなく、ロジカルでユーモアもある作風に共感したとのこと。
管楽器と打楽器が増員されました。前半のメンデルスゾーンよりも、自作のほうが生き生きとした響きで、久石の指揮もリラックスしています。5拍子で細かな音符のフレーズが重なっていきます。華やかさがあり、各楽器の聴かせどころも作ってあります。後半は打楽器も加わって盛り上がります。ミニマル・ミュージックと呼ばれるジャンルに属する音楽ですが、なかなかおもしろい作品で、もう一度聴きたいです。

プログラム3曲目は、久石譲作曲/Symphonic Suite “Castle in the Sky”(交響組曲「天空の城ラピュタ」)。1986年公開のスタジオジブリの映画「天空の城ラピュタ」の音楽で、映画のストーリーに沿って構成されているとのこと。スタジオジブリ交響作品化プロジェクトの第3弾として、2018年に完成したようです。
13曲からなりますが、休みなく続けて演奏されます。この映画がどういうストーリーだったか忘れてしまったうえに、曲名がすべて英語なので困ってしまいましたが、それでもどんなシーンかはイメージしやすい。すごくよく鳴るように作曲されていて、メンデルスゾーンとは明らかに違う響き方で、演奏の完成度も段違いでした。
「1.Doves and the Boy」はトランペットソロからはじまって金管楽器アンサンブルで演奏。「2.The Girl Who Fell from the Sky」は主題歌「君をのせて」のオーケストラ版。有名なメロディーで、歌詞(作詞:宮崎駿)が思い浮かびます。中盤はシンフォニックな音楽で、打楽器とティンパニで7人も必要です。一方で、チェレスタが活躍する繊細なシーンもありました。「12.Innocent」は、久石が指揮台を降りて、指揮台の右側に置かれた蓋(屋根)のないピアノで、「君をのせて」のメロディーを独奏。ピアノ奏者は打楽器パートにいましたが、やはりここは自分で弾きたいようです。次第にオーケストラが加わり、指揮台に戻って指揮。「13.The Eternal Tree of Life」の最後は、ジャンという一撃で締めくくりました。

カーテンコールでは、久石がソロ奏者やパートを立たせるという普通の指揮者が行なうパフォーマンス。拍手に応えてアンコールは、久石譲作曲/人生のメリーゴーランド(Merry-Go-Round)を演奏。2004年に公開された映画「ハウルの動く城」の1曲(歌詞はなし)で、この映画は観たことがないですが、聴いたことがある曲です。チェレスタとハープからはじまって、3拍子の優雅なワルツ。前日の姫路特別演奏会と同じアンコールだったようで、日本センチュリー交響楽団のTwitterでは、「アンコールは、明日の公演が終わるまで、しばし内緒とさせてくださいませ」と投稿されました。ネタバレにならなかったので、ありがたい。最後はオーケストラ全員で一礼。終演後は規制退場が行なわれました。

熱心なファンが多く詰めかけていました。拍手の音量が大きく、大成功と言えるでしょう。さすがの知名度です。また京都に来てほしいです。日本を代表する大作曲家がクラシック音楽やオーケストラに興味を持ってくれたことに感謝しなければなりません。欲を言えば、自作以外の完成度も高めてほしいです。

首席客演指揮者就任記念となる「日本センチュリー交響楽団第257回定期演奏会」は、9月24日(金)にザ・シンフォニーホールで開催されました。久石譲「Encounter for String Orchestra」とスメラ「チェロ協奏曲」に続いて、メインのベートーヴェン「交響曲第7番」は快速テンポの演奏だったようです。
なお、久石譲は、2004年から新日本フィル・ワールド・ドリーム・オーケストラの音楽監督を務めていますが、2020年9月から新日本フィルハーモニー交響楽団の「Composer in Residence and Music Partner」にも就任しました。本公演に先立つ「新日本フィルハーモニー交響楽団第637回定期演奏会」(2021.9.11 すみだトリフォニーホール、2021.9.12 サントリーホール)では、世界初演となる久石譲「Metaphysica(交響曲第3番)」(新日本フィル創立50周年委嘱作品)とマーラー「交響曲第1番」を指揮しました。現代音楽も積極的に取り上げる意向を示しており、今後どのような作品を指揮するか、選曲に期待しましょう。

なお、日本センチュリー交響楽団のクラウドファンディングで購入した「センチュリー指揮者陣の直筆サイン入り色紙コース(限定10名)」(3万円)が4月に届きました。色紙の上から、飯森範親(首席指揮者)、久石譲(首席客演指揮者)、秋山和慶(ミュージックアドバイザー)の3人のサインが書かれています。ちなみに、2020年10月からの約2ヶ月で、目標額1000万円に対して、1500万円を超える金額が集まりました。

京都コンサートホール 京都コンサートホール 京都コンサートホール エントランスホール 日本センチュリー交響楽団の指揮者陣の直筆サイン入り色紙

(2021.10.4記)

京都市交響楽団×石丸幹二 音楽と詩(ことば) メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」 Osaka Shion Wind Orchestra第138回定期演奏会