大阪フィルハーモニー交響楽団第560回定期演奏会


   
   
2022年7月23日(土)15:00開演
フェスティバルホール

ユベール・スダーン指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団

シューマン(マーラー編)/「マンフレッド」序曲
シューマン(マーラー編)/交響曲第1番「春」
ブラームス(シェーンベルク編)/ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)

座席:A席 2階1列48番


ひさびさに大阪フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会に行きました。第520回定期演奏会以来、4年ぶりです。指揮は、ユベール・スダーン。2日公演の2日目です。

大阪フィルハーモニー交響楽団は今年で創立75周年を迎えました。今年度の定期演奏会の指揮者は、音楽監督の尾高忠明以外は、全員が外国人という異色のラインナップですが、この意図について福山修事務局長は「大阪4オーケストラ活性化協議会 2022−2023 シーズンプログラム共同記者発表会」(2021.11.17)で、「コロナ禍で来日がかなわなかった外国人指揮者に、できるだけ早く来ていただきたかった」と説明しました。ユベール・スダーンも、一昨年7月の「第540回定期演奏会」(2020.7.22&23)を指揮する予定でしたが、来日できませんでした(代役で飯守泰次郎が指揮)。大阪フィルハーモニー交響楽団のTwitter(@Osaka_phil)によると、スダーンと大阪フィルは今回が6度目の共演とのこと。

ユベール・スダーンについて、音楽監督の尾高忠明は、上記の記者発表会で「スダーンとはすごく仲がいい。いい音楽家で、オーケストラのことを本当によく考えてくれる。彼がまた振ってくれるのはすごくうれしい」と絶賛していました。スダーンは、オーケストラ・アンサンブル金沢プリンシパル・ゲストコンダクター(首席客演指揮者)と東京交響楽団桂冠指揮者を務めています。スダーンの指揮で聴くのは、東京交響楽団第580回定期演奏会以来で、約12年ぶりでした。

今年度の定期演奏会の1回券は、「1ヶ月前なら外国人指揮者が入国できるかどうかはっきりするので、変更や払い戻しがないように」という理由で、発売日は1ヶ月前に設定され、6月21日に発売されました。フェスティバルホール チケットセンターでも購入できましたが、あまりいい席がなく、 大阪フィル・チケットセンターで購入しました。ただし、ネット販売はなく、電話しなければいけないのは不便です。当日券も発売されました。

新型コロナウイルス感染症は第7波に突入して、この日の大阪府の新規感染者数は、過去最多の2万2501人。全国では20万975人で、初めて20万人を超えて、4日連続で過去最多を更新しました。オミクロン株のBA.5は感染力が強いようで、感染者数が急激に増えました。

入場時にはスタッフがチケットをもぎってくれて、プログラムも渡してくれました。2階席の少し右側の席ですが、3階席よりもステージに近くて、手すりも邪魔にならないので、いい席です。プログラムに掲載された「正会員(法人の部)」(年間20万円)の会員数が多くてびっくり。大阪にある一流企業はほとんど入会しているのではないでしょうか。コロナ禍前は、メインホワイエで「プレトーク・サロン」が開催されました(第520回定期演奏会)が、現在は開催されていません。客の入りは8割くらい。

前半は、マーラーが編曲したシューマンの作品が2曲。マーラー編を取り上げた理由はプログラムに書かれてあり、スダーンは「管弦楽の扱いが特に得意ではなかったシューマンを指揮するのには不安があり、長い間指揮しなかったが、マーラー版を知ってからは大きな支えとなった。マーラーはシューマン読みの天才」と讃えています。

プログラム1曲目は、シューマン作曲(マーラー編)/「マンフレッド」序曲。団員入場時には拍手はありませんでしたが、コンサートマスターの崔文洙(ソロ・コンサートマスター)入場時に大きな拍手。隣にはコンサートマスターの須山暢大。1曲目から大編成です。弦楽器奏者がマスクするかどうかは自由のようです。
スダーンは指揮台も指揮棒もなし。譜面台のスコアはめくりながら、腕を左右にくねらせるような指揮です。息を吸う など激しい指揮でした。演奏はスピード感がありましたが、ホールの残響が多いのが、玉に瑕。あまり金管楽器は鳴らしません。わざわざこの曲だけヴァイオリンの後ろにバロックティンパニで演奏しました。たしかにマーラーの編曲はオーケストレーションが強化されていて、聴きやすい。

プログラム2曲目は、シューマン作曲(マーラー編)/交響曲第1番「春」。演奏会では初めて聴きます。上記の「大阪4オケ共同記者発表会」で明らかになったことですが、今年は人気のようで、大阪の4つのオーケストラすべてがこの作品を演奏します。すなわち、大阪フィル以外は、関西フィルハーモニー管弦楽団が藤岡幸夫(2022.4.16)、大阪交響楽団が?橋直史(2022.9.2)、日本センチュリー交響楽団が久石譲(2022.9.24)で、「春」ですが、夏や秋にも演奏されます(笑)。マーラー編で演奏するのは大阪フィルのみのようです。
2管編成ですが、管楽器に比べて弦楽器が多い。速めのテンポで、ヴァイオリンのメロディーが軽やか。東京交響楽団川崎プレ定期演奏会第1回「音楽監督就任記念 ユベール・スダーンへの期待」での快速テンポの「第九」を思い出しました。大阪フィルらしくない緻密さが感じられて、大きな室内楽といった音楽づくり。金管楽器は抑えめでスマートですが、堂々とした演奏で、マーラー編を取り上げて正解です。第1楽章の終盤の弦楽器のメロディーで、スダーンは左右に動き回りましたが、指揮台があったら落ちてます。第2楽章から休みなく第3楽章へ。第4楽章は、ブラームス「交響曲第2番」第4楽章に似ているところがありますね。この曲が好きになりました。

休憩後のプログラム3曲目は、ブラームス作曲(シェーンベルク編)/ピアノ四重奏曲第1番(管弦楽版)。スダーンは「この曲を演奏できるオーケストラは多くはありません。大編成である上に、個々の奏者が高い水準にあることが要求されるからですが、大阪フィルはまさにこの曲にふさわしいオーケストラだと長年の経験から確信しています」と語っています。
速めのテンポでよく響きます。大フィルのイメージが変わるほどの名演で、もう一度聴きたいです。京都市交響楽団第555回定期演奏会よりもスケール感がありますが、オーケストラ作品として捉えていて、細部やシェーンベルクの斬新な響きは強調しません。スマートな響きですが、フェスティバルホールでは響きが重くなるので、ザ・シンフォニーホールで聴きたかった気がします。第3楽章のAnimato(653小節)からの打楽器はかわいらしかったですが、679小節からは本格的に演奏。第4楽章は、速いテンポでスリリング。985小節の最後は長く伸ばしました(スコアにもフェルマータ)。986小節からの第2主題はテンポを落としてしっかり歌わせて、メリハリをつけます。1011小節からホルンを強調(スコアはff)。1126小節からのヴァイオリンソロは、最初の音符をグリッサンド気味に始めました。Molto presto(1176小節)からは、抑え気味だった打楽器が炸裂。

演奏後に禁止されている「ブラボー」を叫ぶ客がいましたが、興奮した気持ちは分かります(ブラボーを聞いたのが本当に久しぶりでした)。スダーンは最初にシロフォン(木琴)を担当した打楽器奏者を立たせました。速いテンポをよくがんばりました。カーテンコールの最後に、スダーンは客席に両手で投げキスをしました。

大阪フィルは大味なイメージがありましたが、緻密さを身につけたようです。小泉和裕が指揮する京都特別演奏会(2022.10.30)も楽しみです。


(2022.7.31記)

 

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