京都フィルハーモニー室内合奏団創立50周年記念第246回定期公演A「北の国から」


2022年6月11日(土)14:00開演
京都コンサートホールアンサンブルホールムラタ

栁澤寿男指揮/京都フィルハーモニー室内合奏団
岡田将(ピアノ)、山崎恒太郎(トランペット)

グリーグ/ホルベルク組曲
ショスタコーヴィチ/ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー/弦楽セレナード

座席:S席 7列20番



京都フィルハーモニー室内合奏団の定期演奏会に久しぶりに行きました。第185回定期公演「ドビュッシー生誕150年とフランス音楽」以来、約10年ぶりです。
本公演は演奏曲目がよかったので聴きに行きました。「北の国から」と題して、ノルウェー出身のグリーグと、ロシア出身のショスタコーヴィチとチャイコフスキーが選曲されました。

京都フィルハーモニー室内合奏団は1972年に結成されて、今年で創立50周年を迎えました。定期公演は年10公演を開催しています。令和4年度の「文化芸術活性化パートナーシップ事業」のパートナー団体として、京都市西文化会館ウエスティを練習場所としています。映画「ミュジコフィリア」に楽曲を提供した宮ノ原綾音が、事務局でライブラリアンを担当しています。

指揮は、栁澤寿男(やなぎさわ としお)。2020年4月から京都フィルハーモニー室内合奏団のミュージックパートナーに就任しました。バルカン室内管弦楽団音楽監督、コソボフィルハーモニー交響楽団首席指揮者、ベオグラード・シンフォニエッタ名誉首席指揮者、東北ユースオーケストラ指揮者、ビルボードクラシックス指揮者を務め、海外を活動の拠点にしています。今年で50歳です。バルカン室内管弦楽団を設立した経験から、映画「クレッシェンド 音楽の架け橋」のパンフレットに寄稿しました。

チケットは、京都フィルハーモニー室内合奏団のメルマガ会員を対象に先行発売もありましたが、京都コンサートホールで購入すると5%割引になります。この日の京都府の新型コロナウイルス感染症の新規感染者数は269人。前日の6月10日からは、約2年ぶりに外国人観光客の受け入れが始まりました。

座席は少し前の席ですが、けっこういい席でした。客の年齢層が高い。有名な作品が演奏されるのに、客の入りは4割ほどでちょっと少ない。
本公演のメンバーは、第1ヴァイオリン3、第2ヴァイオリン3、チェロ3、ヴィオラ3、コントラバス2の14名でしたが、このうち、正規メンバーは第1ヴァイオリン2、第2ヴァイオリン1、チェロ1、ヴィオラ1、コントラバス1の6名なので、なんと半数以上の8名がエキストラでした。コンサートマスターの角田博之が座ったままチューニング。全員マスクなしで演奏。
プログラム1曲目は、グリーグ作曲/ホルベルク組曲。栁澤寿男は低めの指揮台で、全曲指揮棒なしで指揮。ウエスティ音暦おとごよみ ~弦楽のしらべ~で聴きましたが、指揮者がいると表情が出ます。奏者によって凹凸がなく、アンサンブルはよくまとまっています。音量は大きくありませんが、一体感があります。第1曲「プレリュード」は、躍動感がありました。栁澤も指揮も小刻みに動かしました。第4曲「アリア」はよく歌わせました。第5曲「リゴドン」は繊細で丁寧な音楽づくり。

プログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/ピアノ協奏曲第1番。ピアノ独奏は、岡田将(まさる)。1999年に日本人として初めてリスト国際ピアノコンクールで優勝しました。神戸女学院音楽学部で准教授を務めています。トランペット独奏は、京都フィルハーモニー室内合奏団メンバーの山崎恒太郎。指揮台の前に搬入されたピアノの屋根が上げられたので、栁澤は顔しか見えなくなりました。トランペット独奏は第2ヴァイオリンの左後方で、演奏台の上で演奏。
この作品ではもともと管楽器と打楽器は使われませんが、こんなに小さな編成でも演奏できるとは驚きです。ただし弦楽器が少ないので、ピアノの比重が大きくなり、音量はアンバランス。岡田のピアノは、つややかで明るく、ショパンが似合いそう。第3楽章から切れ目なく続く第4楽章はピアノがテンポをリード。ラストもスリリング で、すごい集中力で弾ききりました。山崎のトランペットは、十六分音符がモサモサと聴こえたので、音符の粒がもっとはっきり聴こえたほうがいいです。カーテンコールでは岡田のアンコールがなくて残念。また他の曲も聴きたいです。

休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/弦楽セレナード。栁澤は両腕を胸のあたりに構えて、空気をすくうように腕ごと動かすような指揮。地味ですが、楽譜の動きが見えるような指揮でした。息を吸う音や鼻歌やうなり声が聴こえました。演奏は、音程やアーティキュレーションは揃っていますが、第1ヴァイオリンの音色がキンキンとやや金属的で、もう少し温かさや柔らかさが欲しいです。第1楽章は推進力が強め。145小節からのチェロと第2ヴァイオリンの掛け合いなど小編成だから気づく聴きどころもありました。第3楽章から間を空けずに、第4楽章は速め。カーテンコールの最後は、全員で一礼しました。15:35に終演。

栁澤はカーテンコールでもあまり目立ちたがりません。上述したように室内管弦楽団など中小編成を指揮する機会が多いようですが、 もっと大きなオーケストラの指揮も聴いてみたいです。

なお、パンフレットに会員募集が掲載されていました。私は「メールマガジン会員」で、1,128名いるようですが、「サンクスフラット会員」(定期公演Aに1回ご招待)が年会費5,000円なのはお得です。次年度のプログラムがよければ入会を検討したいです。

(2022.7.8記)


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