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2021年9月26日(日)14:00開演
ザ・シンフォニーホール
齊藤一郎指揮/Osaka Shion Wind Orchestra
伊藤康英/煌夜ー祭の幻想 座席:S席 2階BB列18番 |
本公演の前半は伊藤康英の作品。伊藤康英は、洗足学園音楽大学教授を務めています。また、2018年から創価大学パイオニア吹奏楽団のミュージックアドバイザーに就任し、今年も全日本吹奏楽コンクールへの出場を決めるなど、指揮者としても活躍しています。伊藤康英のTwitterによると、数日前から本公演のリハーサルに立ち会ったようです。
オーボエのAでチューニング。齋藤一郎が速足で登場。長身です。全曲指揮棒なしで指揮しました。
プログラム1曲目は、伊藤康英作曲/煌夜(こうや)ー祭の幻想。2016年の作曲で、「吹奏楽のための抒情的「祭」」(1986年)と同じく、海上自衛隊大湊音楽隊の委嘱作品です。序奏に続いて、津軽じょんがら節曲弾六段、津軽あいや節、ホーハイ節、ねぶた祭の4つの民謡・俗謡が使われます。
冒頭から、ティンパニとねぶた太鼓がソロで連打。ねぶた太鼓は舞台下手の隅に置かれていましたが、大きさがバカデカイ。伊藤康英のTwitterに「今日のねぶた太鼓はこんなに大きい!」と両手を広げた写真が掲載されましたが、これだけ大きいのでどうやってステージに搬入したか気になります。長いバチで叩かれます。多様な打楽器が使われて、ティンパニを入れて8人で演奏。ピヨーンという音がするフレクサトーンも登場します。
演奏は、和音を鮮やかに響かせて、スッキリしたサウンド。色彩感もあります。終盤は、ねぶた祭のリズムが続くなか、ホルンのトリルが冴えて、高揚感がすばらしい 。齋藤は長い両腕をまっすぐ突き出すように指揮。指揮台の上でジャンプも決まりました。
プログラム2曲目は、伊藤康英作曲/トロンボーンと吹奏楽のためのソナタ。トロンボーン独奏は、玉木優。2019年に玉木の委嘱で作曲された「トロンボーン・ソナタ」の吹奏楽伴奏版で、本日が初演です。完成したのは意外に遅く、伊藤康英のTwitterによると8月17日で、本番の約1ヶ月前です。プログラムの伊藤康英による解説によると、3楽章からなりますが、切れ目なく演奏されます。
トロンボーン独奏の玉木優は、東京佼成ウインドオーケストラなどに在籍した後、現在はソロで活動しています。島根県で開催されている「ふくたまフェスティバル」の音楽監督を務めています。玉木は指揮台の左側ではなく右側で立って演奏。アーティスト写真ではメガネをかけていますが、かけていませんでした。
トロンボーン独奏のパートは、意外に高音が出てきます。伴奏の人数は少し減りましたが、もともとピアノ伴奏で作曲されたせいか、伴奏が目立って音量も大きい。伴奏にもトロンボーンが3人いて、トロンボーン独奏とのアンサンブルもあります。メロディーは親しみやすくありませんが、中間部にトロンボーン独奏が歌えるメロディーが現れます。後半は付点音符が多く、リズムやスライドポジションの正確さが求められます。
演奏後は場内が明るくなり、客席にいた伊藤康英が立ち上がったようですが、2階席からは見えませんでした。
拍手に応えて、玉木がアンコール。丸イスが用意されて、座って演奏。レナード・バーンスタイン作曲/ミッピー2世の為のエレジーを、右足を踏みながらリズムを鳴らして演奏しました。
プログラム3曲目は、伊藤康英作曲/吹奏楽のための交響詩「ぐるりよざ」。1990年の作曲で、昨年に音楽之友社からポケットスコアが出版されました。プログラムの曲目解説によると、当初指揮する予定だったボストックの依頼で、第2オーボエ、イングリッシュホルン、第2ファゴット、コントラファゴット、コントラバスクラリネット、ハープのパートが追加されましたが、これらのパートの楽譜は出版されず、本公演限りとのこと。
龍笛の中原詳人(よしひと)が齊藤と一緒に登場。烏帽子をかぶって平安装束の着物を着ています。下手の後方に座りました。なお、中原詳人は、第112回定期演奏会(2015.11.11)でも、秋山和慶の指揮で龍笛を演奏し、CD化されました。初演の独奏者ではありません。
第1楽章「祈り」の冒頭は、すごく小さい音量で始まりましたが、ニコニコ生放送「大井剛史のTalk Live! with composer」で、伊藤康英がpppの音量を極力落としてほしいと解説していたので、伊藤康英の指導があったでしょうか。11小節からの男声合唱はありませんでしたが、プログラムに「飛沫感染を防ぐため、歌唱はせず、楽器のみでの演奏とさせていただきます」と書かれていました。強奏では齋藤は「大」の字になって指揮しました。シロフォンの色彩感もいい。最後の185小節からの打楽器は、ドラ(タムタム)が消えるのを待ってから演奏。 休みなく、第2楽章「唄」へ。後ろに座っていた中原が近くまで歩いてきて、立って龍笛を演奏。けっこう音がかすれたり裏返っていたのが残念でしたが、ピッコロで演奏するよりも風情があります。第3楽章「祭り」は、フルートなど木管楽器のアンサンブルが聴きごたえがありました。
演奏が終わると、伊藤が客席からステージへ。齋藤がスコアの表紙を客席に見せましたが、伊藤にサインしてもらったようです。伊藤と齋藤が握手。
休憩後の後半は真島俊夫の作品。残念ながら2016年に67歳で亡くなりました。今回演奏する3曲、つまり作曲された順に「三つのジャポニスム」「鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺」「富士山ー北斎の版画に触発されてー」は、真島俊夫の「日本三部作」と称されることもあるようで、ボストックは指揮を楽しみにしていたとのこと。
プログラム4曲目は、真島俊夫作曲/鳳凰が舞う〜印象、京都 石庭 金閣寺は、2005年の作曲。川口市・アンサンブルリベルテ吹奏楽団の委嘱で、2006年のフランスのクー・ド・ヴァン国際交響吹奏楽作曲コンクールでグランプリを受賞しました。打楽器がなんと11人も必要で、鹿威し(Bamboo Block)や竹鳴子(Bamboo Chime=吊るした竹を木槌で叩く)など日本らしい楽器が登場します。中間部はにぎやか。齋藤は腕を上下に回転しながら大ジャンプ。ラストの追い込みも決まりました。
プログラム5曲目は、真島俊夫作曲/富士山ー北斎の版画に触発されてーは、2014年の作曲。相模原市民吹奏楽団の委嘱です。「煌夜ー祭の幻想」とは違う小さな和太鼓(締太鼓)が叩かれます。ティンパニ、大太鼓、トムトムの一撃はパンチのような指揮。打楽器を聴かせてパワフルな演奏でした。
プログラム6曲目は、真島俊夫作曲/三つのジャポニスムは、2001年の作品。東京佼成ウインドオーケストラが委嘱し、当時常任指揮者のダグラス・ボストックが初演を指揮しました。京都市立芸術大学 芸大祭2017「弾丸はチョコレイト」の「芸祭ブラス」でも「コンポーザーズ・エディション」が演奏されましたが、全曲を聴くのは初めてです。「?.鶴が舞う」は、低音が力強い。「?.雪の川」に続いて、「?.祭り」はテンポが速い。齋藤はステップを踏んだり踊ったり。ラストはねぶた祭りのリズムが現れ、よく鳴りましたが、音量過多でちょっとうるさい。
拍手に応えてアンコール。齋藤が「伊藤先生のデビュー作は、叙情的「祭」ということになっているが、それより前にすばらしいマーチがある。オン・ザ・マーチ、聞いてください」と話し、伊藤康英作曲/オン・ザ・マーチを演奏。伊藤康英が静岡県立浜松北高校の3年生だった1978年に、全日本吹奏楽コンクールの課題曲に応募して落選した作品です。速いテンポですが、途中で遅い部分があったり(齋藤はすごく遅くして演奏)、高校生が作曲したとは思えないほどユニークで、多様な表情がありますが、吹奏楽部の顧問の先生が指揮するには難しすぎたから落選したのでしょうか。終演後は規制退場が行なわれました。
伊藤康英と真島俊夫の作品をじっくり堪能できました。真島俊夫よりも伊藤康英のほうが私の性に合うようです。伊藤には、他にも管楽器のためのソナタ(1996年度全日本吹奏楽コンクール課題曲?)、木星のファンタジー(吹奏楽版)(2004年)、交響的カンタータ「展覧会の絵」(2005年)、ピアノ・コンチェルティーノ(2008年)など、聴きたい作品がたくさんあります。
指揮者が齊藤一郎に変更になりましたが、ボストックには気の毒ですが、むしろ齋藤の指揮が楽しめてよかったと思えるほどの出来栄えでした。齋藤はもっと評価されていいですし、今後も注目したいです。すばやい動きでスピード感を求める指揮で、演奏もシャープで切れ味がいい。強奏で木管が埋もれがちなのが残念。お客さんが演奏後にすぐに拍手せず、余韻を楽しめたのがよかったです。