久石譲コンサート2013 in festival hall「第九スペシャル」


   
      
2013年12月22日(日)17:00開演
フェスティバルホール

久石譲指揮/日本センチュリー交響楽団
土橋薫(オルガン)、千代正行(ギター)、都丸智栄(アコーディオン)、和智秀樹(バラライカ、マンドリン)
林正子(ソプラノ)、谷口睦美(メゾ・ソプラノ)、村上敏明(テノール)、妻屋秀和(バス)
大阪センチュリー合唱団、大阪音楽大学合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団

久石譲/「Orbis」〜混声合唱、オルガンとオーケストラのための
久石譲/バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」小組曲
久石譲/「かぐや姫の物語」より「飛翔」
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」

座席:BOX席 1階BOX-D列8番


作曲家の久石譲が第九を指揮しました。前半には今年公開された映画音楽を中心とした自作を指揮するおまけつきです。13日(金)には同一プログラムを読売日本交響楽団を指揮してNHKホールでも演奏されました。日本センチュリー交響楽団を聴くのは大阪センチュリー交響楽団時代のメンデルスゾーン生誕200年記念 ロマンティック・メンデルスゾーン以来でした。2014年4月からは飯森範親が日本センチュリー交響楽団常任指揮者に就任します。
新しいフェスティバルホールで聴くのは熊川哲也Kバレエカンパニー「ベートーヴェン 第九」以来2回目ですが、今回はステージで演奏するオーケストラを初めて聴きます。
チケットはフェスティバルホールオンライン会員を対象にインターネット先行販売がありました。フェスティバルホールチケットセンターで公演当日に引き取りできるのでとても便利です。今回は奮発してBOX席を購入。ステージからはけっこう近い。ステージは反響板が使用されましたが、緞帳幕はありませんでした。開演前の予ベルは小鳥のさえずりが流れます。チケットは完売御礼でした。

プログラム1曲目は、久石譲作曲/「Orbis」〜混声合唱、オルガンとオーケストラのための。混声合唱団がステージ後方に5列で並びました。合唱は大阪センチュリー合唱団、大阪音楽大学合唱団、ザ・カレッジ・オペラハウス合唱団という3団体が参加して総勢150人を超える人数でした。オーケストラは第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける対向配置。日本センチュリー交響楽団は二管編成ですが、第1ヴァイオリンは16名、第2ヴァイオリンも12名いました。実に3割近くがエキストラということでしょう。
久石がプログラムに寄せた解説によると、「Orbis」とはラテン語で「輪」や「繋がり」という意味とのこと。2007年の「サントリー1万人の第九」の第25回記念序曲として作曲されたとのこと。曲想がよく変化する作品で、冒頭は合唱が「Orbis」を繰り返します。その後、速いテンポでオルガンソロ。オルガンはテューバの隣で演奏。指揮台の左右に置かれた小さなスピーカーや天井のスピーカーから音を流していたようです。オーケストラの部分は変拍子が続いて演奏しにくそう。久石譲は両足を軽く広げて下半身はほぼ固定。指揮は小ぶりで、シャープな動きではありません。

プログラム2曲目は、久石譲作曲/バラライカ、バヤン、ギターと小オーケストラのための「風立ちぬ」小組曲。2013年7月に公開された映画「風立ちぬ」(宮崎駿監督)のサウンドトラックからの抜粋です。タイトルに「小オーケストラ」とありますが、オーケストラは中規模編成でした。今回はバヤン(ロシアのアコーディオン)の代わりにアコーディオンで演奏。指揮台の正面に向かって左から、アコーディオン(都丸智栄)、バラライカ/マンドリン(和智秀樹)、ギター(千代正行)が座りました。バラライカのソロから始まって3人で演奏。休みなく続けて演奏されました。映画が懐かしく感じられました。バラライカの和智は中盤で少しだけマンドリンを演奏。残念だったのは、久石の背中でバラライカもマンドリンも見えなかったこと。久石はこの曲は指揮棒なしで指揮。ぬめっとした動きでスピード感がない。ちなみに、映画では久石譲が読売日本交響楽団を指揮した演奏が使われました。ソリストも同じなのかは分かりません。

プログラム3曲目は、久石譲作曲/「かぐや姫の物語」より「飛翔」。2013年12月から公開中の映画「かぐや姫の物語」(高畑勲監督)からの1曲です。映画で言うと中盤で、かぐや姫が若かったころを回想するシーンでしょうか。月からのお迎えが演奏する音楽ではありません。テーマがフルートソロで演奏されます。続くヴァイオリンのメロディーもいい。久石ワールド全開。名曲です。久石はこの曲も指揮棒なしで指揮。ちなみに、映画では久石譲が東京交響楽団を指揮した演奏が使われました。

休憩後のプログラム4曲目は、ベートーヴェン作曲/交響曲第9番「合唱付き」。プログラムに久石は「僕の曲より「第九」なら振りたい」というメッセージを寄せていて、第九の選曲は久石の希望だったようです。合唱団がふたたび登場。独唱4名は久石と同時に登場し、合唱団の前に座りました。
演奏は、久石の指揮に問題あり。ふたたび指揮棒を持っての指揮でしたが、アクションがぬるくて鈍い。ほとんど正面を向いて指揮して、両腕の動きも左右対称で同じ動き。各楽器のキュー出しなどもなし。一本調子で変化に乏しく、パッセージの区切りが不明。指揮している姿から「こういう演奏にしたい」というメッセージは感じ取れませんでした。オーケストラをリードするような指揮ではなく、逆に指揮者が演奏に合わせているようでした。指揮者が本業でないので仕方ないのかもしれませんが、指揮の技術は音大生以下でしょう。オーケストラや合唱団もタイミングを図り損ねているようで、アインザッツが合わない部分がありました。フェスティバルホールはステージが左右に広いので、ずれているのが余計に目立ちました。演奏者は稀な経験をされたのではないでしょうか。
演奏面でも「久石譲が作曲家の視点で「第九」を分析、再構築」という触れ込みだったので、久石のオリジナル解釈による刺激的な演奏を予想していましたが、期待外れ。細部のデフォルメはなく、特定の楽器を浮かび上がらせることもありませんでした。何を聴かせたいのか分かりませんでした。
第1楽章は速めのテンポ。第2楽章のトリオは律儀に4拍で振りました。第3楽章は99小節以降速めのテンポ。第4楽章はバスが歌う234小節付近の指揮が怪しくひやひやしました。合唱団が入るとテンポアップ。合唱団の音量は十分でした。

多くのソリストが登場した贅沢な演奏会でした。来場者を見ていると、第九よりもジブリ音楽を聴きに来た人も一定数おられたようです。久石譲は2010年から「JOE HISAISHI CLASSICS」シリーズのCDをこれまでに4枚リリースしています。東京フィルハーモニー交響楽団を指揮した「ドヴォルザーク/新世界より」「シューベルト/未完成」「ブラームス/交響曲第1番」「モーツァルト/交響曲第40番」「ベートーヴェン/運命」「ベートーヴェン/交響曲第7番」、また新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮した「ロッシーニ/ウィリアム・テル序曲」「ラヴェル/亡き王女のためのパヴァーヌ」「チャイコフスキー/くるみ割り人形組曲」「ストラヴィンスキー/火の鳥」が発売されました。「第九」はこれらの集大成とも言えますが、もっとおもしろい演奏を期待していただけにとても残念。
フェスティバルホールは響きがもわっとするようです。ザ・シンフォニーホールのほうが私好みの響きです。

(2013.12.27記)


フェスティバルホール2階エントランス フェスティバルイルミネーション(中之島フェスティバルタワー)



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