京都市交響楽団×石丸幹二 音楽と詩(ことば) メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」


2021年9月5日(日)14:30開演
ロームシアター京都メインホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
石丸幹二(歌、語り)、鈴木玲奈(歌、ソプラノ)、高野百合絵(歌、メゾソプラノ)
京響コーラス(女声合唱)

足本憲治/組曲 日本の歌 ~郷愁・秋~ 詩人と音楽
メンデルスゾーン/劇付随音楽「夏の夜の夢」(朗読付き)

座席:S席 1階15列23番



石丸幹二が朗読を務めるメンデルスゾーン「夏の夜の夢」の演奏会に行きました。もともとは「京都市交響楽団スプリング・コンサート」(2020.4.12 京都コンサートホール大ホール)で演奏されるはずでしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で中止となりました。同じメンバーで1年半後の上演となります。ただし、前半の曲目は、ビゼー「アルルの女」組曲セレクションから、足本憲治「組曲 日本の歌」~郷愁・秋~ 詩人と音楽に変更されました。曲目を変えたのは、独唱者の出番を増やすためでしょうか。

チケットは、6月5日から、フレンズ会員、Club会員、京響友の会会員を対象に、先行販売が始まりましたが、いい席がなかったので見送ったところ、6月8日からの追加販売で購入しました。また、カーテンコール(https://curtaincall.media/)でライブ配信も行なわれ、オンライン配信チケット(3,000円)も販売されました。生配信に加えて、1週間見逃し配信がされました。

石丸幹二は56歳。劇団四季に1990年から2007年まで在籍しました。その後は、2017年からテレビ朝日「題名のない音楽会」の6代目の司会を務めるなど、マルチな活躍を見せています。石丸を観るのは、「兵士の物語」言葉と音楽のシリーズによる三重奏版以来でした。石丸は、小学校で鼓笛隊、中学校で吹奏楽部、高校ではチェロを学び、東京音楽大学ではサックスを専攻(中退)して、東京芸術大学声楽科を卒業した多彩な経歴を持っています。まだ未婚なのもびっくり。

京都府には8月20日から4度目の緊急事態宣言が発令中で、先週開催される予定の「日本フィル夏休みコンサート2021」は中止になってしまいましたが、本公演は予定通り開催されました。当日券も発売されました。ホール入口で消毒して検温、チケットは自分でもぎって、プログラムも自分で取ります。

ロームシアター京都の1階席は初めてでしたが、視覚的にいい席でした。客は8割くらいの入り。石丸幹二のファンと思われる女性が多い。オンライン配信用のテレビカメラが何か所か設置されていました。本公演の主催に京都新聞が含まれていて、8月27日と9月2日の京都新聞の朝刊の特集記事のカラーコピーが封入されました。

ステージ後方に合唱団のスペースを確保するために、管楽器が左右に別れて配置されました。木管楽器とホルンは下手側、トランペット、トロンボーン、テューバが上手側です。コンサートマスターは泉原隆志。

第1部は、足本憲治作-編曲/組曲 日本の歌 ~郷愁・秋~ 詩人と音楽。足本憲治は、国立音楽大学の演奏・創作学科作曲専修の准教授を務めています。タイトルが示すように、秋にちなんだ日本の歌が6曲と、序曲と間奏曲2曲で構成されます。ユニークな作品ですが、ほとんど演奏されません。足本憲治のホームページにも記載がないので、いつの作曲か分かりません。もしかしたら新曲でしょうか。

序曲「はじまり」は、「虫のこえ」などのメロディーがオーケストラのみで演奏。澄んだ音色で軽やか。
鈴木玲奈が白いドレスで登場。けっこう美人です。指揮台の右にあるスタンドマイクの前で歌います。はじめに“痛む”秋「初恋」(曲:越谷達之助 詩:石川啄木)。歌い終わると、1曲ごとに拍手が起こり、広上も指揮台から拍手。 “沁みる”秋「落葉松」(曲:小林秀雄 詩:野上彰)を歌い終わると、鈴木は退場。
間奏曲「秋のたぬき」は、オーケストラのみの演奏。打楽器アンサンブルからはじまり、シンフォニックで表情豊か。「あんたがたどこさ」などが速いテンポで使われています。変拍子もあり、広上の指揮が見ごたえある指揮で、まさに真骨頂。演奏が終わると、オーケストラを起立させました。オペラみたいです。
高野百合絵が赤いドレスで登場。指揮台右のスタンドマイクの前で歌います。“ふれる”秋「ちいさい秋みつけた」(曲:中田喜直 詩:サトウハチロー)は名曲ですね。“染める”秋「紅葉」(曲:岡野貞一 詩:高野辰之)も有名ですが、ヴィブラートが多い歌い方で、歌詞は不明瞭でした。
高野が退場して、間奏曲「夕焼けの家路」は、またオーケストラだけで演奏。「夕焼け小焼け」がなつかしい。実家のマンションのスピーカーから、夕方5時に流れていたことを思い出しました。

いよいよ石丸幹二が登場。指揮台の左で、ハンドマイクを持って歌います。“馳せる”秋「曼珠沙華」(曲:山田耕作 詩:北原白秋)は、「ひがんばな」と読みます。「GONSHAN(ごんしゃん)」など歌詞がユニーク。石丸の声は、明るく若い声で聴きやすい。歌詞がすごくはっきり聴きとれて、さすが元ミュージカル俳優です。
“溶ける”秋「赤とんぼ」(曲:山田耕作 詩:三木露風) は、しみじみしました。
広上淳一は譜面台にかぶさるように前かがみになって、音量をコントロールしました。なかなかいい作品だったので、また聴きたいです。秋だけでなく、他の季節もあるのでしょうか。
演奏後は、3人でカーテンコール。広上が指揮台から舞台袖の3人を手招きして、客席から笑いがこぼれました。

休憩後の第2部は、メンデルスゾーン作曲/劇付随音楽「夏の夜の夢」(朗読付き)。この作品を聴くのは、名古屋フィルハーモニー交響楽団第360回定期演奏会「真夏の夜の夢」以来でした。

女声合唱がステージ後方に4列で並びました。40人くらいで、広上淳一×京響コーラス「フォーレ:レクイエム」と同じく、歌える白いマスクを着けていました。ソプラノの鈴木玲奈はピンクのドレス、メゾソプラノの高野百合絵は白ドレスに衣装をチェンジしました。語りの石丸幹二は黒のスーツ。指揮台の左右に置かれたイスに座りました。

本公演は全曲演奏ではなく、「葬送行進曲」などはカットされています。 台本翻訳は松岡和子訳(1997年 ちくま文庫)を使用。すべてを朗読したわけではなく、一人で何役もこなすため、アレンジされていました。石丸幹二は前述の京都新聞の記事で「壮大な読み聞かせ」と語っています。

広上は「うっ」という声が聴こえたり、息を吐きながら指揮。メガネをかけていました。「1.序曲」と「2.スケルツォ」は、京都コンサートホールよりも座席が近いため、ヴァイオリンの弦を弓で擦る音が聴こえます。「3.リステッソ・テンポ」から石丸が立ち上がって、やや分厚い台本を譜面台に載せて、口元についているマイクで朗読。早口でパックのセリフなどは声色を変えて話しましたが、ストーリーを知らない人は速すぎてついていけなかったでしょうか。京都新聞の記事によると、オンライン配信では画面上に歌詞や朗読がテロップで表示されたようです。「4.妖精たちの行進曲(アレグロ・ヴィヴァーチェ)」は、オーケストラと語りの掛け合い。「5.合唱付きの歌「夜鶯の子守歌」」は、女性合唱と独唱二人が歌います。歌詞は原語でした。「6.アンダンテ」は、石丸が高い声と低い声を使い分けてセリフを読みました。「8.夜想曲」はホルンがうまい。「10.結婚行進曲」はやや遅めで堂々たる演奏。 「11.フィナーレ」は、私が大好きな曲で、女性合唱とソプラノ独唱が加わりました。合唱団が軽やか、石丸幹二の朗読は、最後に観客に拍手を求める台本でした。

カーテンコールでは、合唱指揮の男性が登場しました。終演後の規制退場はありませんでした。ずいぶん緩和されました。オンライン配信(カーテンコール)のアーカイブには、4400回以上再生されたようです。

広上淳一は、9月1日から日本フィルハーモニー交響楽団の「フレンド・オブ・JPO(芸術顧問)」に就任することが8月31日(つまり前日)に発表されました。渡邉暁雄との思い出を振り返り、「人々が幸せを感じ、笑顔の塊の姿と温もりのある社会の姿が来ることを夢みて…。その一心でこの職を引き受ける事にした。日本フィルへの恩返しを遅まきながら始めます」とのメッセージを寄せています。京都市交響楽団第13代常任指揮者兼芸術顧問を3月末で退任しますが、半年間は兼任となり、退任後のポストが早くも決まりました。

(2021.9.13記)

京都市ジュニアオーケストラ ミュージック・サマー・コンサート@京都市呉竹文化センター 久石譲×日本センチュリー交響楽団 京都特別演奏会