チャイコ3連投!熱狂コンチェルト−2021−
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2021年8月21日(土)14:00開演
ザ・シンフォニーホール
梅田俊明指揮/日本センチュリー交響楽団
伊藤悠貴(チェロ)、川久保賜紀(ヴァイオリン)、上原彩子(ピアノ)
チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲(フィッツェンハーゲン版)
チャイコフスキー/ヴァイオリン協奏曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
座席:S席 2階AA列29番
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昨年度延期になった
真夏のチャイコ3連投!熱狂コンチェルトが、同じプログラムと同じ出演者で早くも1年後に開催されました。とてもうれしいです。ただし、後述するように、直前になって指揮者が飯森範親から梅田俊明に変更になりました。
出演者についての情報は、
真夏のチャイコ3連投!熱狂コンチェルトのページに書いたので、そちらを参照していただきたいですが、早くも3月からチケットが100%の座席で発売されました。この演奏会が早期に実現したのは、5人(ソリスト3人と飯森範親と梅田俊明)が全員同じ事務所(株式会社ジャパン・アーツ)に所属しているのが大きいでしょう。上原彩子と川久保賜紀は2人でデュオリサイタルを開催するなど親交が深い仲です。
ところが、8月16日に、飯森範親が新型コロナウイルスに感染したため、指揮者を梅田俊明に変更すると発表されました。飯森は8月5日に、ミュージック・アドヴァイザー(次期音楽監督)を務める東京ニューシティ管弦楽団(フェスタサマーミューザKAWASAKI2021)を指揮しましたが、8月6日にPCR検査が陽性だったと判明したとのこと。本公演の主催者のザ・シンフォニーホールからは、「順調に回復しておりますが、現在のところ公演までに完治することが難しいという医師の判断を受け、降板することになりました」「飯森氏と並び日本を代表する指揮者の梅田氏に代役をお引き受け頂けたことで、内容、クオリティー共に万全の体制で臨めると判断し、公演を開催することに致しました」と説明されました。さすがに2年連続で延期はできなかったということでしょう。
梅田俊明は、日本センチュリー交響楽団の前身の大阪センチュリー交響楽団で、1989年8月から1992年3月まで指揮者を務めました。洗足学園音楽大学公式YouTubeチャンネルで配信中の「Summer Dream Concert 〜オーケストラwithナレーション〜」のグリーグ「ペールギュント」の動画がユニークでおもしろかったです。なお、梅田は8月24日に「オーケストラ・キャラバンKANAZAWA(日本フィルハーモニー交響楽団)」でも、川久保賜紀とチャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲」を指揮するので、本公演の代役を任されたのかもしれません。
本公演以外に飯森が出演予定だった公演はそれぞれ指揮者が変更され、8月7日の第26回宮崎国際音楽祭の「シリーズ「ポップス・オーケストラin みやざき」あの日、あの時・・・テレビが生んだ名曲たち」は梅田俊明に変更、8月11日の音楽宅急便2021「クロネコファミリーコンサート」(YouTubeライブ配信)は大井剛史に変更、8月18日の「交響曲 獺祭〜磨migaki〜五感で味わうコンサート 東京公演」は和田薫に変更になりました。本公演の翌日の8月22日の日本センチュリー交響楽団岩国特別演奏会も飯森が指揮する予定でしたが、「全国的な新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、関係各所と協議のうえ公演延期となりました」と発表されました。ということは、飯森は18日間で6公演も指揮する予定でした。今年度から東京ニューシティ管弦楽団のミュージック・アドヴァイザー(次期音楽監督)にも就任したので、ちょっとハードワークでしょうか。
大阪府に4回目の緊急事態宣言が出されたのは8月2日ですが、人流はあまり減ってないように思えました。この日の大阪府の感染者数は2556人で、過去2番目の多さでした。
スタッフが持っている消毒液で消毒して、手首で検温。検温の機械はこれまで建物の外でしたが、ホールの入口に移動しました。自分でチケットの半券をもぎって、プログラム入りの透明の袋をスタッフから渡されました。袋の中に「指揮者変更のお知らせ」の紙が入っていましたが、指揮者が変更になったことを知らないまま来場した方もいたようです。
カフェ、ショップ、プレイガイド、クロークはまだ営業休止中でした。大阪府のガイドラインにしたがって、チケットの販売が終了したため、当日券の発売もありませんでした。客の入りは8割程度。
弦楽器は8-8-6-6-4の中編成です。団員はお揃いの灰色のマスクを着用していました。コンサートマスターは後藤龍伸。ソリストは全員マスクなしでの演奏でした。
プログラム1曲目は、チャイコフスキー作曲/ロココ風の主題による変奏曲(フィッツェンハーゲン版)。チェロ独奏は、伊藤悠貴。「フィッツェンハーゲン版」は、チャイコフスキーのスコアをフィッツェンハーゲンが勝手に改訂した版ですが、原曲よりも有名です。
梅田俊明が登場。長身で細身です。伊藤は演奏台の上で演奏。弾き方は豪快ですが、チェロの音色はゴツゴツしません。ロストロポーヴィチ盤の聴きすぎかもしれません。高音がよく使われますが、たまにかすれたりしたのが残念。オーケストラは弱奏が多かったですが、スコアでもそのように指定されていました。優しく包み込むようなに室内楽的で温和。CDだと気がつきませんでしたが、金管楽器はホルンだけで、トランペットとトロンボーンがなく、打楽器もありません。第5変奏のフルートソロが美しい音色でした(男性だったので客演奏者でしょうか)。
難しくなさそうにスラスラと弾きます。この作品を演奏するのに理想的な音色でした。音がややかすれたりしたので、絶好調とは言えないでしょう。第1楽章の終わりに客席からチラホラと拍手が起こりました。汗を拭くハンカチを、指揮者の譜面台に置いていました。
オーケストラは、ソリストにあった控えめな伴奏で、裏方役。第3楽章では梅田が激しくキューを出しました。
上原彩子は2005年に結婚し、現在は三児の母です。第1楽章冒頭から、ためたり揺らしたりで、テンポ通り弾きません。全体的にやや速めのテンポですが、ピアノソロはすごく速くて、一気に弾きました。ただ速く弾いただけという評価もあるかもしれませんが、ガンガン行く系の演奏で、ミスタッチもありましたが、
日本フィルハーモニー交響楽団第134回サンデーコンサートよりも勢いを増して、怪演級と言ってよいでしょう。もっとも飯森が指揮していたらここまで個性的な演奏ではなかったかもしれません。中毒性がある演奏で、また聴きたいです。ピアノパートがないときは肩を揺らして聴いていて、大物の風格です。
第1楽章の540小節以降のカデンツァは崩した弾き方で、テンポ・ルバートに近い。後半の582小節からは一気に速くなりました。第2楽章のPrestissimoも速い。休みなく第3楽章へ。やや暴走気味ですが、堂々として気持ちがいい。
オーケストラも熱演で、梅田も前2曲とは異なるスタイルでした。オーケストラはトランペットとトロンボーンの音色が濁りがちで残念
。
カーテンコールではソリストの3人がそろって登場しました。終演後は規制退場が行なわれました。
梅田俊明は代役だからか、ソリストを目立たせる伴奏でした。日本センチュリー交響楽団首席指揮者を務める飯森範親の指揮でまた聴いてみたいです。
飯森範親は、本公演終了後の8月21日の午後にTwitterをひさびさに更新し、8月18日に退院したことと医療関係者への謝辞を綴りました。また、8月27日に体調が回復したので、活動を再開するとの投稿がありました。9月4日の日本センチュリー交響楽団三重特別演奏会で復帰となるようですが、プログラムになんと上原彩子とのチャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」が組まれています。
なお、川久保と上原は、翌週の8月28日(土)には、「華麗なるコンチェルト・シリーズ 2021【特別版】第2回「チャイコフスキー3大協奏曲」」に出演しました(岩村力指揮、神奈川フィルハーモニー管弦楽団、チェロは上野通明)。今年はチャイコフスキー・イヤーでもないのに、チャイコフスキーばかりでびっくりです。やはりチャイコフスキーコンクールで上位に入賞した実績で、多くのニーズがあるのでしょう。
(2021.9.3記)