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2009年7月11日(土)16:00開演 愛知芸術文化センター愛知県芸術劇場コンサートホール 鈴木雅明指揮/名古屋フィルハーモニー交響楽団 メンデルスゾーン/演奏会序曲「ヘブリーデン(フィンガルの洞窟)」 座席:S席 2階 12列53番 |
先月のコバケン・スペシャルVol.16「マイ・フェイヴァリット・マスターピーシーズ4」に続いて、名古屋フィルハーモニー交響楽団の定期演奏会を聴きに行きました。名古屋フィルの定期演奏会は、金曜日・土曜日の2日公演です。常任指揮者ティエリー・フィッシャーの2期目となる今年度は「四季シリーズ」と題して、毎回のプログラムに季節にちなんだ作品が入っています。今回は「メンデルスゾーン生誕200年記念プログラム」と題して、「真夏の夜の夢」全曲がメインです。指揮はバッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督を務める鈴木雅明。古楽器出身の鈴木がメンデルスゾーンをどう聴かせるか注目です。客席は9割の入り。
拍手に迎えられてオーケストラが登場。プログラム1曲目は、演奏会序曲「ヘブリーデン(フィンガルの洞窟)」。アーティキュレーションや音型をはっきり聴かせて、小節単位でしっかり表情を作ります。各楽器の音量レベルもうまく計算されています。強奏ではいろんな素材が聴こえて、見通しがいい。
プログラム2曲目は、交響曲第4番「イタリア」。4楽章を休みなしに速めのテンポで一気に演奏しました。ヴィヴラートを少なくしたピリオド奏法を一部で採用したり、第3楽章9小節のアーティキュレーションをスラーからテヌートに変更したりした以外は普通の演奏で、奇を衒った解釈はなし。おもしろい演奏が聴けると思ったのに期待外れでした。オーケストラの精度は、さらに緻密さを求めたいです。
休憩後のプログラム3曲目は、劇音楽「真夏の夜の夢」全曲。語りは、毬谷友子。台本も毬谷自ら作成しました。愛知県立芸術大学女声合唱団約70名がステージ後方に4列で並びました。鈴木雅明が登場して「序曲」から演奏がスタート。続く「スケルツォ」の演奏中に、ソプラノ2名と毬谷が1階の客席を通ってステージに登場。指揮台の左右に置かれたイスに座りました。「情景と妖精の行進」から毬谷の語りが加わりました。第一声は「いやー!」という叫び声。毬谷は座ったまま台本を持って話しました。スタンドマイクが置かれていましたが、声量がすごいのでなくてもいいでしょう。毬谷はナレーションというよりは戯曲のように、登場人物のセリフを声色を変えて話しました。男性の役では低い声を使います。「オレ」などのくだけた表現もありました。語りというよりも一人芝居と言ったほうがふさわしく、叫んだり、笑ったり、歌いだしたり、表情も多彩。子供でも楽しめるでしょう。音楽と語りが交互に入れ替わる部分は、鈴木雅明とアイコンタクトを取って、入りのタイミングを合わせました。ただし、登場人物を分かっていないと、誰の声か分かりづらいでしょう。毬谷は舞台を中心に活躍しているようです。機会があれば舞台も見に行きたいです。
「歌と合唱」はメロディーが美しい。独唱2名と合唱が加わりました。「結婚行進曲」は独唱の2人と毬谷が立ち上がり、指揮台の後ろに置かれたかごに入った花を持って客席に降りました。客席の照明を明るくして、聴衆に一輪ずつ花を渡しました。粋な演出です。「終曲」の最後は、ステージの照明が暗くなり、指揮台にスポットが当たり、最後は真っ暗になりました。
オーケストラはピッチがやや低めなのか重心ある響きですが、音程がいまひとつ揃わないので和音が決まりません。ティンパニとシンバルをよく聴かせます。強奏ではやや音色が荒く感じました。
全曲を聴いたのは初めてですが、名曲の宝庫ですね。意外に短かったです。独唱と女声合唱は楽譜を持って歌いましたが、「歌と合唱」と「終曲」しか出番がありません。全曲が演奏会で取り上げられる機会は少ないでしょう。
鈴木雅明は忙しく指揮棒を動かし、強奏では髪を振り乱して指揮しました。本業ではないモダンオーケストラを指揮しましたが、いたって自然体の演奏でした。細部をデフォルメするなど、アーノンクールのような奇抜なことはしません。もう少し変わった演奏が聴けるかと思っていただけに、少し期待外れでした。
(2009.7.19記)