広上淳一×京響コーラス「フォーレ:レクイエム」


   
   
2021年8月9日(祝・月)18:00開演
ロームシアター京都サウスホール

廣瀬量平/混声合唱組曲「海鳥の詩」(作詩:更科源蔵)
 津幡泰子指揮/京響コーラス、小林千恵(ピアノ)

フォーレ(信長貴冨編曲)/レクイエム
 広上淳一指揮/京都市交響楽団(弦楽合奏)、小玉洋子(ソプラノ)、小玉晃(バリトン)、桑山彩子(オルガン)、京響コーラス

座席:全席指定 2階1列17番



広上淳一が、スーパーヴァイザーを務める京響コーラスを指揮しました。京響コーラスは、京都市交響楽団音楽監督・第9代常任指揮者を務めた井上道義が発案し、「京響第九合唱団」として1995年に結成されました。2012年に「京響コーラス」に改称し、井上道義が創立カペルマイスターに、広上淳一がスーパーヴァイザーに就任しました。現在は、16歳以上の150名で活動しているとのことです。

チケットの発売は、緊急事態宣言の影響で、5月30日の予定が延期となり、6月26日に100%の座席で発売されました。8月2日から、京都府にまん延防止等重点措置が適用されましたが、ロームシアター京都は通常通りの開館でした。ただし、本公演では終演時間を早めるためか、途中の休憩(20分)の予定が休憩なしになりました。東京オリンピックは、前夜の8月8日の閉会式で終了しましたが、この日の新型コロナウイルス感染症の感染者数は12,000人を超えて、月曜日としては過去最多となりました。

なお、広上淳一と京都市交響楽団は忙しい1週間で、「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2021」(8月4日(水) ミューザ川崎シンフォニーホール)に初めて出演した後、京響みんなのコンサート2021「オーケストラ付レクチャー・コンサート」(8月7日(土) 京都市呉竹文化センター、8月8日(日)京都市西文化会館ウエスティ)に続いての本公演で、6日間で4公演のハードスケジュールでした。

消毒と検温の後、チケットを自分でもぎって、プログラムを自分で取ります。寒川晶子ピアノコンサート 〜未知ににじむド音の色音(いろおと)〜でも感じましたが 2階席は勾配が急です。1列目は目の前の手すりが邪魔なのが残念。サウスホールは716席で、当日券も発売されて、約9割の入り。定期演奏会では寂しい入りが続いていましたが、関係者が多く来られたようです。

京響コーラスの本公演の出演者は、ソプラノ14、アルト12、テノール7、バス7の40名。白い長いマスクを着けていましたが、東京混声合唱団が開発した「歌えるマスク」でしょうか。鼻から首まで覆います。ソーシャルディスタンスを保つために、前後左右の間隔を開けて5列で並びました。前から、10人、9人、8人、7人、6人で、後ろ2列はひな壇に立ちました。サウスホールのステージの奥行きを生かした配置です。

プログラム1曲目は、廣瀬量平作曲/混声合唱組曲「海鳥の詩(うみどりのうた)」。1977年に作曲され、4曲から成ります。廣瀬量平は、京都市立芸術大学教授や京都コンサートホール館長を務めました。作詞の更科源蔵はアイヌ文化研究家で、タイトルの通り、鳥について歌います。ピアノ伴奏です。チラシには、「死と隣り合わせの厳しい自然の中に身を置く鳥たちの、強く美しい生き様が描かれます。困難を乗り越える意志を秘めたこの曲は、コロナ禍を生きる私達を鼓舞するかのようです」と紹介されました。
指揮の津幡泰子は、京響コーラスでヴォイストレーナーを務めています。譜面台なし、指揮棒なしで指揮。合唱は歌詞ははっきり聴こえて、声量もじゅうぶんです。フォーレも含めて楽譜を持って歌いました。合唱を聴くのにはいいホールです。
第1曲「オロロン鳥」から、いいメロディーで美しいハーモニー、第2曲「エトピリカ」は後半に盛り上がります。第3曲「海鵜」に続いて、第4曲「北の海鳥」でも「オロロン」と歌われました。

ピアノが撤去されて、プログラム2曲目は、フォーレ作曲(信長貴富編曲)/レクイエム。東京混声合唱団レジデント・アーティストを務める信長貴冨(のぶながたかとみ)が、2020年度東京混声合唱団委嘱作品となる「委嘱新編曲」で、東京混声合唱団の第253回定期演奏会(2020年10月24日 東京文化会館小ホール)で初演されました。三ツ橋敬子の指揮で、ヴァイオリン1、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1、ポジティブ・オルガン1、ソプラノ独唱、バリトン独唱、混声合唱団の編成で演奏されました。コロナ禍を意識したアレンジなのか分かりませんが、管楽器がなく、弦楽器5人とオルガンだけという少人数の伴奏なので、合唱団からすると低予算で上演できるメリットがあるでしょう。
本公演では、左から、ヴァイオリン3、第1ヴィオラ2、第2ヴィオラ2、コントラバス1、チェロ2の弦楽合奏10名と、ステージ右端のオルガンで演奏されました。ヴィオラが最多の4人という変わった編成ですが、もともとの信長貴冨の編曲を少し増員したということでしょう。なお、合唱と独唱のパートは、原曲と同じようです。京都市交響楽団第10回名古屋公演でも「ネクトゥー&ドゥラージュ校訂」で聴きましたが、本公演は合唱団は多く、オーケストラは少ない。

コンサートマスターの泉原隆志がチューニング。オーケストラも全員マスクをつけて演奏しました。独唱の二人はマスクなし。指揮台の左に小玉洋子、右に小玉晃が座りました。小玉洋子は京響コーラスでヴォイストレーナーを務めています。なお二人はご夫婦のようです。独唱も楽譜を持って歌いました。

練習も大変と思われる状況で、予想以上のレベルでした。ただし、男声も女声も高音になると、音程がやや不安定でした。お互いの距離が離れているのも影響があるでしょう。また、もう少し弱音のダイナミクスがあってもよかったです。歌えるマスクは歌ってたら暑くならないのでしょうか。
広上淳一はメガネをかけて指揮。指揮棒なしで指揮しました。管楽器が欠ける編曲ですが、原曲の雰囲気を損ねない自然なアレンジで違和感なく聴けました。弦楽合奏として増員したのも、響きが増してよかったです。ちなみに、この信長貴冨の新編曲は、来年3月のびわ湖ホール声楽アンサンブル第74回定期公演でも上演されます(園田隆一郎指揮)。

第1曲「イントロイトゥス(入祭唱)とキリエ」から、力強い歌唱。第2曲「オッフェルトリウム(奉献唱)」の78小節からの合唱は、広上がうねるように指揮して美しい。オルガンの全音符で終わりましたが、オルガンは天井のスピーカーから聴こえていたようです。
第3曲「サンクトゥス(聖なるかな)」は、速めのテンポ。ハープのパートをオルガンで演奏。42小節からのトランペットとホルンのメロディーは、ヴァイオリンと第1ヴィオラで演奏。
第4曲「ピエ・イエス(慈悲深きイエスよ)」は合唱団は着席して、ソプラノ独唱のみ。第5曲「アニュス・デイ(神の子羊)」に続いて、第6曲「リベラ・メ(私を解き放って下さい)」のバリトンは、歌詞をマルカート気味に短く歌いました。37小節からの合唱はpp指定ですが、音量が大きすぎて残念。48小節からのホルンのファンファーレはヴァイオリンと第1ヴィオラで演奏。後半の合唱は、広上が激しく指揮。第7曲「イン・パラディスム(楽園に)」は、やや速めのテンポ。

大きな拍手が送られましたが、カーテンコールの途中で、客席の照明が全照になって、強制終了。広上のあいさつはありませんでした。19:05に終演。時間差退場のアナウンスはほとんど守られませんでした。

京響コーラスは、「京都市交響楽団×石丸幹二 音楽と詩(ことば) メンデルスゾーン:「夏の夜の夢」」(2021.9.5 ロームシアター京都メインホール)や、広上淳一指揮の「特別演奏会「第九コンサート」」(2021.12.26 京都コンサートホール)に続いて、広上淳一常任指揮者最後の公演となる「第665回定期演奏会」(2022.3.12&13 京都コンサートホール)では、マーラー「交響曲第3番」を歌います。今後の演奏会も楽しみです。

(2021.8.12記)

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