日本フィルハーモニー交響楽団第134回サンデーコンサート


   
      
2003年6月1日(日)14:00開演
東京芸術劇場大ホール

小林研一郎指揮/日本フィルハーモニー交響楽団
上原彩子(ピアノ)

チャイコフスキー/歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「ポロネーズ」
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番
チャイコフスキー/交響曲第4番

座席:Ys席 3階A列51番


昨年行われた「第12回チャイコフスキー国際コンクール」で第1位の栄冠に手にした上原彩子がチャイコフスキーを演奏すると知って、迷わず京都から駆けつけました。
チケットも全席完売ということで、彼女に対する期待の大きさを感じました。

東京芸術劇場は、もちろん初めて入りましたが、ホールの容積がすごく大きいホールでした。こういうスタイルのコンサートホールは近畿圏にはないですね。客席の拍手もよく響いてコンサートの雰囲気を体感できるホールでした。

プログラムは、すべてチャイコフスキーの作品。まず1曲目は、歌劇「エフゲニー・オネーギン」より「ポロネーズ」。ヴァイオリンの輝かしい音色が美しく聴けました。残響が少し多すぎるためか、中低音やティンパニの音像がぼやけてやや重い印象を受けたのが残念。また、金管のリズム型の音量が大きく、3拍子の優雅で心地よい流れを少し邪魔している気がしました。

プログラム2曲目は、「ピアノ協奏曲第1番」。上原彩子は紺のドレスで登場しました。上原彩子のピアノは、高音の輝かしい音色が特徴的だと感じました。アシュケナージのような澄んだ明るい音色でした。演奏スタイルも前のめりで、鍵盤と格闘するかのような弾きっぷりで、視覚的にも演奏に没頭している様子が見て取れました。技巧的には正確なタッチで危なっかしいところはほとんどありませんでした。ソロでもテンポ揺らすなどソリストの風格を感じさせます。ホールの影響かも知れませんが、強奏で音の粒が立つとさらによいでしょう。また、さらに大きい音が出せるようになれば、オケとも対抗できる演奏が可能になると思います。惜しむらくは、テンポ設定が速いこと。もう少しゆっくり弾いてほしいと感じた部分が少なからずあってテクニックの割には物足りないというかもったいない感じがしました。速く弾きたいのは当然かも知れませんが、もう少し演出上手になればすばらしいピアニストになると感じました。まだ若いので、今後は多彩な表現力を身につけることが課題となるでしょう。
第2楽章では、ピアノが少し浮き出すぎなのが気になりました。もう少し沈んだ音色が望ましいでしょう。中間部のPrestissimoがまるで行進曲のような速さ。ここまで速く弾きたがるピアニストも珍しいのではないでしょうか? オケの伴奏は慌てる様子もなく、曲作りをリードしていました。
第3楽章では、金管が鳴って競争曲的な雰囲気が高まりました。しかし、ピアノと弦が同じ旋律を演奏する252小節目Molto meno mossoからは、わだかまりのない穏やかな表情が現れました。ここは小林研一郎の音楽設計がすばらしいですね。全体的に見てもオケの丁寧なサポートが光りました。オケ録音にしてじっくり聴きたくなる名演でした。

プログラム3曲目の「交響曲第4番」は、同じ小林研一郎指揮の大阪フィルの演奏で3月に聴きました(大阪フィルハーモニー交響楽団京都特別演奏会)。基本的な解釈は同じでしたが、手兵の日本フィルを指揮した今回の演奏の方が、オケが細かな指示に対応できていました。
第1楽章は、冒頭のトランペット3本が鋭く突き刺さるようなファンファーレを聴かせました。弦楽器の重みのある地に足がついた演奏がすばらしく、この作品でもオケ全体を支えていました。フルートの二重奏も美しく聴かせました。トランペットとトロンボーンが地の底から鳴ってくるようでオーケストラ全てをかき消す勢いを感じさせました。まるでロシアのオーケストラを思わせるほどでした。
第2楽章は、弦楽器が聴かせますが、ヴァイオリンが跳躍などで音程が正確に合えば、なおいいでしょう。
第3楽章は、弦のピツィカートの受け渡しがぎこちなくて期待外れ。ピッコロはすばらしい演奏を披露しました。
第4楽章は、すさまじい音量ではじまり、トロンボーンも音を割りながら荒々しく演奏。小林研一郎のうなり声がたまに聞こえました。シンバルなどの打楽器が爆発的な音量で演奏していましたが、管弦を完全にかき消してしまうのはさすがにやりすぎの感があります。残念です。

アンコール1曲目は、アイルランド民謡「ダニー・ボーイ」。弱奏で第1ヴァイオリンがいつもより抑制されていて美しい演奏でした。何度聴いてもいい曲ですね。
アンコール2曲目は、「交響曲第4番」第4楽章ラストを演奏。小林と楽団員全員で一礼をした後解散しました。

日本フィルハーモニー管弦楽団を聴いたのは、「日本フィル京都演奏会2002秋」に続いて今回が2回目でした。弦楽器が主体のオーケストラであると実感しました。やはりホルンがいまひとつで、音程が明瞭でなくしかも不安定でした。

今回の演奏会は、日本フィルのホームページから予約しましたが、Ys席(ヤングシート席)の存在を知ってビックリ。
25歳以下に設定された座席ですが、2200円は安すぎ! しかもかなり良い席から選べます。あと1年半は日本フィルをいろいろ聴いてみたいと思います。

(2003.6.8記)


東京芸術劇場



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