京都市交響楽団スプリング・コンサート


  2021年4月11日(日)14:00開演
京都コンサートホール大ホール

広上淳一指揮/京都市交響楽団
小曽根真(ピアノ)

ラフマニノフ/ヴォカリーズ
ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」

座席:B席 3階C2列24番



2021年度の京都市交響楽団の自主公演は、今年もスプリング・コンサートからスタートしました。第13代常任指揮者兼芸術顧問を務める広上淳一は、今シーズン末の2022年3月をもって退任します。2008年の第511回定期演奏会「第12代常任指揮者就任披露演奏会」で第12代常任指揮者に就任してから、実に14年目のシーズンとなります。歴代の京都市交響楽団の常任指揮者の中で最長の在任期間となりました。広上は「かけがえのないキャリアを積むことができた。感謝を込めて任期をまっとうしたい」と語っています。広上淳一と京響のラストシーズンは、できるだけ多く聴いていきたいです。

京都市交響楽団は、今年度は定期会員(友の会会員)を新規も継続も募集せずに休止します。理由は「新型コロナウイルス感染症の影響の把握が困難なため」とのこと。その代わりに、2020年度の定期会員は、2021年度の公演のチケットを一般発売よりも2週間早い先行発売で購入できます。京都コンサートホール・ロームシアター京都Club会員の私も、一般発売よりも1週間早い先行発売で購入できました。
チケットはA席(2500円)とB席(2000円)。一席を空けない通常通りの配置でしたが、1ヶ月前に全席完売。ぎっしりの満席はひさびさに見る光景で、京都市交響楽団の自主公演では、2019年12月の「第九コンサート」(指揮:ユベール・スダーン)以来のようです。なお、翌日から京都市に「まん延防止等重点措置」が適用されることになりました。ニューイヤーコンサートと同様に、体調不良の場合はチケット代金の払い戻しの対応が取られました。

プレトークはもともとありません。コンサートマスターは、会田莉凡。2020年4月から京都市交響楽団特別客演コンサートマスターに就任しました。会田は1990年生まれ。初めてお目にかかりましたが、写真のイメージよりも小柄で美人。たまたま演奏会前の某カフェでのランチでテーブルがお隣でした。開演30分前でも余裕です。コンサートマスターの泉原隆志は出演しませんでした。
ステージにはアクリル板がなくなり、1階席の最前列の客席を空席にしているのと、最後列(トランペット、トロンボーン、テューバ)の前のひな壇を一段空けている以外は、オーケストラは通常配置です。
団員が入場すると、満員の客席から拍手。やはり正真正銘の満席だと、拍手の音量が大きい。

プログラム1曲目は、ラフマニノフ作曲/ヴォカリーズ。トランペットとトロンボーンはなし。会田の長いソロが堪能できました。広上はメガネをかけていて、1曲目ですが、力がこもった指揮でした。

プログラム2曲目は、ラフマニノフ作曲/ピアノ協奏曲第2番。ピアノ独奏は、小曽根真。小曽根真は60歳。ワインレッドのシャツを着て、暗譜で演奏しました。小曽根がこの曲を演奏するのは初めてとのことでしたが、正統派とも言える演奏。音色も暗めでラフマニノフにふさわしい。右手と左手を対等に鳴らして、全ての音符を聴かせます。弱奏でも打鍵はやや強めなので、あまり聴こえない音符が聴けました。派手なアクションもなく、クラシック音楽を演奏するピアニストとして違和感はありません。
アドリブは第1楽章ではありませんでしたが、第2楽章の121小節からのソロでアドリブでパッセージを追加。第3楽章も326小節からのメロディーで和音を足して演奏しました。さりげなくアドリブを入れてきます。431小節からのオーケストラとのトゥッティも楽譜通りではなく、アドリブで音符を変更して演奏しました。小曽根は広上の指揮をよく見ていて、オーケストラに合わせるようにしていましたが、第3楽章のピアノとトランペットがからみあう256小節から、小曽根が早く弾きすぎてずれました。
なお、小曽根真は「OZONE60」のツアー中で、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」を7月にもオーケストラと共演します(東京都交響楽団第931回定期演奏会(指揮:アラン・ギルバード)、札幌交響楽団第639回定期演奏会(指揮:尾高忠明)。

カーテンコールでは、小曽根はピアノの屋根を閉めて、指揮台にいる広上淳一が客席から見えるように配慮していました。屋根を開けてアンコール。小曽根真作曲/Gotta Be Happyを演奏。広上は指揮台に座って聴きました。演奏後は、ホールの全方位を振りむいて礼。大物なのに大変礼儀正しい。

休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲/交響曲第6番「悲愴」。この曲は大阪特別公演で聴きました。燃焼度が高い演奏だったので、今回も濃厚な演奏を期待しましたが、意外にあっさり。強奏でも丁寧で、粗くならずバランスを保っています。とはいえ浅薄さはなく、長年の共演で培われた彫りの深さを感じます。弦も管も素晴らしい演奏。広上の指揮は左右に流すような動きが見られました。ため息のような息を吐く音が聴かれましたが、弟子の川瀬賢太郎がセンチュリー豊中名曲シリーズVol.17では息を吸っていたのと対照的です。第3楽章では大太鼓に向けて全身を使ってのキュー出し。第3楽章の最後で両腕を左右に広げたまま、やっこさんのような格好で止まりました。大阪特別公演ではここで拍手が起こってしまいましたが、今回は拍手は起こらず。第4楽章も最後の音が消えるまで拍手は起こりませんでした。聴衆のレベルも上がったことを実感しました。

広上が挨拶。「コロナで気分としては不安でしょうが、感染にはお気を付けいただいて、でも演奏会には来てください。しめっぽい終わり方になっちゃいましたので、楽しい曲を」と話して、アンコール。ビゼー作曲/小組曲「こどもの遊び」から第5曲「ギャロップ(舞踏会)」を演奏。16:30に終演。2時間半の公演となりました。

規制退場が行なわれ、1階席後方→1階席前方→それ以外の順で退場。アンコールの曲名はこれまではホワイエの通路のホワイトボードに書かれていましたが、今回は紙が机に置かれていて、自由に取る形式になりました。密を避ける新しい取り組みと言えるでしょう。 

まさに広上芸術の集大成とも言える演奏でした。一体感がある演奏が聴けました。ひさびさの満員御礼でしたが、3回目の緊急事態宣言が発令されたことを受けて、4月26日から5月11日まで、京都コンサートホールが臨時休館となってしまいました。本公演からわずか2週間後の急展開で、2020年4月から京都コンサートホール館長を務める広上淳一も悔しさいっぱいでしょう。ジョン・アクセルロッドの首席客演指揮者就任披露演奏会となった第655回定期演奏会(4月23日)が、ギリギリ開催できてよかったです。

なお、京都市交響楽団のクラウドファンディングで購入した「常任指揮者兼芸術顧問広上淳一のサイン入り指揮棒&色紙(直筆)」(3万円)が届きました。「常任指揮者兼芸術顧問広上淳一と首席客演指揮者ジョン・アクセルロッドからのサンクスメッセージ(コピー)」も同封されていました。大切にします。

アンコール曲のお知らせ 常任指揮者兼芸術顧問広上淳一のサイン入り指揮棒&色紙(直筆)

(2021.4.28記)


センチュリー豊中名曲シリーズVol.17 京都市交響楽団スプリング・コンサート