Osaka Shion Wind Orchestra第135回定期演奏会
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2021年3月20日(日)14:00開演
ザ・シンフォニーホール
西村友指揮/Osaka Shion Wind Orchestra
松永貴志(ピアノ)
ヴォーン=ウィリアムズ/イギリス民謡組曲
ガーシュウィン(伊藤康英編)/ラプソディ・イン・ブルー
ラヴェル(西村友編)/舞踏詩「ラ・ヴァルス」
バルトーク(西村友編)/組曲「中国の不思議な役人」〜レンジェル・メニヘールトの台本に基づく1幕のパントマイムのための舞台音楽から〜
座席:S席 2階BB列24番
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Osaka Shion Wind Orchestra(オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ)の定期演奏会に初めて行きました。定期演奏会は年6回ザ・シンフォニーホールで開催され、今回はクラシック音楽をアレンジした曲が中心で、オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラが創立された1923年頃に作曲された作品が選曲されました。
指揮は、西村友(ゆう)。1966年生まれで、54歳。2017年4月から2020年3月まで、Osaka Shion Wind Orchestraの正指揮者を務めました。吹奏楽界では、2015年度の全日本吹奏楽コンクール課題曲?「ある英雄の記憶 〜「虹の国と氷の国」より」の作曲者として知られています。
チケットは、「がんばれ!Shion応援団」レギュラー会員を対象にした先行発売が、Shionオンラインチケットで12月7日から開始しました。5%割引で購入できてお得です。チケットはセブンイレブンで発券しました。
ホールの建物の外で手指消毒と検温してから、ホールの中へ。ザ・シンフォニーホールは、
大阪音楽大学第63回定期演奏会と同じく、カフェ、ショップ、プレイガイド、クロークはまだ営業休止中でした。前後左右を空けない配置で、4割程度の入り。団員はステージ上で音出し中でした。
プログラムのメンバー表によると、正規メンバーは32名で、客演奏者も32名でした。客演奏者の中に、筒井祥夫(京都市交響楽団副首席クラリネット奏者)の名前がありました。また、プログラムに掲載された賛助会(個人会員)には、金井信之(大阪フィルハーモニー交響楽団第一クラリネット奏者)、森島洋一(大津シンフォニックバンド音楽監督)、山下一史(ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団名誉指揮者)、山本一宏(元京都市交響楽団首席ファゴット奏者)などの名前が連なっています。
コンサートマスターの古賀喜比古(クラリネット)が登場して、オーボエのGの音でチューニング。続いて西村友が登場。茶髪でした。
プログラム1曲目は、ヴォーン=ウィリアムズ作曲/イギリス民謡組曲。第1曲「行進曲〜日曜日で17歳」、第2曲「間奏曲〜いとしの我が子」、第3曲「行進曲〜サマーセット地方の民謡」から成り、最初から吹奏楽のために書かれた作品です。トランペット5、トロンボーン4、ホルン5が強力で、もう少し木管楽器の音色を聴きたいです。残響はよく響きました。第3楽章のトゥッティは軽快で重くなりません。
ピアノが設置されて、プログラム2曲目は、
ガーシュウィン作曲(伊藤康英編)/ラプソディ・イン・ブルー。オーケストラ版ではなく、初演のジャズバンド版に基づく吹奏楽用編曲です。ピアノ独奏は
松永貴志。松永のピアノでこの曲を
京都市交響楽団練習風景公開で聴きましたが、そのときは姿が見えませんでした。アーティスト写真よりも体型が太ったようです。左足をぶらつかせたり、頭を前後に動かしたり、拍をあまり意識しないジャズ風の弾き方でしたが、ミスタッチが少しありました。中間部のピアノソロはアドリブでやや長め。勢いに乗って弾きました。
西村の指揮はキュー出しが分かりやすい。田畑直美がすごく小さいサックス(ソプラニーノ・サクソフォン)を持ち替えで演奏しました。ラストのGrandioso(not too slow)はやや遅めのテンポ。ラスト6小節からシンバルではなく、ドラを使うのが珍しい。プログラムに掲載された楽器編成ではC.Cymb(シンバル)が記載されているので、これは西村がシンバルをドラに変えたということでしょう。もしかしたら、新型コロナウイルス対策で、飛沫の拡散を防止させるためかもしれません。
拍手に応えて、松永がアンコール。ステージの照明が落ちてピアノだけが浮かびあがる演出で、 松永貴志作曲/神戸を演奏しました。
休憩後の後半は、西村が自ら編曲した作品で、指揮台なしで指揮しました。楽譜は未出版とのこと。
プログラム3曲目は、ラヴェル作曲(西村友編)/舞踏詩「ラ・ヴァルス」。打楽器が最後列に8人もいて、そのうち2人がマリンバを担当しましたが、原曲にはマリンバがないので、音色にちょっと違和感がありました。西村は8の字を描くような指揮。やや速めのテンポでしたが、もう少しゆっくり聴きたい部分もありました。原曲の魅力に吹奏楽らしいアグレッシブさが加わった名演でした。
プログラム4曲目は、バルトーク作曲(西村友編)/組曲「中国の不思議な役人」〜レンジェル・メニヘールトの台本に基づく1幕のパントマイムのための舞台音楽から〜。「序奏」「最初のおとり作戦」「二つ目のおとり作戦」「三つ目のおとり作戦」から成ります。冒頭のトロンボーンから強奏しましたが、打楽器8、トランペット6、トロンボーン4、ホルン5と多い割には、強奏でもうるさくならずに聴きやすく、スッキリしたサウンド。ただし、「ラ・ヴァルス」に比べると、作品の魅力がいまいちで、静かな部分の表現力は原曲に劣ります。また、吹奏楽コンクール用の抜粋版に慣れていると、組曲版は長く感じました。
カーテンコールで、西村がわざわざマウスシールドをつけて挨拶。「ある人が音楽は不要不急だと言ったけど、冗談じゃないよ!。音楽は心に必要不可欠な栄養素です」と熱く語り、客席から大きな拍手。「オオサカシオンはもうすぐ100歳になります」と語り、2023年にオオサカ・シオン・ウインド・オーケストラが、創立100周年を迎えると紹介しました。ホームページでも「日本で最も長い歴史と伝統を誇る交響吹奏楽団」と謳っています。
アンコールは、ヴォーン=ウィリアムズ作曲/行進曲「海の歌」。もともと「イギリス民謡組曲」の2曲目として作曲された作品です。トランペットとトロンボーンの合いの手がまろやか。終演後は規制退場が行なわれました。
オオサカシオンの演奏と西村のアレンジと的確な指揮が楽しめました。西村が正指揮者のポストから離れたのはもったいないです。定期的に客演して欲しいです。
大阪市音楽団で第5代団長を務めた木村吉宏氏が2月24日に亡くなりました。本演奏会のプログラムやホームページに追悼文などは掲載されていません(木村が音楽監督を務めたフィルハーモニック・ウインズ 大阪(オオサカン)のホームページには訃報が掲載されました)。私も大学時代に彼の指揮で一度だけ演奏しました。ご冥福をお祈りいたします。