フィンランド・ラハティ交響楽団来日公演


   
      
2003年10月5日(日)14:00開演
ザ・シンフォニーホール

オスモ・ヴァンスカ指揮/フィンランド・ラハティ交響楽団

〔プログラムD〕
シベリウス/交響曲第2番
シベリウス/交響詩「フィンランディア」
チャイコフスキー/交響曲第5番

座席:A席 1階 J列29番


フィンランド・ラハティ交響楽団が音楽監督オスモ・ヴァンスカとともに来日です。1999年に続いて2度目の来日公演となりました。プログラムを1000円で購入してホール内へ。客の入りは8割程度でした。オーケストラが入念にチューニング。金管楽器はB♭で合わせてました。珍しい。ヴァンスカが颯爽と登場。

プログラム1曲目は、シベリウス作曲「交響曲第2番」。強弱やテンポの速い遅いのメリハリが効いた演奏になりました。第1楽章冒頭から一気に引き込まれました。速めのテンポでクレシェンド・デクレシェンドをスコアが目に見えるほどくっきりと実行していました。その結果、作品のいたるところで大きなうねりが形成され、かなりの盛り上がりを見せました。楽器別では、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンがまとまったサウンドを聴かせました。トランペットや木管楽器の素朴な原色の音色が魅力的。木管楽器はやや大きめに演奏。ヴァンスカの指揮は、両腕を大きく振ってオーケストラを主体的にリードしていました。演奏にスピード感を与えることを主眼においているように感じました。
第2楽章は、一音一音かみしめるような遅いテンポで進められました。ただし、2度目の金管のコラールでトランペットとティンパニがズレて力のない演奏になってしまいました。おそらくヴァンスカが振り間違えたのか、いつもと違う振りをしたのでしょう。この作品の一番の聴きどころだけに残念です。
第3楽章も大きな抑揚がついた演奏。
つづく第4楽章も、第1主題と第2主題の対比が明確。第1主題は弦楽器のユニゾンがのびやかで美しい。ただし、金管楽器が加わるとあまりにも盛り上がりすぎて興奮気味になりました。第2主題は超弱音まで音量を落とし静かに演奏。ラストの盛り上がりはまさに感動的。すばらしい演奏でした。

プログラム2曲目は、シベリウス作曲「フィンランディア」。冒頭の金管はあまり威圧的でありませんでしたが、ラストの三つの音符は中身の詰まったすばらしい演奏。アクセントを効かした演奏でしたが、ヴィオラ、チェロ、コントラバスが全体的に少し弱いと感じました。賛歌の歌わせ方も期待していただけにいまひとつでした。

休憩後のプログラム3曲目は、チャイコフスキー作曲「交響曲第5番」。オーケストラをならしきったパワフルで力強い演奏でしたが、やや暴力的でうるさく感じさせる部分がありました。
第1楽章冒頭のクラリネットは、やわらかい音色。つづく第1主題は行進曲並の速さ。もっとゆっくり演奏して欲しかったです。金管楽器を主体に激しい盛り上がりを見せましたが、この作品にここまでのスピード感が必要なのかは疑問です。あまりにも熱狂的すぎるように感じました。
第2楽章は、ヴァンスカがタクトで抑揚を指示していましたが、オーケストラには自発的で自由な歌わせ方を望みたいです。強奏も音量が大きすぎます。重厚なサウンドでしたが、音量よりも音質や表現力で聴かせて欲しいです。
第3楽章は、もう少しやわらかい音色が欲しいです。
第4楽章もがんばりすぎ。金管楽器とティンパニがうるさい。コーダは、穏やかな表情でまとまったサウンドを聴かせました。

拍手に応えてのアンコールは、全曲シベリウスの作品。1曲目は、シベリウス作曲「行列」。さわやかな小品。つづくアンコール2曲目はシベリウス作曲「テンペストop.109よりミランダ」。弦楽器の繊細な音楽作りが聴けました。さらにアンコール3曲目はシベリウス作曲「讃美歌」(編曲:ヤーッコ・クーシスト)。美しいメロディーが心にしみいりました。コンサートマスターのクーシストによる編曲もいい出来でした。やはりお得意のシベリウスは、作曲家の精神が乗り移ったようなすばらしい演奏でした。

フィンランド・ラハティ交響楽団は、よくも悪くもヴァンスカと一心同体という印象を受けました。ヴァンスカの調子がよければいい演奏を聴かせてくれますが、ヴァンスカにミスがあったりするとオーケストラだけではカバーできない側面があるように感じました。管楽器は色気に乏しい音色でしたが、それが決してマイナスにならないところにこのオーケストラの強みと個性があると言えるでしょう。演奏後も団員同士でミスを指摘しあうなど向上心を追求している姿勢がうかがえました。今後は表現力をさらに磨いて欲しいです。シベリウスはすばらしい演奏でしたので、もっとマイナーな作品にも挑戦して欲しいです。

オスモ・ヴァンスカは、とても礼儀正しい指揮者でした。ただ、表現方法がやや単調でワンパターンに思えなくもないです。音量とテンポの変化で作品を作っていくタイプですが、今後は音色などの繊細な表現力を身につけて欲しいです。来シーズンから大植英次の後任としてミネソタ管弦楽団の音楽監督を兼任することになります。レパートリーが格段に増えることが予想されるだけに、今後の活躍に期待が持てます。

(2003.10.13記)




サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団来日公演 ベルリン・ドイツ交響楽団来日公演