京都市交響楽団第563回定期演奏会


   
      
2012年11月30日(金)19:00開演
京都コンサートホール大ホール

高関健指揮/京都市交響楽団
河村尚子(ピアノ)

ブラームス/ピアノ協奏曲第1番
ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ
ラヴェル/ラ・ヴァルス
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」組曲第2番

座席:S席 3階C−3列13番


京都市交響楽団定期演奏会に高関健が客演しました。第16回京都の秋音楽祭開会記念コンサートから2ヶ月半にわたって行われた「京都の秋音楽祭」のフィナーレを飾る演奏会です。
18:40からプレトーク。高関健が登場。作品解説と楽器紹介をしました(詳細は後述)。オーケストラは対向配置で、高関が指揮した第513回定期演奏会でも対向配置だったので、高関のお気に入りのようです。弦楽器は、向かって左から、第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの順。コントラバスは最後列の向かって左に一列に並びました。9月1日付けでソロ首席ヴィオラ奏者に就任した店村眞積が出演しました。客の入りは7〜8割の入り。

プログラム1曲目は、ブラームス作曲/ピアノ協奏曲第1番。ピアノ独奏は河村尚子第527回定期演奏会に続いての出演で、このときのラフマニノフ作曲/パガニーニの主題による狂詩曲は、CD「京都市交響楽団定期演奏会名曲ライブシリーズ」に収録されています。プレトークで高関は「紆余曲折があり、6年かかって作曲された。クララ・シューマンが弾くことを想定して書かれた。プロのピアニストでも演奏が難しい作品だが、河村さんはブラームスを自分の言葉のように弾くすばらしいピアニスト」と話しました。
河村尚子が黒のドレスで登場。ブラームスのピアノ協奏曲は第2番のほうが有名で、第1番は渋いですね。河村尚子のピアノは残響が多め。オーケストラの硬い響きと対照的でした。オーケストラに溶け込みやすい音色ですが、存在感があります。河村一人で完結された世界で、オーケストラがなくてもピアノだけでも聴けそうです。ミスもなく、安心して聴けました。
高関健はカクカクした指揮。第2楽章だけ指揮棒なしで指揮しました。京都市交響楽団の伴奏は、シャープで抑制された響き。低音が物足りなく感じましたが、コントラバスの配置のせいでしょうか。第1楽章冒頭の装飾音の小音符のアインザッツがバラバラ。ここは合わせるのが難しいのでしょうか。

演奏終了後は、河村がアンコール。ドビュッシー作曲/ベルガマスク組曲より「月の光」。ブラームスの後にドビュッシーとは意表を突かれた選曲でした。冒頭から繊細で柔らかい音色。中間部は速いテンポ。心惹かれる演奏で、ファンを増やしまくったのではないでしょうか。
河村尚子は力強い演奏を聴かせた第527回定期演奏会とは違って、今回は繊細な一面を見せました。演奏の完成度が高いので、ソロも聴いてみたいですね。ベートーヴェンが似合いそうです。

休憩後は、ラヴェルを3曲。プレトークで高関は「3曲をひとくくりにすると踊りがテーマになっている」と解説しました。まずプログラム2曲目は、ラヴェル作曲/優雅で感傷的なワルツ。プレトークで高関は「ピアノソロのために書かれた作品で、バレエ用にオーケストラに編曲した。シューベルトにも同じタイトルの曲があり、ラヴェルは意識して作曲している。7つのワルツとエピローグからなる」と解説。「みなさんにお願いがある」ということで、「7曲目がにぎにぎしく終わるが、もう1曲ある。7曲目の後に拍手をしないように。腕を上げているので、待っててください」と話しました。何回かこの曲を演奏しているが、拍手が起こらなかったのは1回しかないとのこと。
演奏は、アクセントやリズムが強調されました。メロディーなど横の流れはあまり感じません。弦楽器が主体で、木管楽器をもっと聴かせてもよいでしょう。暖色の音色ではありませんでした。第7曲のワルツの後、高関は腕を広げたまま静止。長い間をおいて次のエピローグに行こうと腕を動かしたときに、ポディウム席の1人から拍手が…。客席からは少し失笑が起こりました。残念。

プログラム3曲目は、ラヴェル作曲/ラ・ヴァルス。プレトークでは「バレエ・リュスのために作曲されたが、上演されなかった。テンポを踏まないと踊れないが、この曲は音楽が先走っている。踊れなくても仕方ない。この曲はタングルウッド音楽祭でレナード・バーンスタインのレッスンを受けた。今日はバーンスタインがやった通りに演奏したい」と語りました。
高関はこの曲のみスコアなしで指揮。やや速めのテンポで、溜めを作らずにスイスイ進みます。18小節や30小節のホルンは、減衰せずに長めに演奏。第一ワルツが始まる67小節からクラリネットとバス・クラリネットの八連符をはっきりと演奏しました。強奏では指揮台の上でジャンプ。高関健のtwitterによると、バーンスタインと同じ場所でジャンプしたとのこと。金管楽器もよく鳴って、京都市交響楽団の技術はすばらしかったですが、音色に色っぽさがありません。不思議なことにドイツ音楽を聴いているような気になりました。

プログラム4曲目は、ラヴェル作曲/「ダフニスとクロエ」組曲第2番。プレトークでは、チェレスタとジュ・ドゥ・タンブルの楽器紹介。ステージ左端に箱形の楽器が2つ。向かって右側がチェレスタ。高関が「こんぺいとうの踊り」を実際に演奏しました。左側がジュ・ドゥ・タンブルで、グロッケンシュピールと呼ばれることもあるとのこと。ちょっとチンチンした音色でした。
第1曲「夜明け」冒頭からの木管楽器の十二連符は、はっきり音符の粒が見えました。弦楽器もよくそろっていますが、ヴァイオリンが左右に分かれているためか、量感は大きくなく、大自然というよりは都会の夜明けというイメージでした。第2曲「無言劇」は、清水信貴のフルートソロがすばらしい。ブラボー。第3曲「全員の踊り」は、打楽器も全開。ただ、際限なく鳴らすわけではなく、知性を感じました。

高関健の個性がよく出た演奏会で、おもしろく聴けました。特にラヴェルはユニークで、分析的に聴かせました。対向配置でラヴェルを聴く機会もそんなに多くないでしょう。ラヴェルがドイツ音楽のように聴こえる稀有な経験をしました。ただ、ラヴェルは明るく華やかに聴きたい気もしました。

(2012.12.4記)


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