五嶋みどりデビュー30周年特別プロジェクト全国ツアー2012


   
      
2012年7月21日(土)16:20開演
浄土真宗本願寺派本願寺(西本願寺)御影堂

五嶋みどり(ヴァイオリン)

J.S.バッハ/「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」より
 ソナタ第1番
 ソナタ第3番
 パルティータ第2番

座席:自由席


五嶋みどりがデビュー30周年を記念して全国ツアーをおこないました。今回のツアーは伴奏者なしの独奏で、曲目はJ.S.バッハ作曲「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」。全6曲を2日間かけて演奏します。五嶋みどりの演奏を聴くのは、バイエルン放送交響楽団来日公演以来でした。
今回の全国ツアーは演奏会場がとてもユニーク。コンサートホールで演奏されるのは最後の紀尾井ホールのみ。それ以外は、青砂ヶ浦天主堂、浦上天主堂、太宰府天満宮文書館、浄土真宗本願寺派本願寺(西本願寺)、国宝善光寺本堂、日光東照宮客殿、函館カトリック元町教会といった歴史的建造物を会場にして演奏されました。寺社や教会を選んだのは、イープラスのメールによると「デビュー当時、アメリカ各地の教会やシナゴーク(ユダヤ教の会堂)では、若手音楽家の演奏会がしばしば開かれ、その経験が今に繋がったとの想いから。」とのことです。五嶋みどりの公式サイトにも「デビュー30周年を記念したこの特別プロジェクトは、復興・平和への願い、感謝の気持ちを込めて、将来にわたり継承していく文化財である世界遺産に登録された寺社・教会を中心に、日本全国で、バッハ作曲「無伴奏ソナタ&パルティータ」全曲演奏に取り組むツアーです。」とコメントされています。

京都では、浄土真宗本願寺派本願寺(西本願寺)で20日(金)と21日(土)の2日間行われました。主催は学校法人相愛学園。20日(金)の会場は書院内国宝対面所。鴻の間と呼ばれている畳敷きの大広間です。普段は公開されていません。そして、21日(土)の会場は、重要文化財の御影堂。入場料はなんと無料で、先着約800名まで入場できました。西本願寺御影堂で音楽を聴くのは、親鸞聖人750回大遠忌法要記念 本願寺御影堂平成大修復完成記念 相愛大学相愛オーケストラ御堂演奏会以来です。

15:30開場でしたが、15:15に着いた頃にはすでに行列ができていました。午前中に並んだ人はすでに御影堂の中にいるとのこと。相愛大学のスタッフが誘導にあたっていました。靴袋として相愛大学のオレンジ色の袋と、公演のパンフレットが渡されました。無料公演なのに、ちゃんとしたパンフレットがもらえるなんて驚きです。
靴を脱いで御影堂に入ると、中にはすでに多くの人が集まっていました。畳敷きなので、適当な場所に座りました。親鸞聖人750回大遠忌法要記念 本願寺御影堂平成大修復完成記念 相愛大学相愛オーケストラ御堂演奏会と同じように、御影堂の南側にステージがありました。前日の有料公演のチケットを持参している人は、ステージ近辺の優先エリアに座ることができました。空調設備はありませんが、幸いにもかんかん照りではなく曇り空だったので、そんなに暑くはなく、障子の間から涼しい風も入ってきました。

16:00から御影堂内で「お夕事(ゆうじ)のお勤め」が行われました。喚鐘(かんしょう)が鳴らされた後、僧侶数名が親鸞聖人の木像の前に座って、早口言葉のようなリズミカルな念仏を唱えました。終わると、仏壇の扉がすべて閉められました。このお勤めは毎日16時に行われているとのことです。
開演に先立って、相愛大学副学長が挨拶。五嶋みどりを「五嶋みどり様」と様付けで紹介しました。五嶋みどりは2010年から相愛大学客員教授を務めていること、五嶋みどりのお母様(五嶋節)が相愛高校および相愛大学の卒業生であることが紹介されました。総長や宗門などの関係者への謝意も述べられました。

五嶋みどりが登場。白いドレスにキラキラ光るラメのラインが入っていました。譜面台はなく、暗譜で演奏しました。特殊な場所であることを意識せず、コンサートホールと同じスタンスで演奏しました。マイクはないので、耳を澄まして聴きます。障子が開いているので、堀川通りなど外部の音などが聴こえましたが、鑑賞に支障をきたすほどではありませんでした。御影堂の中には最終的に1000名近くが集まったようでした。

プログラム1曲目は、ソナタ第1番。ゆったり丁寧に弾きます。音色も美しい。丁寧な弾き方は、パガニーニ「24のカプリース」のCDを思い出しました。体を反ったり屈めたりよく上下させます。第2楽章「フーガ(アレグロ)」も難しさを感じさせません。ダイナミクスの幅もあります。

一度退出して、チューニングしてから再入場。プログラム2曲目は、ソナタ第3番。第1楽章「アダージョ」と第3楽章「ラルゴ」は弱奏で演奏。第2楽章「フーガ」は大曲。五嶋みどりが踊っているように動きました。ヴァイオリン1台でここまで表現できるとはすごいです。第4楽章「アレグロ アッサイ」は弓使いがなめらか。メロディーがよどみなく流れます。

一度退出して、チューニングしてから再入場。プログラム3曲目は、パルティータ第2番。演奏の特徴は、前2曲と同じことが言えます。第5楽章「シャコンヌ」は速めのテンポ。緩急や強弱をつけて巧みに表現しました。最後の付点二分音符を弱音で締めくくりました。

17:30に終演。終了後は「ミート&グリート」が行われました。五嶋みどりが出演した演奏会では行われるようで、バイエルン放送交響楽団来日公演ではサイン会が行われましたが、この日は時間の関係で握手会のみでサインは不可とのこと。18:00に西本願寺が閉門してしまうので仕方ないでしょうか。境内の北にある「浄土真宗本願寺派伝道本部」の建物の前に順番に並びました。しばらくすると、五嶋みどりがヴァイオリンケースを背中に背負って現れました。なんと立ったまま握手。そのまま帰るということでしょう。「お疲れさまでした。ありがとうございました」と声をかけると、笑顔で応じてくれました。一人ずつ目を見て握手していました。握手した人は名残惜しそうに、花屋町通りの門から退出します。短い時間でしたが、丁寧にファンサービスに対応していました。

五嶋みどりは「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、ソナタ第2番を2005年に録音していますが、その他の曲は録音していません。この全国ツアーを機に、ぜひ全曲レコーディングしてほしいです。

御影堂 御影堂 ミート&グリート

(2012.7.24記)


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