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2011年4月22日(金)19:00開演 京都コンサートホール大ホール 下野竜也指揮/京都市交響楽団 ハイドン/交響曲第100番「軍隊」 座席:S席 3階C−3列13番 |
京都市交響楽団の2011年度定期演奏会の幕開けです。トップバッターを飾るのは読売日本交響楽団正指揮者を務める下野竜也。初めて聴きます。
18:40からプレトーク。下野竜也が登場。意外に高い声でした。「まずはお礼を」と話し、「先月3月13日にここで「オーケストラ・ディスカバリー」の指揮をした。大震災の2日後だった。演奏会をするかしないかの議論もした。義援金を呼びかけたところたくさん集まった」と話しました。続いて、今日のプログラムについて解説しました。「マーラーの前になぜハイドンにしたかは、パンフレットに書いてある」と話しました。小味渕彦之の解説によると、「キーワードは、軍隊ラッパです」という下野の弁が引用されています。上野学園大学音楽文化学部教授を務めているだけあって、作品の背景を詳しく話しました。まもなく封切られる映画「マーラー 君に捧げるアダージョ」にも触れるなど知識も豊富でした。詳細は後述します。
客の入りは8割ほどでした。
プログラム1曲目は、ハイドン作曲/交響曲第100番「軍隊」。プレトークで下野は「第2楽章のトランペットに注目して欲しい」と話しました。弦楽器を第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンの順に配置する対向配置でした。コントラバスはチェロの後ろに配置。第1ヴァイオリン8、コントラバス3など中規模編成でした。第2楽章の打楽器は、ティンパニ、シンバル、ムチ、タンブリンで演奏。第4楽章でもふたたび登場しました。スコアではムチではなく大太鼓が指定されていますが、代わりにムチを使ったのは下野のアイデアでしょう。152小節からのトランペットのファンファーレは起立して演奏。第1楽章と第2楽章、第3楽章と第4楽章はあまり間を置かずに演奏しました。
下野竜也は背が低いですが恰幅があり、後ろ姿は巨匠に見えます。譜面台が低く、ひざのあたりにあります。スコアをめくりながら指揮しました。忙しそうに腕を振って指揮しましたが、作品の性格から言えばもう少し余裕が欲しいです。
休憩後のプログラム2曲目は、マーラー作曲/交響曲第5番。プレトークで下野は「マーラーは今年没後100年。京響では大尊敬する大野和士さんが7月に3番を指揮する」「第4楽章が映画「ベニスで死す」で使われたことが有名。高2のときに初めて聴いた。インバルが指揮するテレビを見た」とこの曲との出会いを紹介。「この曲で好きな部分は、第2楽章の最後に出てくる光が差すようなコラール。第5楽章にも燦然と輝くように出てくる。マーラーが妻のアルマにピアノで聴かせたところ、アルマは僕が好きなコラールを退屈だと言った。アルマはブルックナーとマーラーの違いを見透かしていた」「マーラーの私生活が絶好調のときに作曲された。5楽章にそれが表れている」「コラールは第2楽章はあまり激しくやらないつもり。向こうに希望が見えるような演奏にしたい」と語りました。
楽器配置はコントラバス8をステージ最後列に並べたのが目を引きました。弦楽器は前曲と同じ対向配置。大編成ですが、楽器配置は左右に広げるのではなく、指揮者が見える半円に密集して配置しました。そうすることで、響きを厚くしたいということでしょうか。
演奏は強奏の音量が大きい。こんなに鳴る京響はひさびさです。広上淳一では聴けないスケール感です。ベタな表現ですが、読売日本交響楽団のような男性的でたくましい演奏でした。弦楽器もたっぷり歌いこみます。また、コントラバスを後列に並べたのも成功で、低音がしっかり支えました。いくつか細かな傷があったものの生演奏らしいライブ感がありました。
第1楽章は連符のアインザッツがあまりそろっていないのが残念。間を空けずに第2楽章へ。やや速めのテンポ設定で、下野の指揮にオーケストラが必死についていきました。オーケストラがやや自信なさげに演奏している部分もあって、少しヒヤヒヤしました。中盤でシンバルが入りを間違ったのが残念。プレトークで語ったコラールはあまり軽くなく、ティンパニを乱打させました。第3楽章はオブリガード・ホルンの垣本昌芳(首席ホルン奏者)がすばらしい演奏。第4楽章は弦楽器のアンサンブルが濃密。いつもの京響ではなかなか聴けません。休みなく第5楽章へ。金管楽器が荒々しいほどよく鳴りました。
カーテンコールでは、下野は客席に向かって深々と礼。最後にはスコアを掲げて、マーラーを讃えていました。
下野竜也はスケール感の大きい演奏を聴かせました。大編成の作品が合うようで、マーラーはぴったりでしたが、ハイドンは選曲ミスのように思えました。小味渕彦之の解説によると、意外にも下野はほとんどマーラーを指揮していないようです。また、楽章の間であまり間をおかず、続けるように演奏するのも特徴のようです。広上淳一とは違う京響の魅力を引き出してくれたので、今後も定期的に指揮してほしいです。
なお、2日後の24日(日)には「大阪特別公演」がザ・シンフォニーホールで開催されました。プログラムは、ハイドンに代わって、リスト作曲/ピアノ協奏曲第1番(ピアノ独奏:金子三勇士)が演奏されました。
(2011.4.24記)