フランス・ブリュッヘン・プロデュース「ベートーヴェン・プロジェクト」ベートーヴェン交響曲全曲演奏会第4回


   
      
2011年2月19日(土)15:00開演
すみだトリフォニーホール大ホール

フランス・ブリュッヘン指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団
リーサ・ラーション(ソプラノ)、ウィルケ・テ・ブルメルストゥルーテ(アルト)、ベンジャミン・ヒューレット(テノール)、デイヴィッド・ウィルソン=ジョンソン(バリトン)
栗友会合唱団

ベートーヴェン/交響曲第8番
ベートーヴェン/交響曲第9番「合唱付き」

座席:B席 3階8列24番


ひさびさの東京遠征です。フランス・ブリュッヘンが新日本フィルハーモニー交響楽団を指揮して、ベートーヴェン交響曲全曲演奏会を開催しました。「ベートーヴェン・プロジェクト」と名付けられ、2月8日(火)から19日(土)までの4日間で、全曲を番号順に演奏しました。2009年に行なわれた「ハイドン・プロジェクト」に続く取り組みでした。最終回の第4回は、第8番と第9番の2曲でした。

リハーサルは、ブリュッヘンの意向で第9番から始まり第1番まで、本番とは逆の順番で行なわれました。その後、番号順にリハーサルが行なわれたようです。本番前日には「公開リハーサル」がすみだトリフォニーホールで行なわれました。第4回のリハーサルは、18日(金)18:30から2時間前後行なわれたようです。本番のチケットがあれば無料でしたが、平日だったので行けませんでした。本当に残念。
チケットは前売りでは全席完売にはならず、当日券も発売されていました。2日後の第472回定期演奏会(サントリーホール)でも同一プログラムが演奏されるからでしょうか。
プログラムには、「出演者・一覧」が挟み込まれていて、楽団員の配置が図示されていました。

すみだトリフォニーホール大ホールで演奏会を聴くのは、今回で4回目です。新日本フィルハーモニー交響楽団第379回定期演奏会「小澤征爾のショスタコーヴィチ」清水靖晃&サキソフォネッツ「J.S.バッハ/ゴルトベルク変奏曲」は1階席、小澤征爾×新日本フィルハーモニー交響楽団特別演奏会は2階席で聴いたので、今回初めて3階席にしましたが、これが大失敗。ステージまではかなり距離がありますが、前の人の頭が邪魔でステージが見えないのが大問題。前かがみにならないといけませんが、そうすると後ろの席の人が見えなくなるようです。スタッフから身を乗り出さないようにアナウンスがありました。指揮者は見えてもコンサートマスターなど前方の団員が見えないなど、かなり不満が残るホールです。ちょっとホールの設計がおかしいと思いました。

オーケストラが入場。第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける対向配置でした。フランス・ブリュッヘンがよちよちと登場。1934年生まれなので、今年で77歳。思っていたよりもずっと細身でした。指揮台の上のイスに座って指揮しました。

プログラム1曲目は交響曲第8番。リズミカルな演奏。付点音符も軽やかに演奏します。古楽器奏法を採用していますが、ヴィヴラートは少なく耳につくほどではありません。各楽章の終わり方がまさに芸術的。第1楽章はフワッと終わりました。第2楽章はホールの残響のせいか響きが重い。さっと終わりました。第4楽章のラストはティンパニが大きめに連打。ブリュッヘンの指揮棒は動きが少ない。聴かせたいところは左手ではっきりキューを出します。

休憩後のプログラム2曲目は交響曲第9番「合唱付き」。ステージ後方に栗友会合唱団が入場。ソプラノ、テノール、バス、アルトの順に、4列で並びました。
第1楽章はテンポが速い。音符を長く伸ばさないで力を抜いて演奏します。この作品でも、ノンヴィヴラートで演奏しました。ただし、ホールの天井が高いので、音型がぼやけるのが残念。ところどころで、スコアにないクレシェンド・デクレシェンドを仕掛けました。ティンパニのマレットは硬め。
第2楽章はやや遅めのテンポ。反復記号はすべて実行しました。トリオはやや速め。ラストは、デクレシェンド気味に音を抜くように終わりました。
第3楽章の冒頭は倍速の速さで進みました。「Adagio molto e cantabile 四分音符=60」と「Andante moderato 四分音符=63」の2つのテンポに落差をつけて演奏しました。
第4楽章も速い。チェロとコントラバスによる有名なメロディーが始まる92小節の前では、まったくパウゼを入れないで突っ込むように始めました。スコアをよく見れば、91小節から92小節の間には確かに休符はありません。独唱者をどうやって入場させるのか気になりましたが、バリトン独唱が上手から歌いながら登場。両腕を広げたり身振り手振りを交えてオペラのようです。残り3名は下手から登場しました。330小節の「Gott」のフェルマータもあまり長く伸ばしません。テノール独唱が375小節の歌い出しを入り損なって、377小節から慌てて歌い始めました。こんなに有名な作品で、しかも譜面も持っていたのに珍しいミスです。合唱は豊かに響きました。563小節からの「was die Mode streng geteilt」はマルカート気味に短く切って歯切れよく歌いました。その後も速いテンポを維持し、シンバルの一撃で締めくくりました。

すみだトリフォニーホールの3階席は残響が多く、フランス・ブリュッヘンの特徴がいまひとつ分かりませんでした。1階席はいまいち、2階席は雨宿り席、3階席はステージが見にくいため、いい席がありません。特に今回は視覚的にも最悪の席だったのが残念です。

(2011.4.4記)


すみだトリフォニーホール



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