新日本フィルハーモニー交響楽団第379回定期演奏会
「小澤征爾のショスタコーヴィチ」


   
      
2004年12月11日(土)15:00開演
すみだトリフォニーホール大ホール

小澤征爾指揮/新日本フィルハーモニー交響楽団

ハイドン/交響曲第98番
ショスタコーヴィチ/交響曲第10番

座席:S席 1階 13列38番


ウィーン国立歌劇場音楽監督で、新日本フィルハーモニー交響楽団桂冠名誉指揮者を務める小澤征爾が珍しくショスタコーヴィチを指揮するというので、迷わず聴きに行きました。新日本フィルハーモニー交響楽団は、音楽監督クリスティアン・アルミンクがシーズンごとにテーマを設定してプログラムを組んでいます。2004-2005シーズンは「生」がテーマでした。

すみだトリフォニーホールは、新日本フィルハーモニー交響楽団の本拠地です。JR錦糸町駅北口から歩いて数分のアルカタワーズ錦糸町の中にありますが、同じような外観のビルが並んで建っているので一見してホールがあるとは気づきませんでした。
ホール内部はこげ茶色の内装で、まるで工場のような雰囲気でした。チケットは完売になったので、客席はほぼ満席。チケット発売初日に電話をかけましたが、まったくつながらなかったので、裏ワザを使ってどうにか確保しました。座席を選択する余裕がなかったので、S席でも一番右端の席になってしまいました。この席は、上に2階席の「ヒサシ」があって、音響上はあまりいい席ではありませんでした。ですので、中央で聴かれた方とは異なった感想になっているかもしれません。

小澤征爾が登場。前列の楽団員と握手してから、客席に向かって礼をしました。
プログラム1曲目は、ハイドン作曲/交響曲第98番。ハイドンの交響曲の中ではそれほど演奏機会が多い作品ではないと思いますが、意外に変化がある作品で楽しめました。小澤らしい選曲です。オーケストラは中編成で、優雅で無駄がなく格調高い演奏でした。ホールの豊富な残響を生かしたやわらかい音色が聴けましたが、その反面響きがややモサモサした演奏になりました。また、ヴァイオリンの音程が悪いなどオーケストラは技術面で練習不足の感がありました。ウィーンフィルが相手なら研ぎ澄まされた美しい演奏が聴けたでしょう。
小澤征爾は指揮台も譜面台もなしで指揮していました。指揮棒も持っていませんでした。シンコペーションやアクセントでは、肩を前に出して明確にジェスチャーしていました。時には、前列の奏者に歩み寄って指揮をしていました。第1楽章や第4楽章は、終わったのかと思うほど長い間を取っていました。

休憩後のプログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第10番。オーケストラは大編成になりました。小澤は指揮台に上がって譜面台を置いて指揮しましたが、譜面はなく、また指揮棒も使いませんでした。
演奏は、普段からショスタコーヴィチをよく聴いているからかもしれませんが、私が思い描くショスタコーヴィチとは程遠い演奏でした。鳥肌が立つような瞬間がありませんでした。座席位置のせいなのかバランスの悪さが気になりました。ホルンを大きめに鳴らしますが、トランペットが鳴ってくれません。ショスタコーヴィチの交響曲で、ホルンがトランペットよりも重要な位置を占める楽器だとは思わないので、違和感がありました。木管楽器も終始不安定で、危なっかしい。また、音量設定も弱奏が大きくなりがちなので、弱奏と強奏の差をもっとつけて欲しいです。弦楽器はトゥッティがすばらしい。弾き終わると全員で弓を高く上に上げるなど視覚的にもよくまとまっていました。

終演後、小澤征爾はオーケストラ団員と何度も握手していました。オーケストラとの信頼関係を大切にする指揮者だと感じました。アンコールはありませんでした。

小澤征爾は、現在最も活躍している日本人指揮者ですが、何か満たされませんでした。演奏の感想として書きたいことがあまりないのです。悪く言えば「ありきたり」の演奏ということになるのでしょうか。ハイドンはいい演奏でしたが、ショスタコーヴィチには期待はずれでした。何が物足りないのか研究したいですが、ハイドンでもショスタコーヴィチでも、小澤征爾は自分の音楽をどこまでも聴かせました。

新日本フィルハーモニー交響楽団は、管楽器にもっとがんばって欲しいです。

(2004.12.27記)


向かい側の道路から望む ホール1階 大ホール入口



シュトゥットガルト放送交響楽団来日公演 N響「第9」チャリティーコンサート