芸術文化センター管弦楽団第21回定期演奏会


   
      
2009年1月11日(日)15:00開演
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール

佐渡裕指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団
山下洋輔(ピアノ)

山下洋輔/ピアノ協奏曲第3番「エクスプローラー」
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番

座席:A席 3階 3C列27番


2009年聴き初めです。兵庫芸術文化センター管弦楽団の定期演奏会に行きました。指揮は芸術監督を務める佐渡裕。金・土・日の3日間公演の最終日です。新年とは思えない重量級のプログラムでした。
チケットは、兵庫県立芸術文化センター先行予約会員の発売日に購入しましたが、すでにほぼ満席でした。すごい人気です。佐渡裕は2008年4月からテレビ「題名のない音楽会」の司会を務めているので、知名度がさらに高くなったようです。
兵庫県立芸術文化センターに来たのは、オープニング・バレエ・ガラ よみがえるニジンスキー版「春の祭典」以来、4年ぶりでしたが、阪急西宮北口駅周辺が発展していてびっくりしました。また、兵庫県立芸術文化センター大ホールは、神戸製鋼所が命名権を取得し、2008年10月から「KOBELCO大ホール」と改称しました。購入した2階席は雨宿り席でした。残念。

開演に先立って、14:45からプレトーク。定期演奏会では毎回行なわれているようです。佐渡裕がマイクを持ってステージに登場。「ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第5番」について、「5番はそれぞれの作曲家が代表する作品が来る、決定打的な作品が来る」と話し、例として「シャネルの5番、マンボNo.5、フィンガー5」を挙げました。この日の朝に放送された「題名のない音楽会」で取り上げたチャイコフスキーの交響曲第5番でも、同じ話をしているのこと。最後は「清原選手は西武時代が背番号3だったが、巨人以降は5になった」とやや脱線気味のトークでした。また、「木管楽器のトップは、全員新メンバー」と紹介しました。
続いて、「尊敬している」「素晴らしい音楽家」「ジャズの大巨匠」と紹介し、山下洋輔が登場。佐渡と山下は、「ガーシュウィン作曲/ラプソディー・イン・ブルー」で初めて共演したとのこと。その後、山下が作曲した「ピアノ協奏曲第1番「即興演奏家のためのエンカウンター」」の世界初演を佐渡が指揮することになっていたが、佐渡が体調を崩してキャンセル。代役を金聖響が務めたとのこと。佐渡は「人に世界初演を譲るのはくやしい。リベンジしたくてイタリアでヨーロッパ初演は指揮できた」と話しました。この日演奏する「ピアノ協奏曲第3番「エクスプローラー」」は、「東京オペラシティコンサートホール開館10周年記念委嘱作品」として、2008年1月12日に初演されました。佐渡が指揮する東京フィルハーモニー交響楽団、山下のピアノで初演されました。ピアノパートのスコアはほとんど空白で、山下が瞬間に作曲して即興演奏をしているとのこと。そのため、佐渡は「1日目と2日目は全然違う曲になった」と話しました。即興演奏について、佐渡は「なかなか大変。どう来るか分からない。どこで出ていいか分からないときがある。あうんの呼吸です」と話しました。

プログラム1曲目は、山下洋輔作曲/ピアノ協奏曲第3番「エクスプローラー」。山下洋輔の演奏はRISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO(山下洋輔ニュー・カルテット)で聴き逃したので、今回初めて聴きます。なお、オーケストレーションは国立音楽大学作曲科に在学する挾間美帆が行なったとのこと。山下はプログラムに掲載した「作曲の内幕」の文書中で、挾間のオーケストレーションについて「まさしく共同作業」「ほとんど共作者」と表現しています。オーケストラはチェレスタやハープを加えた大編成です。3楽章形式で、けっこう長い作品です。
ピアノソロは、装飾音が多く主旋律が見えにくい。あまりメロディックな作品とは言えないでしょう。山下の奏法は、クラシックとは異なり、前かがみになって背中から体重をかけて鍵盤を押すように弾きます。時にはひじで鍵盤を叩くこともあり、鍵盤が壊れそうでした。グリッサンドでは鍵盤の端から端まで使います。イスから体を浮かせて演奏することもありました。第1楽章にはカデンツァが2回ありました。
挾間美帆のオーケストレーションは、ムチ、木魚、チャイム、拍子木など打楽器が活躍しますが、目新しさを引き出すためのアレンジのように聴こえてしまい、シンフォニックに響かないのでいまひとつです。弦楽器はあまり活躍しません。ジャズカルテットでは弦楽器がメロディーを演奏することはないためでしょうか。第1楽章冒頭はクラリネットソロだけでピアノソロを大きく盛り上がらせていくなど、型破りのアレンジと言えるでしょう。第2楽章の伴奏は弦楽器がメイン。第3楽章はコントラバスがピツィカートで伴奏し、ジャズらしい雰囲気でした。終盤では全パートが乱れ打ち。
カーテンコールでは、山下は両手を挙げて客席に感謝していました。拍手に応えてアンコール。山下洋輔作曲/Sudden Fictionより第5曲「スウィング」を演奏。打って変わって明るい作品で、同じ人が作曲したとは思えません。オーケストラ伴奏も打楽器が派手に鳴って華やか。終盤はオーケストラ奏者全員が起立して、歩きながら演奏。客席からは手拍子が送られました。鳴り止まない拍手に応えて、アンコール2曲目。山下がソロで、枯葉〜スウィングしなけりゃ意味がない(メドレー)を演奏。原曲にかなりアレンジを加えていて、主旋律が聴こえないほど自由なアレンジでした。すごいテクニックで聴かせました。

休憩後のプログラム2曲目は、ショスタコーヴィチ作曲/交響曲第5番。期待以上の演奏でした。全体的にメンバーが若いので、エネルギーを感じました。ヴァイオリンパートは特筆すべきレベルにあるでしょう。第1楽章冒頭から弦楽器に緊張感がありました。第3楽章の弦楽器のアンサンブルは素晴らしい。ただし、ヴィオラの音程が不安定なのが気になりました。ホルンソロは音を外すなど不調。クラリネットとファゴットソロは、洗練された音色が求められるでしょう。トランペットとトロンボーンの音色が汚く、勢い任せで演奏している部分があって残念でした。課題としては、各楽器でテンポ感を統一してほしいです。縦線のズレなど、ミリ単位の調整ができるかどうかがプロのオーケストラとの差でしょう。
佐渡裕は無難な演奏解釈でした。外面的な効果に頼らずにしっかり聴かせました。第4楽章は速いテンポで演奏しました。
終演後は、ホワイエで佐渡裕のサイン会が開かれ、長い行列ができていました。

兵庫芸術文化センター管弦楽団は、オープニング・バレエ・ガラ よみがえるニジンスキー版「春の祭典」以来、4年ぶりに聴きましたが、ずいぶんと成長していて驚きました。兵庫芸術文化センター管弦楽団のコアメンバーは3年で入れ替わります。アンサンブルをまとめるのが難しいと思いますが、佐渡の指導の賜物でしょうか。今後の成長が楽しみです。土日公演も多いので、機会を見つけてまた聴きたいです。
兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールは、4面の舞台装置を備えているため、ホールの容積が広いです。びわ湖ホール大ホールほどではありませんが、クラシックの演奏会にはあまり向かないかもしれません。

(2009.1.19記)


阪急西宮北口駅南ひろば ペデストリアンデッキ ペデストリアンデッキ



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